The Journal of Japan Society for Laser Surgery and Medicine
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REVIEW ARTICLE
Application of Optical Coherence Tomography in Endodontics
Yoshiko Iino Arata EbiharaMitsuhiro SunakawaTakashi Okiji
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2018 Volume 39 Issue 1 Pages 50-58

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Abstract

歯内療法とは,歯髄疾患あるいは根尖性歯周疾患に対して,原因となる根管内細菌感染を制御するとともに再感染を防止し,歯を保存する治療方法である.歯内療法を遂行するにあたり,その治療対象である歯髄腔および根管形態の複雑さを三次元的に把握することが必要不可欠である.光干渉断層計(OCT)は,近赤外光を用いて非侵襲的に組織内部の精密断層像が得られる医療撮像用技術である.本稿では,歯髄腔や根管の検出,根尖切除時の根尖部の観察,垂直性歯根破折の診断など,歯内療法のさまざまな臨床的局面におけるOCTの応用の可能性について,著者らの基礎的研究結果を中心に概説する.

1.  歯内療法と歯髄腔・根管形態

歯は硬組織の内部に軟組織が存在するという解剖学的に特異な構造体であり,しかも硬組織として外胚葉性のエナメル質と中胚葉性の象牙質,セメント質が混在している.内部の軟組織である歯髄は,神経および血管が豊富に分布した疎性結合組織である.歯髄が存在する硬組織内の空間を歯髄腔と呼び,特に歯根内の部分を根管という(Fig.1).

Fig.1 

Tooth anatomy. Left: facial view of a permanent maxillary incisor, showing crown (*) and root (**). Right; longitudinal section of the same tooth, showing enamel (E), dentin (D), pulp chamber (P) and cementum (C).

う蝕などが原因で歯髄腔に細菌感染が生じると,容易に歯髄炎が発症する.臨床症状としては,冷水痛,温熱痛,自発痛といった痛みが一般的である.この時点で歯髄除去療法(抜髄法)が適切に行われれば,患者の感ずる痛みを取り除くことができ,歯を保存してその機能を維持することができる.加療が行われずに歯髄内の細菌感染が進行し,歯髄が壊死に陥ると,根管内は免疫応答が作動しない細菌増殖の温床となり,偏性嫌気性菌を中心とした感染が成立する.さらに,歯根の先端付近に存在する根尖孔を経由して歯周組織に細菌感染の影響が及ぶと,根尖性歯周炎が発症し,咬合痛,根尖部歯肉の腫脹や圧痛,瘻孔形成などの種々の自覚症状がしばしば発現する.また,根尖部の周囲に歯槽骨吸収が生じることから,根尖部エックス線透過像を認めるようになる(Fig.2a).

Fig.2 

Periapical radiographs taken before (a) and after (b) root canal treatment. (a) Preoperative radiograph of a mandibular left central incisor with a periapical radiolucent area (periapical lesion; arrow). (b) Postoperative radiograph taken two years after root canal filling of the same tooth. The periapical lesion is healing.

歯内療法とは,歯髄疾患および根尖性歯周疾患に対して,原因となる細菌感染を制御するとともに再感染を防止し,歯を保存する治療方法である.大多数の症例では,歯髄腔や根管内の細菌の可及的除去を目的として,炎症歯髄や壊死組織などの歯髄腔内容物の除去,根管壁象牙質の切削による感染源の機械的除去(根管形成),および化学的な感染源の排除(根管洗浄)で構成される一連の根管治療が施されたのち,再感染を防止する目的で根管の人工的封鎖(根管充填)が行われる.その結果,根尖歯周組織の健康の維持,もしくは根尖性歯周炎の回復が図られ(Fig.2b),口腔内に歯を保存し,その機能を維持させることが可能となる.

歯内療法における診断ならびに処置の遂行に際して,複雑な三次元的空間である歯髄腔および根管形態の把握が重要である.実際,根管側枝,根管イスムス(二つの根管の間に形成される狭いリボン状の交通路)などの複雑な形態がしばしば存在する.歯科用実体顕微鏡や歯科用コーンビームCT(CBCT)の歯内療法への応用は,これらの複雑な形態に関する情報を飛躍的に増加させることが可能であるため,病態の診断や処置の精度の向上に大きく貢献している.しかし,歯科用実体顕微鏡では観察可能部位が被観察体の表面に限局しており,またCBCTはエックス線被曝の観点から撮像は最小限にとどめる配慮が必要であるとともに,現時点では画素数の関係から微細構造の検出に限界がある.

他方,1990年代に近赤外光の干渉を利用し,表層の断層画像を得ることができる画像診断装置として光干渉断層計(optical coherence tomography; OCT)が開発された1).OCTは非侵襲的に組織内部の精密断層像が得られる医療撮像用技術である.本稿では,これまでに著者らが得た基礎的研究の成果を中心に,歯内療法のさまざまな臨床的局面におけるOCTの応用の可能性について概説する.

2.  歯内療法におけるOCT応用の可能性

2.1  髄腔開拡への応用

2.1.1  歯髄腔の検出

根管治療を行う際の最初のステップは,歯髄腔に治療用器具を到達させるために,歯冠部の硬組織(エナメル質および象牙質)を切削し,天蓋と呼ばれる歯髄腔の咬合面側の象牙質を除去する髄腔開拡である.三次元的な歯髄腔の位置は歯の外表面からは認識できないため,一般的には口内法エックス線写真を参考に行われる.しかし,口内法エックス線写真は立体構造を二次元平面に投影した画像であることから,歯髄腔の狭窄や歯軸の頬舌的な傾斜,あるいは歯冠補綴装置の存在等により,歯髄腔の三次元的形態の把握が困難な症例に遭遇することがある.髄腔開拡を誤った方向に進めてしまった場合には歯や根管壁に穿孔を起こし不良な経過を辿る恐れがある.また,穿孔に至らなくても,不必要な切削により健全歯質が失われることになる.現在では髄腔開拡中に歯髄腔の位置を探索するためには,口内法エックス線写真やCBCT2)の撮像が行われる.しかしながら,上述のように口内法エックス線写真では三次元的な方向の把握は不可能であり,CBCTでは被曝線量が大きいことから頻回には撮像できず,加えてリアルタイムに撮像できないという欠点がある.

著者らは,OCTによる歯髄腔境界の検出の可能性を検討する目的で,ヒト抜去歯の象牙質内部の歯髄腔の髄角をOCTで検出し,得られた画像上における象牙質残余量の計測値をCBCT画像により得られた数値と比較検討し,それらの相関関係の有無を検討した3).すなわち,事前に根管治療がなされていないこと,大きな修復物がないことを確認したヒト抜去下顎大臼歯を,歯冠の最大豊隆部で歯軸方向と垂直に切断し,Micro CT(Fig.3a)およびCBCT(Fig.3b)で撮像後,三次元画像処理ソフトウェアを用いて三次元構築を行い,基準となる切断面から髄角までの距離を計測し,OCT(Fig.3c)で計測した距離との関連を評価した.その結果,残存象牙質の厚みが2.33 mm以下の場合,Micro CTで計測した場合と同様にOCTを用いて髄腔の位置を的確に把握できる可能性が示唆された.先行研究においては,OCTの波長1,280 nmでは象牙質厚み1 mm,850 nmでは0.6 mmで歯髄腔を検出できたと報告されている4).著者らの研究では中心波長1,310 nmの波長掃引型のOCTを使用した.OCT装置はリアルタイムかつチェアサイドにおける使用が可能であることから,この装置を用いて象牙質で周囲を囲まれた内部の構造物の正確な把握が可能となれば,髄腔開拡時の穿孔や不必要な歯質切削を回避し,安全かつ適切な髄腔開拡が期待される.

Fig.3 

Detection of a pulpal horn (arrow) of a mandibular molar with (a) three-dimensional micro CT, (b) CBCT and (c) two-dimensional OCT.

2.1.2  レーザーとOCTによる髄腔開拡

歯の切削は通常,回転切削器具(ダイヤモンドバーやカーバイドバー)をハンドピースに装着して行われるが,切削する際に振動や強い音が生じ,それが患者を不快・不安にさせることも事実である5,6).各種のレーザーの中でEr:YAGレーザーは,波長が2,940 nmで,水分子を水蒸気爆発させることにより,歯や骨などの硬組織を切削する能力を持つとされている7).歯内療法においても,う蝕除去や根管口明示におけるEr:YAGレーザーの有用性がこれまで報告されており,髄腔開拡への応用も期待できる8,9).Er:YAGレーザー装置は既存の回転切削装置と異なり,切削時に振動が生じず,歯科用実体顕微鏡下でも視野を確保できるという利点がある.しかしながら,回転切削装置を用いた髄腔開拡では,歯髄腔に到達すると象牙質を切削する抵抗感覚がなくなるので,切削感覚の違いにより髄腔に到達したことを把握できることが多いが,レーザー装置による硬組織切削では,この種の切削感覚のフィードバックが得られない8,10,11)

そこでEr:YAGレーザーを使用し,OCTで歯髄腔の位置を把握しながら髄腔開拡を行う可能性を検討した12).すなわち,ヒト抜去下顎前歯舌側面に,歯科用実体顕微鏡下で,Er:YAGレーザー装置(Erwin AdvErl, J. Morita MFG, Kyoto, Japan)にプローブチップを装着し100 mJ,10 ppsの照射条件および注水下(5 mL/min)で10秒間照射後(Fig.4a),ただちにOCTによる窩洞の観察(Fig.4b)を行い,歯髄腔が露出するまでこれを繰り返した.その結果,象牙質の厚み0.44–1.69 mmの範囲でOCTにより歯髄腔が検出可能であるとともに,すべての試料でレーザー切削により髄腔に到達しえた.本研究の結果より,OCT装置で歯髄腔と窩洞の位置関係をモニターすることにより,Er:YAGレーザーを用いた髄腔開拡を確実に行える可能性が示唆された.

Fig.4 

Cavity preparation by Er:YAG laser irradiation. (a) Macroscopic view during laser irradiation, (b) An OCT image showing the cavity prepared by laser irradiation (yellow arrow) and the pulp chamber (red arrow).

2.2  根管の探索

歯内療法では髄腔開拡の次のステップは,根管の探索を行い,根管内を機械的,化学的に清掃し,根管形成を行うことである.根管系の解剖学的形態は複雑で,同一歯種でも個々の歯で多様性に富む構造を示すため,根管の見落としに注意を払う必要がある.根管治療で未処置となった根管には多量の細菌が残存し,歯内治療の予後経過不良の一因となりかねない.特に上顎大臼歯の近心頬側根は二根管性となることがあり(近心頬側第一根管:MB1と近心頬側第二根管:MB2),MB2は解剖学的には36–95%の歯に存在するとされているが13,14),臨床におけるMB2検出率は17–65%と報告されている15,16).これは,MB2が臨床的に検出困難でしばしば未処置にとどまることを示唆するが,その理由として,MB2が根管口付近でしばしば歯髄腔の石灰化による狭窄した形態を呈し,しかもその存在する位置に個体差があることを挙げることができる.再根管治療では,初回根管治療に比較してMB2の検出率が有意に高かったという報告17)もあり,未処置のMB2が根管治療の経過不良の要因となる可能性が指摘されている.MB2は,歯科用実体顕微鏡や拡大鏡といった拡大視野下で超音波切削装置を使用して的確に切削を加えることにより,その検出率が増加することがこれまでに報告されている15,18-20).一方,MB2の探索にこだわるあまり,この過程で歯質の過剰な切削や穿孔を引き起こす危険性も指摘されている21,22)

著者らは,ヒト抜去上顎大臼歯を用いて,MB2の検出におけるOCTの有用性を検討した23).すなわち,ヒト抜去上顎大臼歯を肉眼,歯科用実体顕微鏡,OCTで観察し,MB2検出の有無を評価した.それぞれの評価結果をMicro CTによるGold standardと比較し,MB2の検出精度を比較した.その結果,検出感度については歯科用実体顕微鏡(0.947),検出特異度についてはOCT(0.714)が最も高値を示した.さらにOCTを用いた場合,根管口が髄床底に出現するMB2だけでなく,根管中央付近で分岐しており臨床的に検出が困難と思われるMB2も検出可能であった(Fig.5a, b).この結果から,歯科用実体顕微鏡とOCTを併用することで,より安全かつ正確なMB2探索を行えると考えられた.

Fig.5 

Images of the mesiobuccal canal of a maxillary molar. (a) Three-dimensional image by micro CT, showing bifurcation of the mesiobuccal canal (arrow). (b) A cross sectional OCT image of the same tooth, which was three-dimentional scanned from the coronal side. MB2 is clearly observed (arrow). <B>, buccal side; <P>, palatal side.

2.3  外科的歯内療法における根尖部の観察

複雑な根管形態を呈する症例では根管内の機械的,化学的清掃で根管内細菌を完全に除去することは困難であり,また根尖孔外にバイオフィルムが形成されているなどの理由から,通常の根管治療では良好な経過が得られない場合がある24).また,根管治療は通常補綴装置の除去を要するが,これが困難もしくは不可能な症例も存在する.これらの症例では歯の保存の最終的手段として外科的歯内療法(歯根尖切除および逆根管充填)が行われる場合がある.すなわち,歯肉を剥離翻転後,根尖部硬組織を切除し(Fig.6a, b),歯根切断面から逆根管充填用窩洞形成を行い(Fig.6c),逆根管充填を行う(Fig.6d)25).現在では歯科用実体顕微鏡,CBCT,および超音波器具の発展により,外科的歯内療法の予知性向上が図られている25-27).とりわけ,術中に歯科用実体顕微鏡下で根尖の切断面を観察することにより(Fig.6a, b),根管側枝,イスムス,亀裂などの治癒不全にかかわる因子28)の検出がしばしば可能となる.しかし,前述した通り歯科用実体顕微鏡で観察できる範囲は切断面表面に限られ,深部の評価は困難である.

Fig.6 

Apical microsurgery (apicoectomy and retrograde root-end filling) of a maxillary left lateral incisor. (a) Apical dentin defect was observed (arrow) after a part of the apical portion of the root was resected. (b) After additional resection, endodontic sealer cement in the lateral canal (arrow) was observed. (c) Root-end cavity preparation with an ultrasonic device. (d) Root-end filling with Super EBA cement shown at high magnification. Block arrows show images of the resected root surface on a micromirror placed inside the surgical cavity. (e) The surgical area at low magnification immediately before suturing. (f) Periapical radiograph taken just after the surgery. (g) Periapical radiograph taken at fifteen months after the surgery, showing periapical bone healing.

これに対して,OCTは高解像度で象牙質内の構造物を観察でき,放射線被曝も無いために術中に複数回リアルタイムで撮像できることから,歯根の切断面の観察に応用できる可能性がある.そこで著者らは,OCTを用いてヒト抜去上顎小臼歯根尖切断面の観察を行い,その根管数の検出精度をCBCT,歯科用実体顕微鏡と比較した29).すなわち,ヒト抜去上顎小臼歯の根尖部をMicro CTで撮像したものをGold Standardとし(Fig.7a, b),CBCTで撮像後(Fig.7c),根尖部を切除した.その切断面に対してOCTで根尖側から三次元撮像を行い,水平断層画像を観察するとともに(Fig.7d),歯科用実体顕微鏡で観察し(Fig.7e),根尖側の微細な根管数の検出精度を比較した.その結果,OCT,CBCT,歯科用実体顕微鏡による根管数の検出精度に有意差を認めなかったが,CBCTで検出できなかった微細な根管を,OCTにより検出することができた.最近では,根管治療により発生した根尖部の亀裂をOCTにより検出できたとの報告もなされている30).今後,根尖部外科手術を想定した亀裂やイスムスの検出についてもさらなる検討を行いたい.ただし,口腔内でOCTを根尖部外科手術に応用するには,より小型で精密な画像検索が可能なプローブの開発が必要となる.

Fig.7 

(a) A three-dimensional micro CT image of the apical portion of a maxillary premolar with apical ramification. (b–d) Cross sectional images of root canals (arrows) taken with micro CT (b), CBCT (c) and OCT (d). (e) A dental operating microscopic image of the resected surface of the root.

2.4  歯根破折の検出

歯根破折は歯に過大な外力が加わることで生じ,破折面の方向により垂直性歯根破折と水平性歯根破折に大別される.両者の治療方法は大きく異なり,水平性歯根破折であれば保存的治療の可能性もあるが31,32),垂直性歯根破折では歯軸方向に破折面が発生し,改善困難な歯周組織の破壊が生じることから,治療方法としては抜歯が第一選択である33).抜歯に至った既根管治療歯の11%に垂直性歯根破折が生じていたと報告されている34).また,徹底した口腔ケアが行われた患者における歯の喪失原因を30年間追跡調査した結果,う蝕や歯周病はそれぞれ7%,5%以下であったが,垂直性歯根破折は62%であり,最多数であったとの報告もみられる35).医療技術の進歩や口腔ケアに対する患者の意識の向上に伴い,う蝕や歯周病による歯の喪失は減少傾向にあると考えられるが,一方で歯根破折による歯の喪失の頻度が増加し,その的確な診断の重要性が増している.垂直性歯根破折の特徴的な所見としては,口内法エックス線写真では歯根を取り囲む暈状のエックス線透過像や,限局性の深い歯周ポケットの出現が挙げられる.歯根破折の症状は,根尖性歯周炎や辺縁性歯周炎の症状と類似しているが36),治療方法が大きく異なるため,鑑別診断が重要となる.CBCTにおける骨欠損形態の解析により通常の根尖性歯周炎と歯根破折の鑑別診断が可能との報告もみられるが37),微細な破折の検出は臨床的にしばしば困難であることが臨床上の大きい問題点となっている.歯根破折の確定診断には破折線の検出が不可欠であり,肉眼,拡大鏡,歯科用実体顕微鏡による外科的あるいは非外科的な視診が用いられる.しかし,それらの方法はいずれも歯根表面に視認可能な幅,長さの破折線が出現したときに初めて有用となる.

著者らはヒト抜去歯を用いてOCTによる歯根表面の破折線の検出精度について検討した38).すなわち,ヒト抜去下顎大臼歯を用いて,Micro CTによる観察で得られた破折線の有無をGold Standardとし(Fig.8a),各観察者が肉眼,歯科用実体顕微鏡,並びにOCTの3種類の方法で各根の破折の有無の判定を行い,それぞれの検出精度を評価した.その結果,OCTの歯根破折の検出能力は肉眼よりも優れており,歯科用実体顕微鏡と同程度であることが示唆された.OCTでは歯根表面から内部へ伸展している破折線の拡がり(Fig.8b)や,歯根表面に達していない内部からの破折線を評価できる可能性があると考えられる.破折線の検出に関しては,歯冠部のエナメル質亀裂の検出にOCTが有用であったと報告されているほか39,40),根管内部からOCTで破折線を検出できる可能性についても示されている41).今回の研究結果からさらに臨床的な応用領域が広がり,歯肉退縮により露出した歯根面,あるいは歯周外科治療や外科的歯内療法の際の歯根面の観察にOCTを応用することで,歯根破折の検出頻度向上が図られる可能性がある.

Fig.8 

(a) A cross-sectional micro CT image of a tooth root, showing a crack line (arrows). (b) A cross sectional OCT image, showing the same crack (arrows). The light source was projected onto the root surface and scanned.

3.  今後の基礎研究と臨床応用の発展

OCTは,装置がコンパクトでありチェアサイドに設置可能である.また,瞬時に断層画像が得られ,非侵襲性であることから,治療中に何度も撮像することができる.歯内療法において,OCTは歯科用実体顕微鏡やCBCTといった既存の画像診断装置と組み合わせて使用することで,それぞれの弱点を補完し,さらに精度の高い根管治療を遂行できる可能性がある.著者らが行ったOCTの有用性に関するこれまで基礎研究の結果は上述の通りであるが,今後はそれらの知見を基にした臨床研究が望まれる.OCTでは象牙質内部への光到達深度に限界があり,その向上が必要であるという課題があるものの,今後の更なる発展に期待するところである.

謝辞

本稿を終えるに当たり,研究に御協力いただいた東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔機能再構築学講座歯髄生物学分野の諸先生各位ならびに共同研究者の国立長寿医療研究センター歯科口腔先進医療開発センターの角保徳先生に深く感謝申し上げます.

利益相反の開示

開示すべき利益相反なし.

参考文献
 
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