The Journal of Japan Society for Laser Surgery and Medicine
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ORIGINAL ARTICLE
Safety and Effectiveness of Penles® Tape 18 mg (Lidocaine) for Pain Relief in Skin Laser Treatment (Drug Use-results Survey)
Yuji Kawaharada Fusako SatoTsuyoshi Kani
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2020 Volume 40 Issue 4 Pages 320-329

Details
Abstract

リドカイン18 mg含有テープ製剤であるペンレス®テープ18 mgの「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」に対する使用成績調査を実施し,304例の調査票を収集した.安全性解析対象症例280例において,4例5件(1.43%)の副作用が発現したが,全て非重篤な事象であった.医師評価による皮膚レーザー照射時の痛みの程度を指標とした有効率は80.6%(241例/299例)であった.以上より,ぺンレス®テープ18 mgの「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」に関する安全性と有効性が確認された.

Translated Abstract

We conducted a drug use-results survey of Penles® Tape 18 mg, a patch formulation containing lidocaine 18 mg, for pain relief in skin laser treatment and collected case report forms of 304 cases. Five adverse drug reactions occurred in four patients (1.43%) of 280 patients in the safety population, all of which were non-serious. The effectiveness measured by the pain level at the time of laser irradiation to the skin evaluated by physicians was 80.6% (241/299 cases). The above results confirmed the safety and effectiveness of Penles® Tape 18 mg for pain relief in skin laser treatment.

1.  緒言

ペンレス®テープ18 mg(以下,本剤)は,有効成分として1枚(30.5 × 50.0 mm)中に局所麻酔薬のリドカインを18 mg含有するテープ剤である.本剤については,「静脈留置針穿刺時の疼痛緩和」の効能・効果にて1994年10月に製造承認を取得した後,2012年6月に「伝染性軟属腫摘除時の疼痛緩和」,2013年6月に「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」の効能・効果が追加承認された.そこで「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」での日常診療下における本剤の安全性及び有効性に関する情報を収集するため,2014年1月から使用成績調査(以下,本調査)を実施した.本稿ではその調査結果を報告する.

皮膚レーザー照射療法の適応疾患には色素性皮膚病変や血管腫といった小児から発症する疾患も含まれており,それらの多くについて早期の治療が推奨されている.また,臨床試験における小児の症例数は限られていたことから,本調査では4歳未満の年齢層を含めた小児の症例を重点的に収集した.更に,「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」においては,他の効能・効果より高い用量が設定されているため,本剤の安全性を確認する目的で高用量が使用された症例の収集にも努めた.

なお,本調査は,本剤の製造販売会社である日東電工株式会社と販売会社であるマルホ株式会社が共同で実施した.本調査結果をもとに2017年9月に再審査申請を行い,2018年9月にカテゴリー1(「効能・効果」及び「用法・用量」の変更なし)の再審査結果が公示された.

2.  目的

「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」に対して本剤を使用された患者での日常診療下における本剤の安全性及び有効性に関する情報を収集し,安全性及び有効性に影響を与えると考えられる要因を検討するために使用成績調査を実施した.

3.  対象と方法

3.1  対象患者

皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和を目的に本剤を初めて使用した患者とした.

なお,患者に対しては,患者情報が守秘された上で本調査のデータが本剤の適正使用のための情報提供に使用されるほか,本剤の再審査申請時の基礎資料として使用されること,本調査で得られた副作用情報が独立行政法人医薬品医療機器総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームページに公開される場合があることを説明し,文書または口頭にて同意を得た.

3.2  目標症例

調査予定症例数は300例とし,その内,小児(14歳以下)の症例を200例以上収集することとした.

3.3  調査方法

調査方法は,プロスペクティブな調査とし,中央登録方式にて実施した.登録は担当医師が本剤貼付後3日以内に患者情報を登録センターにFAX送付することで行い,観察期間終了後,調査票に患者情報を記入した.

観察期間は本剤貼付後7日間以上とし,有効性の判定は皮膚レーザー照射時に実施した.なお,本剤貼付後来院していない患者には,可能な限り,電話にて安全性を確認した.

また,本調査は,GPSP省令(医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令:平成16年12月20日厚生労働省令第171号)を遵守して実施した.

3.4  調査項目

本調査における主な調査項目は以下のとおりとした.

①患者背景

性別,妊娠・授乳の有無,年齢(生年月日),入院・外来,身長,体重,使用理由,今回治療を行う対象疾患,対象疾患の面積,対象疾患発症時の年齢,本剤使用経験の有無,合併症,既往歴.

②本剤の使用状況・貼付部位

本剤貼付開始日時,本剤除去日時,使用枚数,本剤貼付部位(顔面,顔面を除く頭部,頸部,体幹部(前面),体幹部(後面),上肢,下肢),貼付部位での皮膚異常の有無,貼付状況の異常の有無.

③皮膚レーザー照射状況

皮膚レーザー照射開始時刻,皮膚レーザー照射終了時刻,皮膚レーザーの種類,皮膚レーザー照射密度,Qスイッチ有無,冷却装置有無,照射ショット数,照射面積,照射予定範囲との差異.

④有効性

医師評価(皮膚レーザー照射時の痛みの程度)により確認した.また,Verbal Rating Scale(VRS)による患者評価も副次的な評価指標として確認した.

医師評価(皮膚レーザー照射時の痛みの程度

担当医師が皮膚レーザー照射時における本剤の疼痛緩和効果について,観察された患者の態度,動作(痛みに対する身体的反応)を基に「皮膚レーザー照射に対する身体的反応がない」,「皮膚レーザー照射に対する身体的反応がわずかにある」,「皮膚レーザー照射に対する身体的反応がある」及び「判定不能」の4段階で判定した.

患者評価(VRS

担当医師がVRSによる評価が実施可能な患者を対象に,皮膚レーザー照射時における本剤の疼痛緩和効果について,「痛くないまたは皮膚レーザー照射の感覚はあるが痛くない」,「少し痛い」,「痛い」及び「すごく痛い」の4段階で判定した.VRSによる評価が実施不可能な場合及び貼付が不完全であった場合等は「判定不能」とし,その理由を記載した.

⑤有用性

担当医師が過去の皮膚レーザー照射療法経験,有効性,有害事象及び臨床検査異常変動等を考慮し,「高い(極めて有用)」,「まあまあ高い(有用)」,「普通(やや有用)」,「低い(どちらともいえない)」及び「不要(好ましくない)」の5段階で判定した.

⑥有害事象

有害事象名,発現日,重篤度,転帰日,転帰,本剤との因果関係,レーザー照射との因果関係,本剤以外の要因,処置,コメント.

3.5  解析方法

主に記述統計を行った.要因分析の解析では,2 × 2分割表の場合はFisher直接確率法,2 × n分割表の場合はCochran-Armitage検定を用いた.なお,要因のカテゴリーが不明または未記載の場合は検定対象から除き,有意水準は両側5%とした.

収集した有害事象のうち,本剤との因果関係が否定できない有害事象(以下,副作用)について,「ICH国際医薬用語集日本語版(MedDRA/J version 20.0)」に基づき,器官別大分類(System Organ Class: SOC)及び基本語(Preferred Term: PT)で集計した.

4.  結果

4.1  症例構成

2014年1月から2016年12月までに23施設から304例が登録され,全例の調査票が収集された(Fig.1).

Fig.1 

Flowchart of patient recruitment.

304例のうち,登録違反2例と過去に本剤を使用した経験があることが判明した1例及び過去の本剤使用経験が不明の2例の計4例(除外理由の重複症例が1例あり)を除いた300例を集計解析対象とした.

集計解析対象のうち,本剤貼付後に来院がなく電話による安全性の確認ができなかった20例を除いた280例で安全性の評価を行った.また,集計解析対象のうち,貼付枚数もしくは貼付時間に「不明・未記載」があった1例を除いた299例で有効性「医師評価(皮膚レーザー照射時の痛みの程度)」及び「患者評価(VRS)」を評価した.

有用性(医師有用性)については,「医師評価(皮膚レーザー照射時の痛みの程度)」の解析対象症例から,本剤貼付後に来院がなく電話による安全性の確認ができなかった20例を除いた279例を対象とした.

なお,日常診療下での調査であったことから本剤の使用枚数について,「用法・用量」の範囲を超えて使用された症例も集計解析対象に含めて評価を行った.

4.2  患者背景・本剤使用状況・皮膚レーザー照射状況

集計解析対象症例300例の患者背景・本剤使用状況・皮膚レーザー照射状況をTable 1に示した.

Table 1  Patient characteristics/Usage of Penles® Tape 18 mg/Irradiation time and type of skin laser
要因 調査症例数
合計 300(100.0)
性別 89(29.7)
211(70.3)
年齢
 Mean ± S.D.:16.4 ± 20.7
 Min~Max:0~81
3歳以下 120(40.0)
4歳~5歳 21(7.0)
6歳~7歳 22(7.3)
8歳~9歳 12(4.0)
10歳~14歳 22(7.3)
15歳~64歳 90(30.0)
65歳以上 13(4.3)
対象疾患の
発症時の年齢
0歳~3歳 210(70.0)
4歳~5歳 5(1.7)
6歳~7歳 4(1.3)
8歳~9歳 3(1.0)
10歳~14歳 10(3.3)
15歳以上 27(9.0)
不明・未記載 41(13.7)
罹病期間
 Mean ± S.D.:7.3 ± 11.5
1年未満 64(21.3)
1年以上2年未満 41(13.7)
2年以上5年未満 53(17.7)
5年以上10年未満 40(13.3)
10年以上 61(20.3)
不明・未記載 41(13.7)
対象疾患
(複数選択可)
単純性血管腫 82(27.3)
苺状血管腫 36(12.0)
毛細血管拡張症 18(6.0)
太田母斑 26(8.7)
扁平母斑 57(19.0)
異所性蒙古斑 39(13.0)
外傷性色素沈着症 7(2.3)
その他 37(12.3)
対象疾患の面積
 Mean ± S.D.:52.7 ± 190.3
15 cm2以下 180(60.0)
15 cm2を超え30 cm2以下 49(16.3)
30 cm2を超え45 cm2以下 9(3.0)
45 cm2を超え60 cm2以下 13(4.3)
60 cm2を超え75 cm2以下 6(2.0)
75 cm2を超え90 cm2以下 7(2.3)
90 cm2を超える面積 36(12.0)
本剤貼付時間
 Mean ± S.D.:60.4 ± 22.1
45分未満(約30分) 50(16.7)
45分以上75分未満(約1時間) 200(66.7)
75分以上105分未満(約1時間半) 41(13.7)
105分以上135分未満(約2時間) 7(2.3)
135分以上165分未満(約2時間半) 0(0.0)
165分以上195分未満(約3時間) 0(0.0)
195分以上(約3時間以上) 1(0.3)
不明・未記載 1(0.3)
本剤使用枚数※1
 Mean ± S.D.:2.2 ± 2.1
1枚 164(54.7)
2枚 63(21.0)
3枚 16(5.3)
4枚 28(9.3)
5枚 12(4.0)
6枚 12(4.0)
その他※2 5(1.7)
本剤貼付部位
(複数選択可)
顔面 145(48.3)
顔面を除く頭部 1(0.3)
頸部 11(3.7)
体幹部(前面) 26(8.7)
体幹部(後面) 36(12.0)
上肢 53(17.7)
下肢 50(16.7)
皮膚レーザー照射時間
 Mean ± S.D.:5.0 ± 4.9
5分未満 150(50.0)
5分以上15分未満 129(43.0)
15分以上30分未満 16(5.3)
30分以上60分未満 4(1.3)
60分以上 0(0.0)
不明・未記載 1(0.3)
皮膚レーザーの種類
(複数選択可)
炭酸ガスレーザー 3(1.0)
YAGレーザー 4(1.3)
色素レーザー 140(46.7)
ルビーレーザー 98(32.7)
半導体レーザー 0(0.0)
アレキサンドライトレーザー 56(18.7)
その他 0(0.0)

( )内は構成比(%)

※1 使用枚数に小数点を含む値が記載されている場合,切り上げた整数値で集計した.

※2 その他の内訳:7枚,9枚,15枚,16枚,20枚が各1例

〈参考〉 ペンレス®テープ18 mgの「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」における用法・用量 通常,成人には本剤1回6枚まで,小児には下記枚数までを,レーザー照射予定部位に約1時間貼付する.
年齢 1回あたりの最大貼付枚数
3歳以下2枚
4歳~5歳3枚
6歳~7歳4枚
8歳~9歳5枚
10歳以上6枚

性別は,「男」89例(29.7%),「女」211例(70.3%)で,「女」の方が多かった.年齢別では,3歳以下が120例で最も多く,全体の4割を占めていた(平均16.4 ± 20.7歳,範囲0~81歳)(Fig.2).罹病期間は「1年未満」が64例(21.3%)と最も多かった.対象疾患としては,「単純性血管腫」が82例(27.3%),続いて「扁平母斑」57例(19.0%),「異所性蒙古斑」39例(13.0%),「苺状血管腫」36例(12.0%)であった.対象疾患の面積は「15 cm2以下」が180例(60.0%)と最も多かった.

Fig.2 

Patient characteristics (Age).

本剤の貼付時間は「45分以上75分未満(約1時間)」が200例(66.7%)と最も多く,次いで「45分未満(約30分)」の50例(16.7%),「75分以上105分未満(約1時間半)」の41例(13.7%)であった(Fig.3).使用枚数は1枚使用が164例(54.7%),2枚使用が63例(21.0%)であり,1枚もしくは2枚の使用で全体の76%を占めていた.貼付部位については,複数箇所への貼付があった症例については部位ごとに集計しており,「顔面」が145件と最も多く,次いで「上肢」が53件,「下肢」が50件,「体幹部(後面)」が36件,「体幹部(前面)」が26件であった(Fig.4).

Fig.3 

Application time of Penles® Tape 18 mg.

Fig.4 

Application number of Penles® Tape 18 mg by application site.

皮膚レーザー照射時間は「5分未満」が150例(50.0%),「5分以上15分未満」が129例(43.0%)で全体の90%以上を占めていた(Fig.5).皮膚レーザーの種類では「色素レーザー」が140例(46.7%)と最も多く使用されており,次いで「ルビーレーザー」が98例(32.7%)で使用されていた.

Fig.5 

Skin laser irradiation time.

4.3  安全性

副作用発現症例をTable 2に示した.安全性解析対象症例280例において,4例5件の副作用が発現し,副作用発現率は1.43%であった.その内訳は,適用部位紅斑4件と適用部位疼痛1件であり,全て非重篤な事象であった.また,安全性に影響を与える要因の検討を行ったところ,「対象疾患の発症時の年齢」で有意差(p < 0.01)が認められた(Table 3).

Table 2  List of adverse drug reactions incidence cases
番号 年齢 性別 事象名
(医師記載語)
MedDRA
(基本語)
使用枚数 貼付部位 発現日 重篤度 転帰 本剤以外の
要因の有無
処置 皮膚異常
1 0 紅斑 適用部位紅斑 1 体幹部(前面) 貼付日 重篤でない 不明
2 9 紅斑 適用部位紅斑 1 顔面 貼付日 重篤でない 不明
3 25 発赤 適用部位紅斑 1 顔面 貼付日 重篤でない 回復
4 31 発赤 適用部位紅斑 2 上肢 貼付日 重篤でない 回復
疼痛 適用部位疼痛 2 上肢 貼付日 重篤でない 回復

MedDRA/J Ver 20.0

Table 3  Adverse drug reactions incidence rate by category
要因 副作用発現率(%) 検定結果
合計 1.43(4/280)
年齢
 Mean ± S.D.:15.6 ± 20.2
3歳以下 0.85(1/117) Cochran-Armitage検定
p = 0.390 n.s.
4歳~5歳 0.00(0/21)
6歳~7歳 0.00(0/21)
8歳~9歳 9.09(1/11)
10歳~14歳 0.00(0/18)
15歳~64歳 2.44(2/82)
65歳以上 0.00(0/10)
対象疾患の
発症時の年齢
0歳~3歳 0.50(1/200) Cochran-Armitage検定
p = 0.005**
4歳~5歳 0.00(0/5)
6歳~7歳 0.00(0/3)
8歳~9歳 33.33(1/3)
10歳~14歳 12.50(1/8)
15歳以上 4.17(1/24)
不明・未記載 0.00(0/37)
貼付時間
 Mean ± S.D.:61.2 ± 21.6
45分未満(約30分) 2.33(1/43) Cochran-Armitage検定
p = 0.374 n.s.
45分以上75分未満(約1時間) 1.60(3/188)
75分以上105分未満(約1時間半) 0.00(0/41)
105分以上135分未満(約2時間) 0.00(0/6)
135分以上165分未満(約2時間半) 0.00(0/0)
165分以上195分未満(約3時間) 0.00(0/0)
195分以上(約3時間以上) 0.00(0/1)
不明・未記載 0.00(0/1)
使用枚数※1
 Mean ± S.D.:2.2 ± 2.2
1枚 2.03(3/148) Cochran-Armitage検定
p = 0.271 n.s.
2枚 1.67(1/60)
3枚 0.00(0/16)
4枚 0.00(0/28)
5枚 0.00(0/11)
6枚 0.00(0/12)
その他※2 0.00(0/5)
本剤貼付部位
(複数選択可)
顔面 1.54(2/130)
顔面を除く頭部 0.00(0/1)
頸部 0.00(0/11)
体幹部(前面) 3.85(1/26)
体幹部(後面) 0.00(0/33)
上肢 1.92(1/52)
下肢 0.00(0/47)

※1 使用枚数に小数点を含む値が記載されている場合,切り上げた整数値で集計した.

※2 その他の内訳:7枚,9枚,15枚,16枚,20枚が各1例

検定結果…n.s.:有意差なし,**:p < 0.01

〈参考〉ペンレス®テープ18 mgの「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」における用法・用量 通常,成人には本剤1回6枚まで,小児には下記枚数までを,レーザー照射予定部位に約1時間貼付する.
年齢 1回あたりの最大貼付枚数
3歳以下2枚
4歳~5歳3枚
6歳~7歳4枚
8歳~9歳5枚
10歳以上6枚

4.4  有効性

「医師評価(皮膚レーザー照射時の痛みの程度)」により有効性を確認した.「皮膚レーザー照射に対する身体的反応がない」及び「皮膚レーザー照射に対する身体的反応がわずかにある」を有効例としたところ,解析対象症例299例での有効率は80.6%(241例/299例)であった(Table 4).

Table 4  Effectiveness evaluated by physicians (Pain level at the time of laser irradiation to the skin)
調査症例数 医師評価(皮膚レーザー照射時の痛みの程度) 有効率※1
皮膚レーザー照射に対する
身体的反応がない
皮膚レーザー照射に対する
身体的反応がわずかにある
皮膚レーザー照射に対する
身体的反応がある
判定不能
299 93(31.1%) 148(49.5%) 53(17.7%) 5(1.7%) 80.6%
(241/299)※2

※1 有効:「皮膚レーザー照射に対する身体的反応がない」または「皮膚レーザー照射に対する身体的反応がわずかにある」

※2 ( )内は「有効症例数/解析対象症例数」

小児における有効率は,「3歳以下」で72.5%,「4歳~5歳」で81.0%,「6歳~7歳」で81.8%,「8歳~9歳」で75.0%,「10歳~14歳」で86.4%であり,成人(15歳~64歳)では87.6%,高齢者(65歳以上)では100.0%であった(Table 5).また,有効性に影響を及ぼす要因の検討を行ったところ,「年齢」,「身長」,「体重」,「対象疾患の発症時の年齢」,「罹病期間」,「対象疾患の面積」,「Qスイッチ有無」及び「併用療法」で有意差が認められた(p < 0.05またはp < 0.01).

Table 5  Effectiveness by category evaluated by physicians (Pain level at the time of laser irradiation to the skin)
要因 調査
症例数
医師評価(皮膚レーザー照射時の痛みの程度) 有効率(%) 検定結果
皮膚レーザー照射に対する身体的反応がない 皮膚レーザー照射に対する身体的反応がわずかにある 皮膚レーザー照射に対する身体的反応がある 判定不能
年齢 3歳以下 120 29 58 28 5 72.5 Cochran-Armitage検定
p = 0.001**
4歳~5歳 21 3 14 4 0 81.0
6歳~7歳 22 6 12 4 0 81.8
8歳~9歳 12 2 7 3 0 75.0
10歳~14歳 22 7 12 3 0 86.4
15歳~64歳 89 38 40 11 0 87.6
65歳以上 13 8 5 0 0 100.0
身長 100 cm未満 43 9 18 14 2 62.8 Cochran-Armitage検定
p = 0.007**
100 cm以上120 cm未満 9 2 6 1 0 88.9
120 cm以上140 cm未満 9 2 5 2 0 77.8
140 cm以上160 cm未満 18 7 8 3 0 83.3
160 cm以上180 cm未満 18 13 4 1 0 94.4
180 cm以上 0 0 0 0 0 0.0
不明・未記載 202 60 107 32 3 82.7
体重 40 kg未満 82 15 43 19 5 70.7 Cochran-Armitage検定
p = 0.016*
40 kg以上50 kg未満 10 5 3 2 0 80.0
50 kg以上60 kg未満 11 8 2 1 0 90.9
60 kg以上70 kg未満 8 4 4 0 0 100.0
70 kg以上 2 2 0 0 0 100.0
不明・未記載 186 59 96 31 0 83.3
対象疾患の
発症時の年齢
0歳~3歳 210 58 104 43 5 77.1 Cochran-Armitage検定
p = 0.041*
4歳~5歳 5 1 3 1 0 80.0
6歳~7歳 4 0 2 2 0 50.0
8歳~9歳 3 0 2 1 0 66.7
10歳~14歳 10 3 7 0 0 100.0
15歳以上 26 11 13 2 0 92.3
不明・未記載 41 20 17 4 0 90.2
罹病期間 1年未満 64 13 31 16 4 68.8 Cochran-Armitage検定
p = 0.036*
1年以上2年未満 41 10 25 5 1 85.4
2年以上5年未満 52 15 24 13 0 75.0
5年以上10年未満 40 9 25 6 0 85.0
10年以上 61 26 26 9 0 85.2
不明・未記載 41 20 17 4 0 90.2
対象疾患
(複数選択可)
単純性血管腫 82 24 44 12 2 82.9
苺状血管腫 36 8 13 14 1 58.3
毛細血管拡張症 17 7 8 2 0 88.2
太田母斑 26 4 17 5 0 80.8
扁平母斑 57 22 26 8 1 84.2
異所性蒙古斑 39 10 19 9 1 74.4
外傷性色素沈着症 7 2 4 1 0 85.7
その他 37 18 17 2 0 94.6
対象疾患の面積 15 cm2以下 180 51 90 36 3 78.3 Cochran-Armitage検定
p = 0.017*
15 cm2を超え30 cm2以下 48 13 24 11 0 77.1
30 cm2を超え45 cm2以下 9 1 5 2 1 66.7
45 cm2を超え60 cm2以下 13 6 5 1 1 84.6
60 cm2を超え75 cm2以下 6 4 2 0 0 100.0
75 cm2を超え90 cm2以下 7 3 3 1 0 85.7
90 cm2を超える面積 36 15 19 2 0 94.4
Qスイッチ有無 104 26 48 27 3 71.2 Fisher直接確率法
p = 0.003**
195 67 100 26 2 85.6
併用療法 297 93 148 51 5 81.1 Fisher直接確率法
p = 0.037*
2 0 0 2 0 0
本剤貼付部位
(複数選択可)
顔面 144 46 76 19 3 84.7
顔面を除く頭部 1 0 0 1 0 0.0
頸部 11 4 6 1 0 90.9
体幹部(前面) 26 10 10 5 1 76.9
体幹部(後面) 36 9 21 6 0 83.3
上肢 53 14 26 12 1 75.5
下肢 50 18 22 9 1 80.0
皮膚レーザー照射時間 5分未満 150 45 74 29 2 79.3 Cochran-Armitage検定
p = 0.428 n.s.
5分以上15分未満 129 39 66 21 3 81.4
15分以上30分未満 16 6 7 3 0 81.3
30分以上60分未満 4 3 1 0 0 100.0
60分以上 0 0 0 0 0 0.0
皮膚レーザーの種類
(複数選択可)
炭酸ガスレーザー 3 0 3 0 0 100.0
YAGレーザー 4 2 2 0 0 100.0
色素レーザー 139 40 65 31 3 75.5
ルビーレーザー 98 25 55 16 2 81.6
半導体レーザー 0 0 0 0 0 0.0
アレキサンドライトレーザー 56 27 23 6 0 89.3
その他 0 0 0 0 0 0.0

検定結果…n.s.:有意差なし,*:p < 0.05,**:p < 0.01

「患者評価(VRS)」については,「判定不能」の症例(98例)を除いた201例において,「痛くないまたは皮膚レーザー照射の感覚はあるが痛くない」または「少し痛い」と評価された症例を有効例とした有効率を確認したところ,80.6%(162例/201例)であり,「医師評価」と同じ有効率を示した(Table 6).

Table 6  Effectiveness evaluated by patients (VRS)
調査症例数※1 患者評価(VRS) 有効率※2
痛くないまたは
皮膚レーザー照射の感覚はあるが痛くない
少し痛い 痛い すごく痛い 判定不能
201 42(20.9%) 120(59.7%) 35(17.4%) 4(2.0%) 98 80.6%
(162/201)※3

※1 「判定不能」を除いた症例数にて示した.

※2 有効:「痛くないまたは皮膚レーザー照射の感覚はあるが痛くない」または「少し痛い」

有効率は「判定不能」の症例を除いて算出した.

※3 ( )内は「有効症例数/解析対象症例数」

4.5  有用性

医師有用性評価をTable 7に示した.解析対象症例279例中「高い(極めて有用)」は30.1%(84例/279例),「まあまあ高い(有用)」は48.0%(134例/279例)であり,「まあまあ高い(有用)」以上を有用例とした有用率は78.1%(218例/279例)であった.

Table 7  Usefulness evaluated by physicians
調査症例数 医師有用性評価(本剤の有用性) 有用率※1
高い
(極めて有用)
まあまあ高い
(有用)
普通
(やや有用)
低い
(どちらともいえない)
不要
(好ましくない)
279 84(30.1%) 134(48.0%) 50(17.9%) 11(3.9%) 0(0.0%) 78.1%
(218/279)※2

※1 有用:「高い(極めて有用)」または「まあまあ高い(有用)」

※2 ( )内は「有用症例数/解析対象症例数」

5.  考察

1960年にアメリカのMaiman THがルビーの結晶からレーザーを発振させることに成功し,その後Goldman Lを中心にレーザーと生体反応の研究がすすめられてきた1).1970年代以降,臨床現場に積極的にレーザー機器が導入されるようになり,2000年頃までは様々な波長や発振形式の異なる各種レーザー機器の開発が進みレーザー治療が多様化し,形成外科,皮膚科,眼科など色々な診療領域でレーザーが利用されるようになってきた.レーザー治療では疼痛を伴うため麻酔が必要であり,臨床現場では表面麻酔に使用できる皮膚浸透性及び簡便性に優れたテープ剤の開発が待ち望まれていた.そこで,日東電工株式会社はマルホ株式会社の協力のもと,本剤の適応追加に着手し,2013年6月に「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」の追加承認を取得した.

また,開発時の臨床試験の対象が1歳以上の症例であるとともに,小児の例数も限られていたことから再審査期間中には小児200例を含めた300例を目標症例数とした使用成績調査を実施し,その結果により本剤の安全性及び有効性を確認した.

本調査結果は本剤の使用に関わる情報を提供するとともに,国内の日常診療下におけるレーザー治療の実態も示すことができると考えたため,本稿に掲載し,診療現場の先生方に広く情報を提供することとした.

患者背景では,性別においては女性が70.3%を占めていた.これは,レーザー治療の対象となる疾患が血管腫や母斑など視認できるものが多いことから,本人や家族の心理的負担の大きさの影響があらわれたものと考えられる.

本調査では小児症例を重点的に収集したこともあり,「3歳以下」の症例が120例収集された.「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」の対象となる疾患には単純性血管腫,苺状血管腫(乳児血管腫)等の幼い年齢層で発症するものが含まれ2,3),これらは外見に影響を与える疾患でもあることから,その家族が早期の治療を希望する場合もある4).また,これらの疾患は治療開始が早ければ早いほど治療回数が少なく治療期間も短くてすむこと,できるだけ早期で面積が小さいうちに治療することが重要であること,及び幼少期に治療を開始したほうが治療効果が良いことも報告されており4-9),これらの要因から3歳以下の症例が本調査で多く収集されたと考えられた.また,罹病期間について「1年未満」が多く存在したのも,先述のとおり早期の治療がなされていることを示した結果であると考えられる.

対象疾患の面積は,本剤のサイズよりも狭い「15 cm2以下」が多かった.これは患部が狭い疾患であれば,貼ることのみで対応できる簡便な本剤が使用しやすいことが一因であったと考える.

本剤の貼付時間は「45分以上75分未満(約1時間)」が200例(66.7%)と最も多く,次いで「45分未満(約30分)」の50例(16.7%)であり,ほとんどの症例で「用法・用量」に従った時間(約1時間貼付)で使用されていることが確認できた.本調査では80%以上の高い有効性が確認されていることから,承認されている「用法・用量」である約1時間の貼付により,レーザー治療中の本剤の麻酔効果が持続していると考えられる.

本剤の使用枚数は1枚使用と2枚使用で全体の76%を占めており,先述したとおり患部が狭い疾患が対象となっていたことに加え,手軽に使用できる範囲での使用や使い分けの現状を反映していると推察された.また,本剤の貼付部位は「顔面」が最も多かったが,「顔面」には目元や口元が含まれることから,貼付範囲を調整しやすい本剤が使用された結果と考えられた10)

皮膚レーザー照射時間は「5分未満」,「5分以上15分未満」で全体の90%以上を占めており,15分以上の皮膚レーザー照射による治療は少ないことが確認された.皮膚レーザーの種類については「色素レーザー」と「ルビーレーザー」が多く使用されており,対象疾患により使い分けされていると考えられる11-13)

今回の調査で認められた副作用は4例5件であり,貼付部位での紅斑,疼痛のみで,局所的かつ非重篤な事象であった.本剤の麻酔作用に起因すると考えられる副作用は認められなかった.副作用が発現した本剤の貼付部位は「顔面」(2例),「体幹部(前面)」(1例),「上肢」(1例)であり,特定の貼付部位に副作用が発現する傾向はみられなかった.また,安全性に影響を及ぼす要因の検討では,「対象疾患の発症時の年齢」で副作用発現率に有意差が認められたが,年齢,貼付時間,使用枚数等では差が認められなかった.副作用が4例5件であり,全て非重篤な事象であったことから,安全性について,臨床上特に問題となる要因はないと考えられた.なお,本剤の「伝染性軟属腫摘除時の疼痛緩和」における小児特定使用成績調査では,安全性解析対象症例500例において6例(1.20%)に副作用が認められたが,その内訳は適用部位紅斑4例4件,接触皮膚炎2例2件であり,本調査と同様にその全てが非重篤な事象であった14)

有効率(医師評価)は80.6%(241例/299例)であり,十分と考えられる結果が得られた.本剤貼付部位別の有効率は,「顔面」84.7%,「顔面を除く頭部」0%,「頸部」90.9%,「体幹部(前面)」76.9%,「体幹部(後面)」83.3%,「上肢」75.5%,「下肢」80.0%であり,「体幹部(前面)」と「上肢」で若干低い値を示していたが,いずれも約75%の有効率であり,他の部位と比べて特に低くはなかった.小児における有効率は全症例に比べてやや低くなる傾向がみられたものの大きな差はみられなかった.これは,本調査においては乳幼児が多く含まれており,乳幼児については有効性の医師判定が難しいことが1つの原因と考えられた.有効性に影響を及ぼす要因を検討したところ,「年齢」,「身長」,「体重」,「対象疾患の発症時の年齢」,「罹病期間」,「対象疾患の面積」,「Qスイッチ有無」,「併用療法」で有効率に有意差が認められたが,その多くの要因は先述した乳幼児での有効性が低かったことと関連しており,臨床上特に有効性に影響を及ぼすと考えられる要因は見出されなかった.

「皮膚レーザー照射時間」別の有効率を確認したところ,「5分未満」が79.3%(119例/150例),「5分以上15分未満」が81.4%(105例/129例)であり,15分未満の処置が279例と大半を占めていた.皮膚レーザー照射時間の長いものでも30分であり,レーザー治療の実態として皮膚レーザーの照射時間は短く,そのためレーザー照射中に本剤の効果が消失する可能性は低いと考えられた.

また,「患者評価(VRS)」による有効率も80.6%であり,患者の満足度も高いと考えられた.「医師評価」「患者評価(VRS)」ともに高い有効率を示したことから本剤の「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」の効能・効果における有効性が示されたと考えられる.

医師有用性評価を用いて有効性・安全性の総合評価を行ったところ,「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」に対する本剤の有用率は78.1%(218例/279例)であり,有用性が高いことも確認された.

以上の結果より,日常診療下における安全性及び有効性が確認できたことから,本剤が「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」において有用な製剤であることが示された.

なお,本剤は簡便に使用できる外用の麻酔剤であり,幅広い年齢層で使用されるため,使用にあたっては「用法・用量」を遵守のうえ,適正にご使用いただきたい.特に小児で使用する場合,本剤の貼付枚数は,体重,患部の大きさを考慮して,必要最小限にとどめるようご留意いただくことが重要であると考える.

6.  結論

今回,「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」に対して使用成績調査を実施し,日常診療下において本剤の安全性・有効性に問題がないことが示された.

乳幼児も含めて小児症例を重点的に収集したため,小児における本剤の安全性・有効性を確認できるとともに小児でのレーザー治療の実態も明らかにすることができた.また,疼痛を伴うレーザー治療において,本剤が乳幼児を含めた患者の負担を軽減できることが示されたことにより,乳幼児期に発症する単純性血管腫や苺状血管腫(乳児血管腫)等に対し,レーザー治療を治療の選択肢として考慮し易くなったと考えられる.

謝辞

本調査にご協力いただき,貴重なデータをご提供いただきました調査担当医師の先生方に厚く御礼申し上げます.

利益相反

本研究の内容はペンレス®テープ18 mgの製造販売会社である日東電工株式会社と販売会社であるマルホ株式会社の依頼のもとで実施された使用成績調査の成績に関するものである.各実施医療機関と個々にマルホ株式会社が契約を締結し,その契約に基づいた使用成績調査費用は日東電工株式会社が負担している.

引用文献
 
© 2020 Japan Society for Laser Surgery and Medicine
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