2022 Volume 43 Issue 1 Pages 30-58
令和4年診療報酬改定に対する日本レーザー医学会社会保険委員会の取り組みとその結果について述べる.また,現在薬機法で承認されているレーザー機器及び保険収載されているレーザー治療を表としてまとめ,その詳細について述べる.
The activities of Social Insurance Committee of the Japan Society for Laser Surgery and Medicine for medical fee revision in 2022 and the results were described. In addition, the summary of the laser equipment that have been approved by government and the present insurance coverage for laser treatment were described in detail.
日本では,2年ごとに診療技術料の大改定が行われる.日本レーザー医学会は,レーザー技術の適正な評価と普及のために,レーザー技術に対する技術料の改定提案やレーザーを用いた技術の公的保険への新規収載の提案を行ってきた.2022年は大改定の年に該当し,日本レーザー医学会では2020年8月よりホームページ上及び保険委員会委員にご意見をいただいた上,2021年に改定提案を行った.この提案の経過と結果の詳細について述べる.また,この提案は外科系学会保険委員会連合を通して行った.外保連は外科系技術における診療技術料の改定提案を行っている.外科系学会保険委員会連合では外保連試案として外科系技術の算定方法を提唱しており1),これを基に診療技術料の改定の提案を行っている.
また,現在薬機法で承認されているレーザー機器及び保険収載されているレーザー治療を表としてまとめ,最近承認された機器についてその詳細を述べる.
日本レーザー医学会社会保険委員会では,2022年4月の診療報酬改定に向けて,2021年8月よりホームページ上及び保険委員会委員にご意見をいただいた上,保険未収載技術の新規収載提案及び適正な診療報酬の改定が必要な既収載技術の改定提案を,外科系学会社会保険委員会連合を通じて行った.
今回の提案では,既収載技術に対して,「K005/K006/K006-2/K006-3皮膚・皮下腫瘍摘出術/鶏眼・胼胝切除術」に対するレーザー加算の提案を行った.この提案に対しては令和4年改定での採用は見送られた2).以下に,「K005/K006/K006-2/K006-3皮膚・皮下腫瘍摘出術/鶏眼・胼胝切除術に対するレーザー加算」について,その提案の要点及び再評価の結果を記載する.
1.1 K005/K006/K006-2/K006-3 皮膚・皮下腫瘍摘出術/鶏眼・胼胝切除術(レーザー加算の要望)3) 1.1.1 技術の概要脂漏性角化症や軟線維腫といった皮膚・皮下の良性腫瘍の摘出や鶏眼,胼胝の切除手術においては,治療部位の陥凹や瘢痕形成,取り残しによる再発,炎症後色素沈着,紅斑などが問題となる.このような病変に対し炭酸ガスレーザーを適切に使用することで,術野の出血をコントロールしながら正確に病変部を切開・凝固・蒸散することによって,低侵襲で副作用の少ない,QOLの高い治療が可能となるため,レーザー加算を要望する.
1.1.2 再評価が必要な理由上記,皮膚良性腫瘍の摘出術においては,出血をコントロールして術野を確保しながら,健常部の損傷を抑えつつ,病変部を正確に切除する必要がある.現在,炭酸ガスレーザーの他に剪刃(メス),液体窒素(冷凍療法),電気メスが使用されているが,炭酸ガスレーザーによる摘出術が最も簡便で安全性が高く,QOLの高い治療が実現できる為,再評価が必要と考える.
1.1.3 再評価の結果再評価すべき医学的な有用性が示されていないとされ,今回の診療報酬改定では採択されなかった.
令和4年改定の結果,日本レーザー医学会からの提案は残念ながら評価されなかった.令和4年改定では,令和2年改定に引き続き費用対効果が評価されたと考えられる項目が目立ったが,ガイドラインに収載されているかということや患者のメリットがどのくらいあるかについてもエビデンスが求められたと考えられる評価結果が目立った.
令和2年1月以降に承認されたレーザー機器を以下に示す.括弧内は製版業者名である.
2.1 LightSheer Duetダイオードレーザシステム(株式会社日本ルミナス)令和2年1月10日承認.ダイオードレーザーである.レーザーの選択的熱作用による長期的な減毛を目的とした装置である.
2.2 ザ・ルビーZ1 Nexus(株式会社ジェイメック)令和2年1月24日承認.Rubyレーザー(ノーマル,Qスイッチ)である.正常皮膚と色素沈着性母斑などの色素沈着部位との分光特性の差を利用し,ルビーレーザー光がこれら色素沈着部位に選択的に吸収されることにより,これらを破壊し治療するものである.また,刺青の除去にも使用する.
2.3 NEWレザック(白水貿易株式会社)令和2年3月24日承認.炭酸ガスレーザーである.生体組織の切開,止血,凝固及び蒸散に使用する.
2.4 ウォーターレーズiPlus(白水貿易株式会社)令和2年4月10日承認.Er,Cr:YSGGレーザーである.口腔内の軟組織の切開,凝固,蒸散及び歯牙の蒸散を行う.
2.5 皮膚良性色素性疾患治療用レーザ装置PicoSure(サイノシュアー株式会社)令和2年5月13日承認.アレキサンドライトレーザー(ピコ)である.体表面の表在性及び深在性良性色素性病変の治療,又は外傷性並びに入墨による刺青の蒸散及び除去に使用する.
2.6 ディスカバリー ピコ プラス(Quanta System SpA)令和2年7月3日承認.Nd:YAG/ルビーレーザー(ピコ/Qスイッチ)である.刺青及び色素性病変の蒸散及び除去に使用する.
2.7 長期減毛・色素性疾患用レーザー装置GentleMax Pro Plus(シネロン・キャンデラ株式会社)令和2年9月17日承認.アレキサンドライトレーザー/Nd:YAGレーザーである.レーザーの選択的熱作用により,長期的な減毛を目的とする.また,アレキサンドライトレーザーは表在性の皮膚良性色素性疾患の治療にも使用する.
2.8 パラス(株式会社アルテック)令和2年12月7日承認.チタンサファイアレーザーである.乾癬,類乾癬,掌蹠膿庖症,菌状息肉腫(症),悪性リンパ腫,慢性苔癬状紕糠疹,尋常性白斑,アトピー性皮膚炎,円形脱毛症等の中波紫外線療法の対象となる皮膚疾患の治療に用いる,波長311 nmのチタンサファイアレーザーである.
2.9 Quanta Litho EVOレーザ(エダップテクノメド株式会社)令和2年12月16日承認.Ho:YAGレーザーである.生体組織の切開,止血,凝固,蒸散及び尿路の結石破砕術を行う.
2.10 レボリックス200(タカイ医科工業株式会社)令和2年12月23日承認.Tm:YAGレーザーである.生体組織の切開,止血,凝固,蒸散を目的とする外科的処置に使用する.
2.11 長期減毛用ダイオードレーザー メディオスターモノリス(株式会社メディカルユーアンドエイ)令和2年12月23日承認.ダイオードレーザーである.レーザーの選択的熱作用により,長期的な減毛を目的とした装置である.
2.12 LightSheer Quattroダイオードレーザシステム(株式会社日本ルミナス)令和2年12月23日承認.ダイオードレーザーである.レーザーの選択的熱作用により,長期的な減毛を目的とした装置である.
2.13 PQXピコレーザー(株式会社ジェイメック)令和3年2月5日承認.Nd:YAGレーザー(ピコ)である.体表面の刺青の除去と色素性病変の治療に使用する.波長1064nmは,太田母斑,異所性又は持続性蒙古斑,外傷性色素沈着症等の深在性色素性病変の治療及び黒青系の色の刺青の除去に使用する.波長532nmは,扁平母斑,雀卵斑,老人性色素斑等の表在性色素性病変の治療及び赤系の色の刺青の除去に使用する.
2.14 モータスエーエックス(株式会社DEKA JAPAN)令和3年4月7日承認.アレキサンドライトレーザーである.レーザーの選択的熱作用による長期的な減毛を目的としている.
2.15 ロングパルス長期減毛用レーザElite+(サイノシュアー株式会社)令和3年7月1日承認.アレキサンドライトレーザー/Nd:YAGレーザーである.レーザーの選択的熱作用による長期的な減毛を目的としている.
2.16 フォーマ・アルファ(株式会社ジェイメック)令和3年8月25日承認.ダイオードレーザーである.レーザーの選択的熱作用による長期的な減毛を目的としている.
2.17 眼科用レーザ光凝固装置Vitra 2レーザシステム(エレックス株式会社)令和3年10月21日承認.DPSSレーザーである.レーザーによる熱作用を利用して,眼疾患の治療(網膜・虹彩・毛様体・隅角光凝固術)に用いる.
2.18 Enlighten IIIレーザシステム(キュテラ株式会社)令和3年11月22日承認.Nd:YAGレーザー(ピコ)である.深在性及び表在性の皮膚良性色素性病変の治療並びに刺青の除去に使用する.
2.19 SPLENDOR Xレーザシステム(株式会社日本ルミナス)令和4年1月27日承認.アレキサンドライトレーザー/Nd:YAGレーザーである.レーザーの選択的熱作用による長期的な減毛を目的としている.
2023年は診療報酬の大改定年ではないため,診療報酬に対する提案活動は限定的となるが,2024年に予定される大改定に向けた準備を行う.具体的には11月下旬には外保連及び内保連経由での提案予定の技術についてのアンケートの締め切りとなるため,7月ごろよりホームページ等を通して提案を希望する技術の公募を行う.ここで提案を希望する技術に社会保険委員会が中心となって優先順位をつけそのリストを外保連に回答する.外保連及び内保連では,複数学会から重複して提案が希望された技術につき調整を行い,担当学会を決め,担当学会となった際には,例年5月頃に提案書の提出締め切りとなるため,それまでに提案書を作成する.提案書の作成には,その技術の有用性を示す論文や使用する薬剤や機器の添付文書の提出が求められており,あらかじめ資料を収集しておく必要がある.
現在保険収載されているレーザー治療に関する実態を調査した結果をTable 1からTable 4にまとめた.表の作成にあたっては,日本医用レーザ協会に協力いただいた.令和4年の医科と歯科の診療報酬点数表からレーザー治療に関係するものを抜粋し,まとめた(Table 1).Table 1には保険診療の[区分]と[名称],[保険点数],[留意事項],そして「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和4年3月4日保医発0304第1号)4)から算定方法の該当部分を抜粋し[通知]とし,さらに該当の保険診療で使用可能な[特定診療報酬算定医療機器の区分],またその医療機器の[一般的名称],そして実際に使用されている[装置名][製造販売元][販売元],最後に[現況]とし現在も製造販売されている装置には○,製造販売は中止されているがまだ市場で使用されている装置には△で区別した.
特定保険医療材料として償還されるディスポーザブル材料をTable 2にまとめた.Table 2には特定保険医療材料の[特定診療報酬算定/決定区分]と[償還価格],そして「特定保険医療材料の定義について」(令和4年3月4日保医発0304第12号)5)から該当部分を抜粋し[定義]とし,さらに「特定保険医療材料の材料価格算定に関する留意事項について」(令和4年3月4日保医発0304第9号)6)から算定条件の該当部分を抜粋し[通知]とし,またその医療材料の[販売名],[製販業者名],[保険適用開始日],そして[承認番号]を記載した.Table 3には償還が認められていないディスポーザブル材料をまとめた.ディスポーザブル材料の[一般的名称],そして[販売名][製販業者名][販売会社名][承認年月日][承認番号],最後に[使用目的及び効能・効果]とした.
Table 4は波長別のレーザー機器を,日本医用レーザ協会,日本眼科医療機器協会加盟企業等から収集した情報をベースに作成した.各社から情報提供された機器に関し波長順に(短→長)並べた.Table 4中の項目は[波長][レーザーの種類][販売名][製造販売会社名][販売会社名]そして[承認年月日]と[承認番号],[使用目的又は効果],最後に[現況]とし現在も製造販売されている装置には○,製造販売は中止されているがまだ市場で使用されている装置には△で区別した.[波長]は複数の波長を発振できる装置はそれぞれの波長を記載した.医療機器は改良が加えられていくのが常であり,ここにも一変申請されている装置が多くあるが,承認日は最初のモデルが承認された日とした.また[使用目的又は効果]の項には,承認書に記載されている文言をそのまま記載した.[保険]にはその装置で可能な保険診療を,Table 1 で振った一連の番号を記載した.
今回これらの表を作成するにあたりご協力いただいた企業の一覧をTable 5とした.
令和4年診療報酬改定では,当学会からの提案は評価されなかった.レーザー技術を応用した医療技術は概して費用対効果が良くQOLに対しても高い改善効果が期待されており,引き続きレーザー治療の普及に向けて活動を行っていくことが重要である.しかし,診療報酬改定のための技術評価には,ガイドラインへの収載や患者への利益を示すエビデンスが必要であり,当学会においてもエビデンスを構築していく活動を期待する.また,レーザー関連の新規技術に関しては日本レーザー医学会の果たす役割は重要であり,産官学の連携を密にして安全なレーザー技術の普及に向けて活動を行っていくことが必要である.
外保連では,外科系技術について診療報酬を適正化するために外保連試案を提唱しており,引き続き外保連と連携することにより,診療におけるレーザー技術を適正に評価いただくことは,レーザー医療の普及のためにも重要である.
利益相反なし
Laser devices arranged in the order of insurance classification.
*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応はされているが販売は終了.
(注)2022年3月15日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.
Laser devices arranged in the order of insurance classification.
*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応はされているが販売は終了.
(注)2022年3月15日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.
Laser devices arranged in the order of insurance classification.
*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応はされているが販売は終了.
(注)2022年3月15日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.
Laser devices arranged in the order of insurance classification.
*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応はされているが販売は終了.
(注)2022年3月15日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.
Laser devices arranged in the order of insurance classification.
*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応はされているが販売は終了.
(注)2022年3月15日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.
Laser devices arranged in the order of insurance classification.
*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応はされているが販売は終了.
(注)2022年3月15日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.
Laser devices arranged in the order of insurance classification.
*1現況:○=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応はされているが販売は終了.
(注)2022年3月15日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.
Special treatment materials related to laser device.
(注)2022年3月15日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.
Approved medical device of light-delivery system related to laser device.
(注)2022年3月15日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.
Laser devices arranged in the order of wavelength.
*1現況:〇=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応をされているが販売は終了.
*2保険:Table1の同番号の治療で使用可能.
(注)2022年3月15日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.
Laser devices arranged in the order of wavelength.
*1現況:〇=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応をされているが販売は終了.
*2保険:Table1の同番号の治療で使用可能.
(注)2022年3月15日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.
Laser devices arranged in the order of wavelength.
*1現況:〇=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応をされているが販売は終了.
*2保険:Table1の同番号の治療で使用可能.
(注)2022年3月15日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.
Laser devices arranged in the order of wavelength.
*1現況:〇=販売中,△=消耗品の提供やメンテナンス等の対応をされているが販売は終了.
*2保険:Table1の同番号の治療で使用可能.
(注)2022年3月15日現在の,日本医用レーザ協会による調査に対しての回答による.
Cooperative companies for investigation.