The Journal of Japan Society for Laser Surgery and Medicine
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ORIGINAL ARTICLE
Effect of Amplifier Gain to Photoacoustic SNR (Signal to Noise Ratio) in an LED-base Photoacoustic Imaging System
Toshitaka Agano Kunio Awazu
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2019 Volume 39 Issue 4 Pages 315-323

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Abstract

光音響イメージングは機能診断が可能であり,その臨床応用への期待から大いに注目されている.近年,小型,低価格化が可能なLED(Light Emitted Diode)光源を使いリアルタイム画像化を実現し,臨床応用を期待させるシステムが登場した.LEDのパルスエネルギーは固体レーザーに比較して著しく小さいためリアルタイム画像化は難しいと思われていたが,検出回路に前置増幅器を追加することでこれが可能になった.しかし,リアルタイム画像化を実現するために必要なSNRと増幅度がいくらになるかは明確ではない.我々はファントムとヒトの指を使い,増幅度 > 80 dBでSNR > 4の時にリアルタイム画像化が可能になることを見いだし,なぜ今まで前置増幅器なしにリアルタイム画像化が難しかったのかの理由を明らかにしたので報告する.

1.  緒言

パルス光で励起された光吸収体が熱膨張した時に発する超音波を検出して画像化する光音響イメージングは,光増感剤(ICG等)の位置がわかる1),血液(ヘモグロビン)が検出できる2),機能(酸素飽和度の程度)がわかる3),注射針/マーカー等の人工物が明瞭にわかる4)という特長を持っている.光音響イメージングは,このように機能診断の可能性をもちつつも,MRIのように高価,大型ではないことから,新しいモダリティーの登場として臨床現場から期待されている.

測定対象をヒトとしたとき,体内に侵入した励起光の多くは生体内で散乱することから,励起光としてはレーザー光のようなコヒーレンス性は求められない.よって光音響イメージングの光源として,一般に用いられている固体レーザーの代わりに,コヒーレンス性がない低価格なLEDを用いることが考えられる.光音響イメージングの光源としてLEDを使用した研究例はあるが5,6),臨床現場への導入可能なリアルタイム画像化の可能な本格的なシステムにはなっていなかった.我々は,小型低価格で,将来的に臨床現場へ導入可能なLED光源を使用した光音響イメージングシステムの基礎技術を確立した7-10)

一般に光音響イメージングシステムの光源として使用されている固体レーザーは,パルス幅が数ns~数十nsで,一パルス当たりのエネルギーは数mJ~数百mJあり,換算されたピークパワーで0.3 MW~100 MWの光出力をもっている.これに対して,LED光源の例では,パルス幅70 nsで一パルス当たりのエネルギーは400 μJであり,換算されたピークパワーは0.0057 MWと固体レーザーに比較して著しく小さい11).このために,LED光源を使った光音響の原理確認を目的とする実験系では信号の検出は可能なものの6),臨床での使用に供することができる画像化システムとして,リアルタイムで画像化することを予見できる内容ではなかった.しかし近年,光音響イメージングシステムの検出回路に前置増幅器を追加して組み込むことにより,一般的な固体レーザー光源を使用した光音響イメージングシステムの増幅器の増幅度(約40 dB)に対して大幅に上げて97 dBとしたAcousticX(CYBERDYNE; Tokyo, Japan)システムが登場し,世界で始めてLED光源によるリアルタイム画像化が可能になった.

2.  目的

LED光源を使用した光音響イメージングシステムで,増幅度97 dBでリアルタイム画像化が可能になったが,リアルタイム画像化を実現するのに必要なSNRはいくらになるか,またそのために必要な増幅度がいくらになるのかといったリアルタイム画像化に関わるSNRと増幅度との関係については明確ではない.我々は,ファントムとヒトの指を用いてそれらの関係を明らかにする.さらに一般の固体レーザー光源を使用した光音響イメージングシステムで使われている増幅度約40 dBのままで固体レーザー光源の代わりにLED光源を使った場合に,なぜリアルタイム画像化が難しいのかについて考察する.

3.  対象と方法

3.1  牛の血液の画像化における光音響信号とノイズの測定

実験系全体の構成をFig.1に示す.測定システムとして,Fig.2(a)のAcoustic X(CYBERDYNE; Tokyo, Japan)を使用した.光音響信号の検出のために,Fig.2(b)のように検出用超音波プローブ(中心周波数9.5 MHz,比帯域80%,ピッチ0.3 mm,128チャンネル)の両サイドにLEDアレー光源を配置した.Fig.1及びFig.2(b)において,超音波プローブの128chの方向およびLEDアレーの長手方向は,紙面奥行方向になるっている.光源の波長としては生体への深達度を上げるために,近赤外で且つLEDのハイパワー化が進んでいる波長である850 nmを選択し,このLEDチップをアレー化して使用している.それぞれのLEDアレーは50 mm × 7 mmの開口をもち,70 nsパルス幅で200 μJ/pulse,2個合計で400 μJ/pulseのパルスエネルギーを発生する.このLEDアレーと超音波プローブの位置関係は,LEDアレーからの光が超音波プローブの直下方向を照らせるように,LEDアレーをプローブ先端のトランスデューサー部分よりも検体に近づけ,更に2個のアレーの間隔を狭めて配置されている.

Fig.1 

Experimental setup.

Fig.2 

(a) Photoacoustic Imaging System AcousticX (CYBERDYNE;Tokyo,Japan). (b) LED arrays and Ultrasound probe. (c) Drive circuit of LEDs. (d) Bovine Blood in Micro Test Tube and Scan Direction (red solid line). (e) Human Fingers and Scan Direction (red solid line). (f) Example of Rf- raw data image. (g) Arrangement of Scanned Human Fingers and Ultrasound probe with LED arrays.

LEDアレーは,コントローラーPCにより発生させられた4 kHzのタイミング信号に同期させて,Fig.2(c)のLED駆動回路に示すように,低オン抵抗 MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)によって,パルス信号入力に従い高速にオン-オフが行われる.このオン-オフによりLEDアレーには400 Vのパルス状電圧を加えられてパルス電流が流れ,その結果としてパルス光が発生する.

これらの条件下にて,深さ方向ではヒトの髪の毛を使った測定で半値幅解像度は268 μmで,横方向では0.59 mmのラインスペースが分離が可能であるという性能が得られている12)

一方,Fig.1の検出の対象物であるファントムとしては,Fig.2(d) のようなマイクロテストチューブに牛の血液を入れたものを用いた.このチューブ内の血液がイントラリピッド水面下かつ超音波プローブのトランスデューサー位置から約21 mmの深さとなる位置に設置した.超音波プローブのゴムレンズの焦点距離が15 mmであり,この位置で感度が最大になるので,この位置から大きく離れない場所で,画像の深さ方向の中央近くになるように設置した.超音波プローブのスキャンは,マイクロテストチューブの断面方向(Fig.2(d)中の赤線で示す)に行い,この方向の光音響信号を取得した.

Fig.1に示すように,対象物である牛の血液から発生した光音響波は,128chのトランスデューサーを持つ超音波プローブで検出され電気信号に変換された後,増幅器で40~100 dB増幅される.128chの信号を同時並列に増幅するための多ch増幅器(ここでは8ch)ICは,入手可能なものとしては最大増幅度が50 dB程度のものしか存在しないことから,100 dBの増幅度を実現するために2段(前段と後段)の増幅器を使用して,増幅器の全体の増幅度(A × A倍)に対して,Fig.3に示すように前段(A倍)と後段(A倍)の構成とした.例えば全体の増幅度が80 dBのときは,前段40 dB,後段40 dBのように前段と後段の増幅度が同じになるように設定される.その後に14ビット40 MHzサンプルのADC(analog-digital converter)により,深さ方向の1024個のデジタル信号(水中では,深さ約38.4 mmに対応する)に変換される.

Fig.3 

Circuit model for SNR simulation.

これによりFig.2(f)に例示するように,マトリックスサイズ:128 × 1024の画像再構成前画像(Rf- raw data画像)が得られる.この画像はUSB3.0 Interfaceでつながれた専用PCに転送され,そこで384回平均化することにより信号に比較して相対的にランダムノイズを減らされる13).その次に画像再構成演算および画像表示に必要な各種の処理が行われ,PCモニタ上に表示される.

増幅器の増幅度を40 dBから100 dBまで,10 dBおきに変えて,牛の血液の画像を取得した.取得した画像再構成後の画像例をFig.4に示す.画像の実サイズは,横(128ch方向)38.4 mm × 縦(深さ方向)38.4 mmとなっている.この画像には牛の血液の位置からの光音響信号が「点」として認識されている.SNRの算出にあたっては,次に述べる方法でノイズ(N)および信号(S)を求めた.まずこの「点」の右側の50 × 50画素(実サイズで4.5 mm × 4.5 mm)のエリア内のデータの標準偏差(σ)を算出し,99.7%の信号が存在する波高値に対応する ± 3σをノイズ(N)とした.信号(S)に関しては,この「点」の最大値を出した後に,実際の信号の最大値にはノイズの半分(3σ)が加えられていると仮定し,3σを引いて求めた.

Fig.4 

Photoacoustic signal and noise evaluated area.

3.2  ヒトの指の血管の画像化における光音響信号とノイズの測定および画像評価

ヒトでのデータ取りを行うにあたりヘルシンキ宣言を遵守し被検者よりインフォームドコンセントを得た上で,前述のシステムにおいて増幅度を40 dBから100 dBまで10 dBおきに変えて,Fig.1の検出の対象物としてヒトの指(Fig.2(e))の画像化を行った.ヒトの指を,その指の上部の皮膚がイントラリピッド水面下かつ超音波プローブのトランスデューサー位置から約10 mm深さとなる位置に設置した.超音波プローブの感度が最大になる15 mmの位置から大きく離れない場所で,且つLEDアレーから被検体が離れることによるLED光の減衰が大きくならないように指の位置決めをした.イントラリピッド液内部での超音波プローブとヒトの指の配置は,Fig.2(g)のようになっており,超音波プローブのスキャンは,Fig.2(e)に示す人差し指,中指,薬指に対して,主に中指の第一関節と第二関節の間を赤い線に沿って行い,この方向の光音響信号を取得した.光音響イメージングにより得られる信号の特質上,この場合に得られた光音響画像は主に血管内部のヘモグロビンによるもので,更にこの画像では主に皮膚下の静脈血管および毛細血管の断面が示されている(Fig.5(a)).

Fig.5 

(a) Photoacoustic image data of human finger (grayscale). (b) Ultrasound image data of human finger (grayscale). (c) Photoacoustic (red) and Ultrasound (grayscale) image data of human finger. (d) Photoacoustic signal evaluated line (yellow) and noise evaluated area (red).

同時に取得された超音波画像(Fig.5(b))は,指の表皮とその内部を描画しているが,皮下2~3 mm下には骨があり,音響インピーダンスが軟部(肉,血管など)と著しく違うため,それよりも下の部分の画像にはアーチファクトが多く含まれている.この二つの画像の相対的な位置関係は,Fig.5(a)のデータを赤色に変換した上で,Fig.5(b)と重ねることで,Fig.5(c)として得られる.こうすることにより超音波画像と光音響画像の両方を観察することができ,その相対位置関係が有用な情報を提供することにつながる.

SNRの評価においては,Fig.5(d)の光音響信号の画像の黄色の縦線で示された部分の最大値を信号に対応する値とし,この場所の直上のイントラリピッド内の50 × 50画素のエリア内のデータの標準偏差(σ)を算出し,牛の血液の評価と同じ手順でSとNを算出した.

4.  結果

Table 1に牛の血液を使って増幅度40 dBから100 dBの間で10 dBずつ変えたときの,SとN,およびSNRの値を示す.またFig.6にSNRの増幅度依存について散布図を示す.更に光音響信号が「点」として認識される牛の血液の位置をほぼ中心とする50 × 50画素(実サイズ4.5 mm × 4.5 mm)のエリアの画像をFig.7(a)~(g)に示す.Table 1より,増幅度40 dBでSNR = 0.35であり,そのあとで増幅度が10 dBずつ上がるごとにSNRは増加して行き,増幅度90 dBではSNR = 9.33に達し,増幅度100 dBではSNR = 9.78と飽和する傾向がある.Fig.7(a)~(g)に示されている「点」の認識においては,増幅度40 dBでは,Fig.7(a)に示すように,「点」が認識できるかできないぎりぎりのレベルにある.増幅度50 dBになると,「点」が確実に認識できるようになり,その後は,「点」周辺のノイズが「点」の信号強度に対して相対的に下がって行っていることがわかる.さらに「点」の形状については,増幅度の増加に対応してそのサイズが大きくなり,増幅度70 dB以上でサイズおよび形状の変化が少なくなり変化が少なくなっているように見える.

Table 1  Signal, Noise and calculated SNR of bovine blood in total gain of from 40 dB to 100 dB.
Total Gain (dB) Signal (digit) Noise (digit) SNR
40 1.06 3.00 0.35
50 3.54 4.14 0.85
60 15.30 7.04 2.17
70 54.50 13.60 4.01
80 189.16 29.10 6.50
90 631.19 67.64 9.33
100 1622.70 165.91 9.78
Fig.6 

SNR vs Total Gain in using bovine blood.

Fig.7 

Photoacoustic signal image of bovine blood in amplifier gain of (a) at 40 dB, (b) at 50 dB, (c) at 60 dB, (d) at 70 dB, (e) at 80 dB, (f) at 90dB, (g) at 100dB.

Table 2にヒトの指を使って増幅度40 dBから100 dBの10 dBずつ変えたときの,SとN,およびSNRの値を示す.またFig.8にSNRの増幅度依存について散布図を示す.更に各増幅度において,Fig.9の血液の部分(黄色の長方形エリアで示す)200 × 100画素(実サイズ18 mm × 9 mm)のエリアの画像をFig.10(a)~(g)に示す.Table 1より,増幅度40 dBでSNR = 0.43であり,そのあとで増幅度が10 dBずつ上がるごとにSNRは増加して行き,100 dBではSNR = 7.61に達する.Fig.10(a)~(g)の血液部分の画像においては,増幅度40 dBでは,Fig.10(a)に示すように,ノイズに埋もれて全く何も見えないレベルにある.増幅度50 dBになると,かろうじて何かしら見えているというレベルになる.その後はノイズが減少して行き,それに伴って少しずつ血管が分布している状態が鮮明になり,増幅度80 dBになると画像の変化が少なくなる.さらに増幅度を上げるとさらに細かい構造が見えてくる傾向にあるが,その差は大きくない.

Table 2  Signal, Noise and calculated SNR of human finger blood in total gain of from 40 dB to 100 dB.
Total Gain (dB) Signal (digit) Noise (digit) SNR
40 1.24 2.89 0.43
50 3.02 4.96 0.61
60 14.84 10.67 1.39
70 55.18 19.13 2.88
80 172.28 38.92 4.43
90 672.90 102.00 6.60
100 1817.40 238.90 7.61
Fig.8 

SNR vs Total Gain in using human finger blood.

Fig.9 

Photoacoustic image data area (yellow) for image quality evaluation.

Fig.10 

Finger blood image in amplifier gain of (a) at 40 dB, (b) at 50 dB, (c) at 60 dB, (d) at 70 dB, (e) at 80 dB, (f) at 90 dB, (g) at 100 dB.

5.  考察

光音響イメージングの信号処理において,超音波プローブのトランスデューサーからの信号を受けて,増幅器により前段および後段の2段の増幅を行い,その増幅された信号をAD(Analog to Digital)変換する回路における信号とノイズについては,Fig.3に示すような回路モデルで説明できる.超音波プローブのトランスデューサーから得られた信号(s)は,増幅器により前段(A倍)と後段(A倍)の合計(A × A)倍だけ増幅される.一方ノイズについては,信号と同様に前段(A倍)と後段(A倍)の合計(A × A)倍だけ増幅されるノイズ(N1),と後段(A倍)でのみ増幅されるノイズ(N2),更に全く増幅されない固定的なノイズ(N3)から成り立つ.これらのノイズは,例として増幅度40 dBの時のノイズを評価したエリアのヒストグラム(Fig.11(a))と画像(Fig.11(b))を示ように,ほぼランダムと考えてよく,信号に対するノイズ大きさの評価に関しては,その“エネルギー”(ノイズの2乗に相当する)での足し合わせが可能である.このことから,この系でのSNRは,以下の式で表される.

Fig.11 

Histogram (a) and image (b) of noise evaluated area at 40 dB gain.

  

SNR=s×A×AN1×A×A2+(N2×A)2+N32

Fig.6のカーブをもとに上記の式によるカーブフィッティングをした結果,N1~N3のノイズをsの倍数で表すと,N1 = 0.0935 × s,N2 = 10.5 × s,N3 = 300 × sとなった.Fig.6のSNRとフィッティングされたカーブをFig.6の実測値と同じ図に表すと,Fig.12のようになる.このフィッティングにより得られたN1~N3を上式に代入すると,SNR(A→∞) = 1/0.0935 = 10.70となり,更に増幅度を大きくしてもSNRは,超音波プローブのトランスデューサーの出力段階の信号(s)とノイズ(N1)の比で決まり,SNR = 10.70で飽和することが予想される.

Fig.12 

Curve fitting for SNR of bovine blood experiment.

固体レーザー光源を使用した光音響イメージングシステムでは,LED光源に対して著しく大きなピークパワーにより得られる光音響信号が大きいので,一般に市販の超音波診断機器で多く用いられている40 dB前後の増幅度をもつ1段の増幅器が使用されている.この場合には,Fig.3に示す回路モデルにおいて,後段の増幅器がなく前段の増幅器のみを使用した回路モデルになる.この場合のSNRは以下の式となる.

  

SNR=s×A(N1×A)2+N32

増幅度が40 dBつまり100倍の時はこの値をAとし,さらにフィッティング計算で得られたN1,N3の値を入れると,SNRが予想できる.その結果は,SNR = 0.33となり,Fig.7(a),Fig.10(a) 相当の画像となり,まともな光音響画像を得ることができないことは容易に想像される.

ヒトの指の静脈血のSNRについては,Table 2とFig.8に示すように増幅度の増加とともに増加して行く傾向にあり,増幅度100 dBにおけるSNRは7.94と牛の血(SNR = 9.78)よりも低いが,近い数値になっているので両者を比較した議論が可能であろうと思われる.Fig.10(a)~(g)から,増幅度70 dBでは血液の画像がまだノイズっぽい印象を与える.しかし,増幅度が80 dBを超えると,血液の画像へのノイズの影響が少なくなり,増幅度100 dBになるまで多少の画像の良化が見受けられるものの,増幅度80 dB以上あれば,光音響画像として使えるレベルものであると思われる.この時のSNRは4.43であった.

一方Fig.7(a)~(g)に示す牛の血液部分の画像が形状安定して見えるようになるのは増幅度70 dBであり,この時のSNRはTable 1から4.01である.牛の血液およびヒトの血管が安定して見えるSNRは4程度以上であり,両者に一致が見られる.つまり,SNRが4以上になれば,実用的な光音響画像となると言える.

6.  結論

LED光源光音響イメージングにおいて,被検体としてヒトの血液をリアルタイム画像化するには,増幅度80 dBの増幅器が必要で,SNR > 4を実現する必要がある.さらに細部の鮮明性を実現するためには,増幅度100 dB相当の増幅があると良いということがわかった.増幅度97 dBを採用している,AcousticXシステムはLED光源光音響イメージングにおいてリアルタイム画像化に必要十分な増幅度をもつものと思われる.

また,一般の固体レーザー光源光音響イメージングシステムで用いられている増幅度40 dB前後の増幅器のままでは,そのまま光源としてLEDを用いた場合には,増幅度が大幅に不足するために,リアルタイム画像化が非常に難しいことが予想される.

謝辞

本研究を遂行するにあたり,CYBERDYNE株式会社の佐藤直人氏に適切な助言をいただきました.感謝いたします.

利益相反の開示

利益相反なし.

参考文献
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