The Journal of Japan Society for Laser Surgery and Medicine
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REVIEW ARTICLE
The Past and Present of Photodynamic Therapy in Ophthalmology
Shigeru Honda
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2021 Volume 42 Issue 2 Pages 78-88

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Abstract

眼科における光線力学的療法(photodynamic therapy: PDT)は滲出型加齢黄斑変性に対する治療法として導入された.PDTは正常組織への影響を抑えながら病変部位にのみに作用するとされ,しばらくは同疾患の第一選択治療となっていたが,後に登場した抗VEGF療法に視力改善効果で及ばなかったため,その後はほとんど行われなくなった.ただ,特定の病型にはPDTの高い治療効果が認められた事から,今は同治療が見直されている.本項では眼科におけるPDTの過去と現在について概説する.

Translated Abstract

Photodynamic therapy (PDT) in ophthalmology is a therapeutic modality for exudative age-related macular degeneration (AMD). PDT was expected to treat exudative lesion with minimum effect on normal tissue and became the first-choice intervention for AMD for years. However, when the visual outcome of PDT was reported to be inferior than that of the latest anti-VEGF therapy, PDT was no longer performed thereafter except of some specific phenotype of AMD which is still a good candidate of PDT by now. This review article summarizes the past and present of PDT in ophthalmology.

1.  はじめに

眼科における光線力学的療法(photodynamic therapy: PDT)は滲出型加齢黄斑変性(exudative age-related macular degeneration(AMD),以下単にAMDとする)に対する治療法として2000年代初めに世界的な臨床導入がなされました.それ以前のAMDに対する治療は脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization: CNV)を熱レーザーで正常網膜組織もろ共凝固するか,外科的にCNV抜去あるいは周辺網膜全周切開を行って網膜を回転させて黄斑をCNVから遠ざけるといった事が行われていました.しかしながら,それらは重大な合併症と隣り合わせの治療であったため,広く普及する事はありませんでした.PDTは正常組織への影響を抑えながらCNVのみに作用するという理論が注目され,導入からしばらくはAMDの第一選択治療となっていましたが,後に登場する抗VEGF療法が視力改善効果で優ったことから,PDTを使用する機会は次第に減って行きました.その一方で,AMDの一病型とされ,わが国を含むアジア人に多いポリープ状脈絡膜血管症(polypoidal choroidal vasculopathy: PCV)に対する病巣縮小効果や,最近になって新たな疾患概念として話題になっているpachychoroid spectrum disease(PSD…厚い脈絡膜に関連する眼底後極部疾患群)に対する治療効果などに着目したPDTの再活用を模索する流れもあります.本項では眼科におけるPDTの原理と歴史,および現在のPDT適応と使用法について概説します.

2.  眼科におけるPDTの導入とその後の変遷

2.1  AMD治療におけるPDTの導入

AMDに対するPDTでは光感受性物質ベルテポルフィン(ビスダイン®)を15分かけて静脈注射すると,まずベルテポルフィンは血中のlow-density lipoprotein(LDL)と結合します.CNVの血管内皮細胞にはLDL受容体が豊富には存在するため,これを介してベルテポルフィンはCNV内皮に取り込まれます.ベルテポルフィンを充分に取り込ませた後に非発熱レーザーを病変部位に90秒間照射する事でベルテポルフィンを活性化します.活性化したベルテポルフィンは一重項酸素を放出し,それが血管内皮細胞を障害する事で血栓形成を促してCNVを閉塞するとされています(Fig.1).初回治療後は経過観察を行い,必要あれば3か月以上の間隔をあけて再治療も可能とされています.眼科におけるPDTが最初に使用されたTreatment of Age-related Macular Degeneration with Photodynamic therapy(TAP)試験1)では,欧米に多く見られる網目状のCNVを呈する典型AMD 609例に対してPDT群402例とプラセボ群207例を比較検討したランダム化二重盲検前向き試験が行われ,1年後における中等度以上の視力低下(ETDRSチャート視力検査で15文字以上)(Table 1参照)はPDT群では39%とプラセボ群(54%)より有意に少なく,5文字以上の改善はPDT群で16%,プラセボ群で7%でした.平均視力はPDT群で10.8文字の低下に比べてプラセボ群では17.6文字の低下で,PDTの有意な視力維持効果がみられました(Fig.2).また,PDT群ではプラセボ群に比べて2倍以上(19%対9%)のCNV完全閉塞率が得られました.2年後においても中等度以上の視力低下はPDT群で47%とプラセボ群の62%より少なく,また平均視力はPDT群で13.4文字の低下に比べてプラセボ群では19.6文字の低下でした.TAP試験では最初の1年間に平均3.4回,2年間トータルで平均5.6回の治療が行われています.また,TAP試験では2年経過後に非遮蔽の延長試験を行っており,最初のPDT群402例中320例が組み入れられ,その内193例(60%)が更に3年間(計5年間)の治療,経過観察を受けています.これらの患者はTAP本試験中の2年間で平均7.5文字の視力低下を認めましたが,延長試験の最後(5年後)でも平均8.0文字の低下(さらに0.5文字の低下)に留まりました.延長試験では脱落例が多く出る事もしばしばで結果に影響する可能性もありますが,PDTには病変抑制効果があると解釈されました.

Fig.1 

The mechanism how PDT works. PDT reacts through a production of reactive oxygen species following by an endothelial damage and thrombus formation at choroidal neovascularization.

Table 1  A conversion table between Early Treatment Diabetic Retinopathy Study (ETDRS) chart and decimal visual acuity. ETDRS chart is a method to measure visual acuity which counts the number of letters readable.
ETDRS 100 85 80 74 70 65 58 54 50 45 39 35 30 24 20 15 0
Decimal VA 2.0 1.0 0.8 0.6 0.5 0.4 0.3 0.24 0.2 0.16 0.12 0.1 0.08 0.06 0.05 0.04 0.02
Fig.2 

Treatment of AMD with Photodynamic therapy (TAP) study. PDT significantly reduced the amplitude of vision loss compared to placebo. Bressler NM, et al., Arch Ophthalmol. 2001.

TAP試験と同時期に行われたVerteporfin in Photodynamic Therapy(VIP)試験2)もAMD 339例に対してPDT群225例とプラセボ群114例を比較検討したランダム化二重盲検前向き試験であり,2年後に中等度以上の視力低下をきたした割合はPDT群で54%とプラセボ群67%より有意に少なく,高度な視力低下の割合もPDT群では30%でプラセボ群の47%より有意に少なかったと報告しています.中でも病巣サイズが4乳頭面積以下あるいは視力スコアが65文字(小数視力で0.4相当)以下の場合,2年後中等度,高度の視力低下の割合はいずれもPDT群の方がプラセボ群より有意に少ない結果でした.また2年間の治療の平均回数は5回とTAP試験とほぼ同等でした.後にTAP試験とVIPを併せて行われた多変量解析では小さな病巣サイズが有意に良い視力予後と関連することが示されています.

上記試験を踏まえて日本で行われた最初のPDT臨床試験であるJapanese Age-Related Macular Degeneration Trial(JAT)試験3)はAMD 64例の1年間の非遮蔽臨床試験でしたが,主要評価項目の視力ではベースラインの平均50.8文字から12ヵ月後には53.8文字となり,視力の維持あるいは若干の改善がみられました(Fig.3).また,平均病巣サイズはベースラインの3,229 μmから12ヶ月後に1,260 μmまで縮小しました.本試験にはプラセボ群の設定はないものの,組み入れ患者における試験開始までの視力経過が示されており,症例数のばらつきはあるものの,試験開始9~15ヶ月前の平均視力74.9文字が試験開始直前には51.3文字まで低下していることが示されているため,PDTによる平均視力の改善傾向が示された事は平均視力の低下幅減少に留まったTAP,VIP試験と異なる本試験の最大の特徴であり,日本人のAMDが欧米のそれと異なる可能性を示唆するものでした.その理由は,後に行われたJAT試験のサブ解析において,日本人AMDの中に多く含まれるPCVがPDTに大変よく反応した事が関連している事が判明しました4).同時期にPCVに対するPDTの良好な治療効果が多くの施設から報告されました.

Fig.3 

Japanese AMD Trial (JAT) study. (A) PDT tended to improve the mean and median vision of Japanese AMD patients. (JAT Study Group. Am J Ophthalmol. 2003). (B) The patients with PCV showed significantly better visual outcomes than those without PCV. (Tano Y, et al., Ophthalmology. 2008).

2.2  抗VEGF療法の登場とPDTの衰退

2000年代に入るとAMDに対する抗VEGF療法が使用されるようになり,わが国では2008年に抗VEGFアプタマーのpegaptanib(マクジェン®),2009年に抗VEGF中和抗体Fabフラグメントのranibizumab(ルセンティス®),2012年にはVEGF受容体-1,2およびFcキメラ蛋白のaflibercept(アイリーア®)と三つの抗VEGF薬が認可されました.(後にpegaptanibは市場から撤退)AMDに対する抗VEG療法の臨床試験のうち,ranibizumabについて行われたMARINA試験5)やANCHOR試験6)では典型AMDに対して抗VEGF療法による有意な視力改善が示され,特に後者では対照となるPDTに比べて明らかに良い治療後経過が証明された事で(Fig.4),欧米ではAMDに対するPDTは全くと言ってよいほど行われなくなりました.一方,アジア人にはAMDの類似疾患でありポリープ状の異常血管を特徴とするPCVが多く存在しますが,アジアを中心に行われた数々の研究においてPDTにはPCVのポリープ状病巣を顕著に退縮させる効果がみられ,それに伴って滲出性変化が著明に改善する事が認められました7-12).そのためPDTはPCVに対する有効な治療法としてアジアの国々においては生き延びる事が出来ました.ただ,PCVのみを対象としてわが国で行ったLAPTOP試験13)でもPDTを単独で施行した場合の視力経過は同時に比較したranibizumabより劣る事が明らかとなりました.これはPDTを単独で行った場合,脈絡膜毛細管板および網膜色素上皮細胞の萎縮(Fig.5)や術後早期の多量網膜下出血などの合併症による著明な視力低下が一定の確率(LAPTOP試験では12か月で約15%)で生じる事が関連していた事から今ではPDTを単独で行う事は一般的でありません(ベルテポルフィンやレーザー照射量を半分にするreduced PDTは除く).これらの合併症はPDT施行後早期に起こる著明な炎症反応や血管内皮増殖因子(VEGF)の増加によるものと考えられるため,PDTに抗VEGF薬を併用したところ合併症の大幅な減少がみられました.現在ではPDTを使用する際は抗VEGF療法との併用が基本とされています.

Fig.4 

ANCHOR study. Ranibizumab improved the mean visual acuity of AMD patients over 12 months of follow-up, which was significantly better than PDT. Brown et al., N Engl J Med. 2006.

Fig.5 

A case of PCV which underwent PDT monotherapy. (A) Angiographic images. IA visualizes polypoidal lesions. (B) OCT image at the same day of (A). Some exudative changes are found. (C) Angiographic images 5 years after a single session of PDT. Polypoidal lesions disappear, but branching vascular network remains. The atrophy of choriocapillaris is found. (D) OCT image at the same day of (C). Most of exudative change are resolved.

3.  ポリープ状脈絡膜血管症に対する抗VEGF + PDT併用療法の適用

抗VEGF療法が登場した頃から抗VEGF + PDT併用療法に関するいくつかの臨床試験が行われました.特に典型AMDに対しては北米で行われたDENALI試験14),同時期に欧州で行われたMONT BLANC試験15)という二つのランダム化二重盲検前向き試験において,ranibizumab単独群(DENALI試験は毎月投与,MONT BLANC試験は導入療法後,必要時投与)とranibizumab + PDT併用群(いずれの試験も導入療法後,必要時施行)を比較したものである(DENARI試験ではさらに標準的PDTと光量半分PDTの比較も実施).12ヵ月後の平均視力変化はいずれの試験においてもranibizumab単独群,ranibizumab + PDT併用群ともに改善が見られ,両群間に有意差はなかったものの,ranibizumab単独群の方が視力の改善幅が大きい傾向にありました.そのため,PCVが少なく典型AMDが大半を占める欧米では本試験以降,併用療法を含めてPDTは一切行われなくなりました.一方,上記試験と同時期にアジアで実施されたEVEREST 試験16)では61例のPCVに対するranibizumab単独群,PDT単独群,ranibizumab + PDT併用群のランダム化二重盲検前向き比較試験を行い,主要評価項目は6ヶ月後のポリープ状病巣消退率で,ranibizumab単独群における28.6%に対し,PDT単独群では71.4%,ranibizumab + PDT併用群では77.8%と,いずれも有意に良好な消退率が得られました.平均視力の変化量は3群間に差は見られなかったものの,PCVに対する併用療法の顕著な効果に注目が集まりました.

現在,PCVに対して抗VEGF + PDT併用療法を適用する場合の考え方には二つのものがあります.一つはPCVに対するPDTの強力なポリープ病巣退縮効果を期待して最初から(あるいは比較的早期に)併用療法を行うというもので,EVEREST II試験17)においてPCV患者に対するranibizumabとPDTの併用群がranibizumab単独群と比較してより優れた視力改善,ポリープ病巣の完全退縮率,少ない注射回数,安全面での非劣性が報告された事が根拠になっています.同試験ではPCV患者に対するranibizumabとPDTの併用群はranibizumab単独群と比較して治療開始12か月時点の最高矯正視力の有意な改善(ranibizumab単独群でETDRSチャート平均5.1文字改善,ranibizumabとPDT併用群で平均8.3文字改善,p = 0.013),有意なポリープ病巣の完全退縮率(ranibizumab単独群で33.8%,ranibizumabとPDT併用群で69.7%,p < 0.001)(Fig.6),より少ない注射回数(初期導入療法後の追加注射;ranibizumab単独群で平均4.3回,ranibizumabとPDT併用群で平均2.2回)を報告しています.一方で安全性の面で両群間に差はなかったとされています.EVEREST II試験ではあらゆる評価項目で併用療法の優位性が示されたことからPDTが再び注目されるきっかけになりました.その後,EVEREST II試験の24ヵ月結果においてもranibizumab単独群に対するranibizumabとPDT併用群の優位性は保たれることが報告されています18)

Fig.6 

EVEREST II study. The combination of ranibizumab and PDT showed significantly better visual outcome than ranibizumab monotherapy. (A) Chronological change of the mean BCVA. (B) The mean BCVA change at 12 months after the first treatment. Koh et al., JAMA Ophthalmol. 2017.

もう一つは抗VEGF療法単独で効果が不十分なPCV症例に対してrescue治療としてPDTの併用を行った場合のadd on効果を期待するというもので,ranibizumabよりも中和対象が多く,かつVEGF165への親和性が高いafliberceptを用いたPLANET試験19)においてPCV患者に対するaflibercept単独初期治療で効果不十分であった症例が全体の6%足らずであった事が根拠になっています.同試験においては初期治療効果不良群に対するrescue PDTの視力改善へのadd on効果が見られなかった事から併用療法(つまりPDT)は基本的に必要ないとする解釈も見られますが,実臨床ではaflibercept単独治療でポリープ病巣の退縮あるいは網膜下液の消退が得られなかった症例にPDTを併用すると速やかに所見の改善をみることがしばしば経験され(Fig.7),PLANET試験の副次評価でもPDT併用群ではシャムPDT群に比べて中心網膜厚(病巣の厚みと解釈できる)の明らかな減少がみられた(Fig.8)事から少なくとも抗VEGF療法の初期治療で反応が思わしくないPCVに対しては併用療法を試みても良いと考えられます.現在のわが国においてAMDに対して最も使用されている抗VEGF薬はafliberceptであることから,PCVに対しても最初はaflibercept単独治療を行う事が一般的ですが,効果不十分例や再発例などに対するPDTの併用療法は今でも重要な治療選択肢の一つとなっています.

Fig.7 

A case of PCV (83y, male). Three monthly injection of aflibercept was chosen as the initial treatment. After 3 monthly injection of aflibercept, subretinal fluid remained unchanged (or increased). Then, a combination of aflibercept and PDT was performed which resolved polypoidal lesion and subretinal fluid within a month.

Fig.8 

Sub-class analyses of PLANET study. (A) Change of the mean BCVA. (B) The combination of aflibercept and PDT remarkably reduced the mean central retinal thickness while aflibercept monotherapy did not. Lee et al., JAMA Ophthalmol. 2018.

4.  現在の抗VEGF + PDT併用療法の適用条件

一般にPDT後にはポリープ病巣の退縮に加えて脈絡膜厚の減少が高率にみられますが,抗VEGF療法との併用においても同様の変化を認めます.一方,併用療法における脈絡膜毛細管板の萎縮はPDT単独に比べると低頻度あるいは軽度であるとの報告が多くなされています(Fig.920).また,PDT単独治療の際にみられた多量網膜下出血などの早期合併症は抗VEGF + PDT併用療法では稀であり,抗VEGF療法単独の場合とほぼ変わらないとされています20).PDTの適応基準としては2008年に発表されたわが国におけるPDT単独治療のガイドライン4)を参考に最大病巣径5,400 μm以下,治療前小数視力0.5以下とされていましたが,最近では抗VEGF + PDT併用療法の安全性が次第に認識されるようになり,視力良好例にも適応が広がりつつあります.筆者の自験例を分析したところ,治療前小数視力0.5以上のPCV症例にPDT単独を行った場合,約半数で術後12カ月での視力低下を認めたが,aflibercept + PDT併用療法では視力低下をきたした症例は見られませんでした(Fig.10).筆者の経験からは小数視力1.0以下であれば適用可能と考えています.また,PDT単独では合併症リスクが高まるとされている大きな漿液性色素上皮剥離を伴うPCV症例にもaflibercept + PDT併用療法は高い安全性を示しました(Fig.11).一方,当時のガイドラインでは検討されていなかった脈絡膜厚に着目したところ,aflibercept + PDT併用療法後12ヶ月で黄斑の萎縮性変化を認めた症例には治療前中心窩下脈絡膜厚が200 μm未満の症例が多くみられた事(未発表データ)から,同パラメータが併用療法の適応を考える上で一つの指標になるかも知れません.実際に治療前の脈絡膜厚がPCVに対する併用療法の視力予後に関連するとの報告もあります21)

Fig.9 

A case of PCV (67y, male). A combination of aflibercept and PDT resolved polypoidal lesions without apparent choriocapillaris atrophy.

Fig.10 

Plots of BCVA between baseline and 12 months after the initial treatment. (A) A half of cases with baseline decimal BCVA more than 0.5 lost their vision after 12 months with PDT monotherapy. (Honda, et al., Ophthalmologica. 2009). (B) Quite few cases lost after the combination of aflibercept and PDT as the initial treatment. (Unpublished data).

Fig.11 

A case of PCV with large pigment epithelial detachment (PED) (72y, male). A combination of aflibercept and PDT was performed which resolved polypoidal lesion and subretinal fluid within a month, then no recurrence occurred over 24 months of follow-up.

5.  PDTを併用するタイミング

先に述べたように,PDTを使用する目的によって併用のタイミングは変わってくると思われますが,PCV症例に対してranibizumabとPDTを最初から併用する群とranibizumab単独で効果の不十分な症例に後からPDTを併用する群を無作為に割り付けた前向き試験(FUJISAN試験)の結果では前者は後者に比べて治療開始後12ヶ月までの総注射回数のみならず,総PDT回数も有意に少ない事が示されました22).これは,本来ならPCV発症早期の治療感受性の高い時期にPDTを併用する方がより治療効果が高い事を示唆しています.

6.  抗VEGF + PDT併用療法の長期予後

現在,PCVに対するranibizumab + PDT併用療法,aflibercept + PDT併用療法ともに最長5年経過の報告が発表されています23-26).その多くが後ろ向き観察研究であるため,対象症例群,初期治療や維持療法に報告間のばらつきがあるものの,メタ解析を行った結果ではPCVに対する抗VEGF + PDT併用療法の長期(~3年)予後は抗VEGF療法単独に比べて良好とされています27,28).ただし,長期経過を評価する上で重要になる初期治療後の維持療法について,現在aflibercept単独治療で広く採用されている計画的投与treat and extend(TAE)法は抗VEGF + PDT併用療法においては一般的でなく,殆どのケースで必要時投与pro re nata(PRN)法が用いられています.従って比較対象となる抗VEGF療法単独群もPRN法で維持治療を行っている点には留意が必要と思われます.しかしながらTAE法ではPRN法に比べて明らかに注射回数が多くなることから,治療効果の評価には視力予後に加えて経済的負担面についても考慮されるべきでしょう.

7.  Pachychoroid関連疾患に対するPDT

ここ5~6年前からPSDという厚い脈絡膜に関連する黄斑疾患の概念が話題になっています29,30).厚い脈絡膜と漿液性網膜剥離が特徴とされる中心性奨液性脈絡網膜症(central serous chorioretinopathy: CSC)はPSDの代表疾患ですが,PDTは脈絡膜厚の減少に高い効果を発揮する事から,CSCに対しては抗VEGF療法ではなくベルテポルフィン量やレーザー照射量を減じたreduced PDTが世界の標準治療になっています(わが国では適応外).PachychoroidにCNVを伴うpachychoroid neovasculopathyもPSDの一つと考えられていますが,抗VEGF療法よりもPDTあるいは併用療法が高い治療効果を発揮するケースが少なからずあります(Fig.12).現時点ではpachychoroid neovasculopathyに対する治療については様々な意見があり,コンセンサスを得るにはもう少し時間を要すると思われますが,今後はPSDの詳しい病態を解明すると共に,同疾患におけるPDTの正しい適応を検証して行く必要があるでしょう.

Fig.12 

A case of pachychoroid neovasculopathy (46y, female). Choroidal neovascularization (CNV) was detected by optical coherent tomography angiography (OCTA). Three monthly injection of aflibercept was chosen as the initial treatment.

After 3 monthly injection of aflibercept, subretinal fluid remained unchanged (or increased). Then, a combination of aflibercept and PDT was performed which resolved polypoidal lesion and subretinal fluid within a month, then no recurrence occurred over 18 months of follow-up.

利益相反の開示

利益相反なし

引用文献
 
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