2019 Volume 40 Issue 2 Pages 132-139
レーザー作業者の安全対策のひとつとして重要な「保護めがね類の着用」では,選定作業に保安上の間違いがあってはならない.保護めがねに求められる必要事項は厚生労働省の通達には詳細な記載がなく,JISC6802「レーザ製品の安全基準」に記述はあるが,保護具の選定プロセスまでは記載がないので,これらの規格内容を参考に,安全保護対策としての保護めがねの使用時における留意点を本文にまとめて述べる.
In “Wearing safety eyewear” which is important as one of safety measures for laser processing workers, there must be no mistakes in the selection property safety eyewear for the laser work. The necessary items required for safety eyewear as mentioned above are not detailed in the Ministry of Health, Labor and Welfare Circular and are also described in JIS C 6802 “Safety Standards for laser Products”, but since the selection process of safety eyewear is not described, Based on the contents of these standards, I would like to refer to summarize the points to keep in mind when using safety eyewear for the laser as safety protection measures.
医学・医療分野では診断,治療などに様々なレーザー装置が導入されている.それらが設置された医療現場においては患者や医師を含む医療スタッフが何らかの形でレーザーの危険にさらされている.患者の場合と医師を含む医療スタッフに対する安全対策は実際の運営上は異なるかもしれないが,初めてレーザー機器を導入する場合や,レーザー機器を新設するなど,機器の導入時の安全対策はいかなる作業においても,作業者の保護を最優先事項として行われる.安全対策は人体へのリスクの認識から,作業現場の状況把握などを確実にし,適切に実施されなければならない.作業開始は災害防止のための安全管理が継続して実施できることが確認されたうえで行われることになる.厚生労働省通達「レーザー光線による障害防止対策要綱」の本文には,レーザークラス別に障害を防止するための措置基準が規定されているが,機器設置から作業開始までの安全対策に関するプロセスは具体的に記載がない.作業者の安全対策のひとつとして重要な「保護めがね類の着用」では,選定作業に保安上の間違いがあってはならない.保護めがねに求められる必要事項は前述のとおり通達には詳細な記載がなく,JISC6802「レーザ製品の安全基準」に記述はあるが,保護具の選定プロセスまでは記載がないので,これらの規格内容を参考に,安全保護対策としての保護めがねの使用時における留意点を以下にまとめたので,参考にしていただきたい.
「レーザーの人体に対する悪影響」に関しては「皮膚に関してはやけど」,「目に関しては角膜,網膜障害」「その他の障害として,装置の高電圧部接触による感電や加工粉じん,発生ガスなどの2次的な影響による健康障害」などが一般的に考慮されている.社会的に健全な活動を維持するためには,当然,心身ともに健康な状態を維持しなければならない.偶発的なリスクから人体を保護するということも当然この健康維持に必要な行動になる.人は外部情報の80%以上を目から取り入れていると言われ,不幸にも視機能障害になった場合の社会的生活レベルの低下はたいへん大きいものであると言える.たとえば視機能障害になった場合の労働災害の保障額も高いレベルに設定されていることからもその重要さを理解することができる.保護めがねの必要性を云々する前に,レーザーによる目の障害がどのような状況で起こるのかを確認しなければならない.
人はレーザーの特性を一般生活の中で経験していないため,その危険に対してはかなり鈍感であるといえる.一般の自然光にはないレーザーの本来の特性である「指向性」や「単色性」が場合によっては大きな災害を呼び起こすことを知識の中には持っても,経験的に体に備え付けてはいない.これが偶発的なリスクを受ける人間の防御感覚を狂わせてしまう原因であると考えられる.
一般的な共振器を備えたレーザーは「指向性」が強く,すべての放射が目に入ることもある.同じ出力の白熱電球と比較してもその放射露光は比べ物にならないくらい大きく,光源から離れることで,その危険から回避できたような勘違いを起こすこともあり,予想以上のダメージを受ける原因となっている(Fig.1).
Differences in properties from laser and general light source (directivity).
さらに,レーザー自体の「単色性」に起因する傷害では角膜や皮膚などに比べ特に網膜の傷害を重要視している.これは,人間の危険に対する感覚が皮膚の傷害をベースにしているからである.レーザーの単色性は,一般の光源にはない特別なもので,網膜上のパワー密度が高まる原因になる.具体的には水晶体の屈折率が波長によって違うため,同じパワーの光入射でも,白色光では色収差により一点に結像しないが,単色光では網膜に結像する密度が高くなり,これも予想以上のダメージを受ける原因となっている(Fig.2).
Difference in properties from laser and general light source (monochromatic).
目は情報を入手するためのセンサーとして人体の表面に位置し,眼球はまぶたで保護されている.機能上,開口部は衣服等で覆うことができず,ほとんどの場合まぶたは開いた無防備な状態である.また,まぶしさなどの危険を感じて回避するまばたきの運動もレーザーの曝露に対して,基本的に無防備と言える.つまり,まぶしいので目を閉じてまぶしさから逃れるという感覚的な対応は,この場合,安全を確保するうえで適当とはいえない.そして,前述のとおり事故に遭って目が傷害をうけた場合,後遺症としての視機能障害が多少なりとも残るのである.その後遺症の根拠として,目の組織である角膜内皮や網膜は再生がきかないことが挙げられる.さらに,目はその各組織によって分光吸収特性が違う.曝露されるレーザーの波長によって影響を受ける目の部位が違い,強度,時間によって傷害の程度が異なるのである.レーザーの波長別では400 nm以下の紫外線及び1,400 nm以上の赤外線は角膜と水晶体の傷害の原因とされている(Fig.3).
Laser wavelength and ocular damage (Below 400 nm, 1,400 nm to 1,000 μm).
一方,400 nm~1,400 nmの光は角膜,水晶体を通過して網膜に到達するので網膜の傷害の原因とされている.さらにこの波長範囲では水晶体の集光作用によって,パワー密度が高められ,さらに強く傷害を受けることになる(Fig.4).
Laser wavelength and ocular disorder (400 nm to 1,400 nm).
また,網膜の黄斑部中心窩は,高解像度で視認するための眼の組織でたいへん重要な部位といわれ,偶発的にレーザーの曝露を目に受けた際に視野の中心に位置するためダメージを受け易い部位であると考えられており,この部位にダメージを受けた場合には確実に視力低下を引き起こすことになる.当然,屈折異常の起因によるものではないので,度付きレンズやコンタクトレンズなどによる矯正も効力がない.つまり,目に関しては前述のとおり予想を超えたダメージを受け,社会的生活レベルの低下に関わる障害が残る可能性があるということを正しく理解する必要がある.
JISC6802「レーザ製品の安全基準」では,レーザー装置をレーザーの人体への危険度を考慮して,8つのクラス(1,1M,1C,2,2M,3R,3B,4)に分類している.これらではクラス1が,危険度が低く,クラス4が最も危険度が高いのであるが,厚生労働省通達「レーザー光線による障害防止対策要綱」の本文には,その中のクラス1M,クラス2M,クラス3R,クラス3B,クラス4に対して障害を防止する措置内容が定められている.前項で示した通り,高出力レーザーの曝露による目の障害は波長,強度,曝露時間で障害の状況が異なる.本来は「レーザーの人体への影響」を避けるために必要な対策としては,まず,レーザーによる作業を廃止・変更などを行なえるかどうか検討することになる.実際,レーザー装置の導入が前提であるので作業を廃止・変更などは行なえず,レーザーをリスクとした場合に適用される作業におけるリスク低減措置は,第一に工学的な対策を講じることになる.「レーザーを外部に出さない」ことがそれに当たる.そして,第二に「レーザーを直接見ない方法を考案する」,もしくは「レーザーの曝露安全レベル内での活動を行う」など作業管理的な対策を行うなど優先的(可能な限り高い順位で実施する)に行う.また,単独で効果が確認できるものであっても,それぞれの相乗効果が期待できるので,2重3重の対策を実施することが望ましいと思われる.そして,これらが十分に講じることができず,リスクの除去や低減しきれない場合には「個人用保護具(レーザー用保護めがね)の着用」の実施が検討されなければならない.厚生労働省の通達,JISC6802「レーザ製品の安全基準」においてもリスクアセスメント評価が前提ではあるが,クラス3Rの不可視光レーザー,クラス3B以上の高出力レーザー装置に対しては個人用保護具(レーザー用保護めがね)の着用が規定されている.
レーザー装置導入に際しては,装置のクラス分けからレーザー照射条件により最悪の場合を想定した人体への曝露状況を把握し,これらの前項に記載のように人体への影響を考慮し,十分な知識と経験を有するレーザー機器管理者が中心となり,現場設置の前から作業場の想定されるリスクを低減できるように,周辺環境対策など工学的な対策を検討し,作業者の保護に関して作業管理対策を検討するべきである(Fig.5).
A series of safety management flows from installation of laser equipment to operation management.
レーザー装置の導入後,作業実施の前に保護めがねの正しい選択をしなければならない.クラス3Rの不可視光レーザー,クラス3B以上の高出力レーザー装置に対しては個人用保護具(レーザー用保護めがね)の着用が規定されている.作業者の安全対策のひとつとして重要な保護めがね類の着用では,着用する保護めがねの選定作業に保安上の間違いがあってはならない.「レーザーの人体への影響」を避けるための最後の手段としてのレーザー保護具に求められる機能は,レーザーの曝露を人体の限界値以下に減衰させることである.JISC6802「レーザ製品の安全基準」に則った合理的な方法で,使用するレーザー装置の性能から保護が必要かどうか判断し,必要な場合の保護フィルタに求められる遮光性能を計算するなど,一連の保護めがねの選定作業の流れを現場レベルで実践出来るようにするべきであるが,以下に実践に役立つ保護めがねの選択に役立つポイントを示す.
レーザー用保護めがねの選定については,①レーザー製品のクラス分類,②動作波長,③限界開口,④放射露光または放射照度,⑤最大許容露光量(MPE)の確認が必要となる.
①~⑤は基本的には使用するレーザー装置の出力条件によって決定される数値であるが,数値の意義,繋がりについて理解を深めることができれば,どのような現場のどのような作業工程にでも対応できるので便利である.①のレーザー製品のクラスはメーカの表示義務があり本体に必ず表記されている.前記のとおりレーザー製品のクラスにより保護めがねの適用の有無が決定される.②のレーザーの動作波長は保護めがねフィルタが対応できる範囲の確認のために必要である.また,後述する⑤最大許容露光量(MPE)の決定にも動作波長の確認が必要となる.③の限界開口とは下記に示す計算式にて目に曝露されるレーザーの④放射露光もしくは放射照度を算定する際に用いる.曝露影響を受ける部位と波長の関係で限界開口の大きさが異なるので注意が必要である.
算式は以下のとおりである.
(放射露光もしくは放射照度)=(レーザーパワー)/(限界開口面積)
⑤最大許容露光量はレーザーの発振波長と露光時間で決定される変数でありJISC6802「レーザ製品の安全基準」に記載されているが,光源の広がり角などで値が変わる.また,レーザーが連続発振の時とパルス発振の時とではその条件が変わり,パルス発振の場合は平均出力と1パルスの露光と熱的限界値を考慮した3条件の最も厳しい値が与えられる.
レーザーの曝露(放射露光もしくは放射照度)が人体の限界値(最大許容露光量MPE)よりも大きい場合は,(放射露光もしくは放射照度)を(最大許容露光量MPE)以下にするために必要な減衰率を算出する.概念としては,クラス3R(不可視光),クラス3B以上のレーザーを保護フィルタでクラス2以下の放射レベルに減衰させることである.
正しい保護めがねを選定するに当たり,レーザー装置から放射されたレーザー(波長)が目に直接入射した場合に,少なくとも目の開口部(眼球の露出している部分,もしくは波長によっては瞳孔部分)に入射するレーザーを目前で遮光する機能を持ったフィルタを配置しなければならない(Fig.6).イメージとしては正面からの曝露を想定している.
Imaging of relationship between laser, protective filter and eyes.
Fig.6をイメージしたうえで(放射露光もしくは放射照度)/(最大許容露光量MPE)を計算し,結果が1以上の場合は保護が必要と判断し,1以下の場合は,保護は不要と判断できる.保護が必要な1以上の数値は保護が必要な場合の保護フィルタに求められる減衰率の逆数であり,その数値を対数で表したものを必要光学濃度と表現する.レーザー用遮光保護具には波長とその波長における光学濃度が示されているため,使用するレーザー波長を確認のうえ,必要光学濃度より大きな光学濃度を持つ保護具を選定しなければならない(Fig.7).
Wavelength and optical density notation (example).
上記が,レーザー用遮光保護具の選定の流れになるが,対象レーザーが可視光の場合で作業上ビームを視認する必要がある場合は安全レベルを保持した範囲で減衰率を低く設定する光軸設定などに有効な製品も提案されている.ビームの広がり角や観察位置の距離などにより曝露条件が変化することがある.もし選定が困難な場合は,レーザー装置メーカまたは保護具メーカに,必要な項目を伝えれば選定作業に協力してもらえる.参考までに選定に必要な項目をFig.8に記載する.
Confirmation of inquiries for user (example).
前記のとおり,クラス3R(不可視光),クラス3B以上のレーザー装置の使用における作業実施,また,継続的な安全維持には,レーザー用遮光保護具の使用が最低限必要となる.レーザー用遮光保護具としては保護めがねと遮光板が製品化されているが,技術的な特徴として保護めがねの場合はレーザーの選択的吸収機能を持った保護フィルタ(プラスチック製,ガラス製)をめがねのフレームに取り付けたものである(Fig.9).
Laser protective equipment (type of laser protective glasses and goggles).
保護めがねの種類はFig.9に示すとおり,個々の眼球を覆う二眼グラスタイプ,両眼部を覆う一眼グラスタイプとゴーグルタイプがあり,使用者が眼鏡使用の場合もその掛けめがねの上から装着できる機能を持つものが比較的多く提案されている.いずれの場合も目に対する保護範囲はそれぞれ一定以上保証されている.なお,レーザー用遮光保護具の保護フィルタに求められる技術的特徴として,眼部を覆う保護フィルタはレーザーの波長に対する選択的な遮光性を持ち,レーザーに対してのみ防護性を有するものでレーザー以外の波長をできるだけ多く透過させる.また,製品による差異はあるが,素材にガラスなどの耐熱素材を選択し,レーザーの曝露の結果,発生する熱に対する耐久性を持たせたものもある.さらに,レーザー用遮光保護具は対応するレーザーの波長を反射する機能を有した製品も提案されているが,反射機能を持った製品は反射光による2次災害,ミラーなどの反射膜においてはピンホールの存在や,使用中の反射膜の傷などによる欠陥が懸念されるので,特に使用上の注意が必要である.
なお,遮光板に関しては保護めがねと同じくレーザーを選択的に透過させないものを選ぶ場合と,耐熱性や防炎性を重視した非透過性の素材などを用い,用途や使用目的に応じたボックス形状,パネル形状やカーテン形状のものを適宜選ぶ必要がある(Fig.10).
Laser protective equipment (Applied product of laser shielding windows and curtain).
医療現場は一般作業現場とは違い,医師が手持ちでクラス1Cレーザーを至近距離で操作することもある.この装置では目などへの直接曝露は無いと考えられている.なお,治療用の機器によってはレーザー以外のフラッシュランプ光源などを使用する場合がある.患部や壁などからのフラッシュランプ光の反射光や散乱光曝露など,目に対しては強度によっては急性の網膜障害の可能性もある.光の強度に応じて,透過率を変化させる液晶シャッター機能付きのレーザー遮光保護めがねも販売されているので,手術などの作業内容に応じた選定が可能である(Fig.11).
Laser protective glass with liquid crystal shutter.
(1)レーザー装置が稼働している状態のレーザー管理区域に入る場合には,不意な曝露から護るためレーザー用保護めがねを着用して入る必要がある.そのため,レーザー用保護めがねは管理区域の外に保管しておく方が望ましい.また,周辺の作業者への影響も十分に考慮し,管理区域内への保護具なしでの入室を固く禁ずるなど徹底した被曝対策を行わなければならない.
(2)保護めがねの装着状況によっては,周辺からの曝露が懸念されるので,作業時の装着状況などを作業者自身だけでなく,周囲からの観察を行う必要がある.この件については過去に装着者の顔面形状,製品の形状などで保護めがねと顔面のすき間が相違する場合の防護範囲の違いを検討した確認試験を行っており,その結果,めがねが前方にずれる,いわゆる鼻眼鏡のような場合には,下方向に眼鏡と顔面にすき間があき,装着者の顔面形状によってはそのすき間からレーザー曝露するリスクの可能性が示唆された.特にマスクなどの他の保護具との併用でそのような状況が想定される場合は,ゴーグル形状などを選択してリスクを軽減しなければならない(Fig.12).
Confirmation of gap change due to wearing of protective eyeglasses.
(3)レーザー用保護めがねは作業性を向上させるため,より明るいレンズであるよう改良されてきているが,その特性上レンズには色がつくため手元が暗く,作業性が低下する可能性がある.細かい作業などが伴う場合は,照明を追加し,手元を明るくする処置を行うことが望ましい.
(4)可視光レーザーに対応する保護フィルタではレーザー波長に近い色調の表示光などは見えなくなり,色彩なども変化する可能性があるため,たとえば医療現場では皮膚や血管の色などを誤認識するなど作業上の問題が無いように事前対策を行う必要がある.
(5)作業中に高密度なレーザーの曝露が起こった場合はプラスチック製の保護フィルタの場合は曝露したレーザーによりフィルタ内で吸収熱が発生し,表面溶融が起こり,さらに材料によっては発泡,蒸散などが発生し,製品の機能を維持できなくなることがあるので,レーザー曝露が起こった場合は,即刻使用を取りやめ破損品扱いとし,再使用しないようにする.ガラス製のフィルタの場合は部分的な熱収縮により曝露後時間をおいて破損(ひび割れ,破砕など)が発生し,2次災害の可能性があり危険であるので,同様に使用を取りやめ,破損品扱いとし,再使用しないようにする.当然,事故が起こった事実を正確に記録し,レーザー機器管理者に早急に報告し再発防止の対策を講じなければならない.
(1)製品の取り扱いについては,ユーザーガイダンスなど,各メーカによる推奨を事前に確認して用途上の計画を立てる必要がある.特にレーザー製品導入に際しては製品のメンテナンスと合わせて保護めがねなどの定期メンテナンスの方法などについての方策,頻度などを具体的に決定することが重要であり,使用上における不具合の発生などが未然に防げる対応を検討しなければならない.
(2)使用後の保管については製造メーカが推奨する方法を踏襲する必要がある.性能維持だけではなく,装置が複数ある場合などの誤使用などの人為的なミス,製品の紛失など単純なトラブルを防ぐためにも実施検討しなければならない.
(3)製品は安全な使用を重視し設計,製造しており出荷時に品質の確認ができており,ユーザーにおける改造,また,不具合箇所の修繕などを行なってはならない.
レーザー機器導入の段階からレーザー用保護めがねの使用時における留意点を理解し,正しい保護具の選定を行うことはたいへん重要なことである.保護具の使用が必要とされる状況ではその保護具が適切に選定された段階で,安全プロセスのスタート地点に立てた段階である.その先は日々の安全に対する意識を高く維持し,選定した保護めがねは正しく保守し使い続けなければならない.なお,前記の安全管理フローにおいては個人用保護の検討と同時に管理区域の設置を提案しているが,広い作業エリアに視点を移し,危険な作業環境のモリタリングを積極的に実施するなど,リスクアセスメントの範囲を広めることも重要である.一般の作業現場では管理区域内では人体の曝露限界値を元にして,保護具を使用しない状況での安全作業の確保がはかれるNOHD「公称眼障害距離」やNHZ「公称障害距離区域」というリスクと人体の安全な距離感を持たせ,作業環境の安全性評価を具現化することも大きな安心につながるものと考えられている.レーザーだけではなくすべてのレーザー現場に対応できるように今後は「安全」を現場レベルで組み立てる判断力が必要と思われる.そのためのレーザー作業独自のリスク分析についてのサービスの提供,それらを標準化する取り組みも大きな意味での安全管理基準として,作業現場に不可欠なものになると思われる.本編ではレーザー用保護めがねの選定作業において,正しく選定するために必要な安全基準を中心にその技術的な背景も含めてまとめ,正しく使用するための使用者の意識の問題としての「なぜ保護めがねが必要なのか」を納得できるように,できるだけ詳しくまとめ,使用することの必然性を確認いただける構成とした.また,レーザー用保護めがね製品のメンテナンスや継続的な安全管理,不適切な使用による事故発生の可能性など,本来の使用上の留意点を細かく解説した.そのため全体的な広い範囲での安全対策の解説が少し不足していたかもしれないが,他編による用途に応じたレーザー装置の安全対策を参考にしていただきたい.
利益相反なし.