日本網内系学会会誌
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小児における単球,マクロファージの機能異常
小池 健一小宮山 淳
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1993 年 33 巻 4-5 号 p. 229-234

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抄録

乳児期より難治性口腔内カンジダ症を反復した姉弟の単球は走化能,カンジダ貪食殺菌能,IL-1産生能に異常を示したが,好中球機能やTおよびBリンパ球機能は正常であった。これらのことから真菌に対する感染防御の上で単球は重要な役割を果たしていると思われる。血球貪食症候群患児の血中サイトカイン濃度を測定し,臨床症状,検査所見の推移と比較した。2例とも増悪期においてIFN-γは著明な高値を示したが,TNF-αは全経過を通して正常範囲内であり,IL-1β, GM-CSFも正常もしくは軽度の上昇にとどまった。これらの結果はHPSでみられる組織球の活性化にIFN-γが最も重要な役割を演じていることを示している。JCMLのGM造血前駆細胞は種々のサイトカインの単独あるいは組み合わせに反応して正常骨髄よりも多数の,より大きなコロニーを形成し,増殖した細胞の大部分はマクロファージであった。また,JCMLのGM前駆細胞は正常対照と比較してtyrosine kinase inhibitorに抵抗性を示したことから,本症ではサイトカインによるparacrine増殖だけでなく造血幹細胞自体にも異常があることが示唆された。
単球,マクロファージは貪食殺菌能に加えて,抗原提示能,サイトカイン分泌能を有し,リンパ球との間で巧妙な免疫機構を構築している。マクロファージを活性化するサイトカインにはinterleukin-1 (IL-1), tumor necrosis factor (TNF), interferon-γ (IFN-γ), granulocyte-macrophage colony-stimulating factor (GM-CSF), macrophage colony-stimulating factor (M-CSF)などがある。
単球,マクロファージの機能異常をきたす疾患の臨床像,病態についてはいまだ不明な点が多い。本稿では,単球,マクロファージの機能異常を機能低下と機能亢進に分け,サイトカインとの関連を中心にわれわれの成績を述べ,これらの病態について検討した。

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