2022 Volume 43 Issue 2 Pages 75-81
1964年にGoldmanらによって窩洞形成に用いられてから,歯科領域でレーザーの臨床応用が多数報告されている.その用途としては,口腔内軟組織の切開,止血,凝固,および,蒸散など口腔外科処置,う蝕の除去,歯周外科手術等で広く使用されており,また近年,う蝕についての新しい知見が報告されている.今回,光によるう蝕診断,う蝕予防,う蝕の選択的除去の可能性について報告したい.
Since lasers were first used for cavity preparation in 1964 by Goldman et al., there have been several reports of their application to clinical dentistry. They are widely used for incising oral soft tissue, hemostasis, coagulation, and evaporation in oral and periodontal surgery, and have recently been reported a new finding about the caries treatment. We report that the possibility of the caries diagnosis, caries prevention, selective removal of the caries with the light.
Maimanらは,1960年に世界で初めてレーザー発振に成功した1).それから間もない開発当初のレーザーは歯質への熱的な障害が大きく,レーザーで歯を治療することは不可能であろうとされた.しかしながら,レーザー装置の技術的改良が進み,発振可能な条件がますます豊かになり,本邦における現在の歯科界では硬組織のみならず軟組織の治療など,各面においてレーザーは欠かせぬ技術と認識されるようになった.我が国の歯科診療所数68,613件(2018年10月1日)2)に対して,歯科用レーザー治療器は2015年度まで累計約44,000台が販売されており3),歯科診療所の約半数以上で導入されていることとなる.多くの種類のレーザーが応用されている軟組織に対する口腔外科手術では,歯肉,頬粘膜,舌,口唇,口蓋に発生する軟組織病変の切開,凝固,止血に,半導体レーザー,Nd:YAGレーザー,CO2レーザー,Er:YAGレーザーが使用されている.一方,硬組織疾患であるう蝕治療においては,当初はEr:YAGレーザーのみがう蝕の除去を目的に使用されていたが,2020年にEr,Cr:YSGGレーザーも医療機器として承認され,また半導体レーザーがう蝕の検査機器に応用されるようになっている(Fig.1).またう蝕の進行の制御にも期待が持たれていることから,今回はレーザーを含めた光によるう蝕の管理の可能性について解説する.

Suitable case for Laser type.
1964年には,GoldmanやSternらがレーザーを用いて抜去歯の窩洞形成を試み4),1989年,Hibst,Kellerらにより,光による歯の切削はEr:YAGレーザーを用いることで実現可能であることが報告された5).Er:YAGレーザーは,水に対して非常に強く吸収される特性を有し,歯表面および表層の水分を蒸散させ,その衝撃で歯を切削すると報告されている6).日本においては,1980年代後半よりHOYA社およびモリタ製作所の共同開発で研究開発が開始され,日本で最初の歯科用Er:YAGレーザー装置Erwin®が開発され,1995年う蝕治療,軟組織処置,歯石除去への応用について厚生省の承認を受け,薬事認可されている.歯科用Er:YAGレーザーは歯科治療に対する嫌悪感のもとである振動・騒音が無く,患者に優しいう蝕治療を実現した.
2.2 Er:YAGレーザーの切削効率を高める試みEr:YAGレーザーによる歯の切削は不快な音や振動も少なく,患者に与えるストレスが小さいという利点がある一方,高速回転切削器具と比較して切削効率が悪く,治療時間の延長などが問題となる.切削効率を向上させるために先端出力や繰り返し速度を上げる試みがされてきているが,歯髄への影響など様々な問題を抱えている.筆者らはレーザー切削時の注水に着眼し,霧状噴霧注水で,切削効率を向上させることが可能なのではないかと考え,注水装置を従来の注水機構ではなく霧状に噴霧注水できる装置を利用しようと考えた.モリタ製作所の協力の下,注水方式を霧状に改良した試作チップを作製し,ヒト歯エナメル質および象牙質に対する切削効率と歯髄への熱影響についての検討を行ったところ,切削効率については,先端出力100 mJ,繰り返し速度10 ppsの照射条件において,エナメル質試料では距離0.5 mm,象牙質試料では距離0.5および1.0 mmの照射距離で霧状噴霧群は有意に高い値を示した.同様に先端出力30 mJ,繰り返し速度25 ppsの照射条件において,エナメル質試料では0.5 mm,象牙質試料では0.5 mmおよび1.0 mmの照射距離で霧状噴霧群は有意に高い値を示した(Fig.2).また温度上昇については,100 mJ:10 ppsの照射条件において従来のチップでは2.6°Cの,霧状噴霧群では2.9°Cの温度上昇があり,有意差は認められなかった.同様に30 mJ:25 ppsの照射条件において従来のチップでは1.6°Cの,霧状噴霧群では2.1°Cの温度上昇があり,有意差は認められなかった(Fig.3).この結果から,同じ照射エネルギーであっても注水装置を従来の注水機構ではなく霧状に噴霧注水に変更することにより,削除量が約2倍となり,また歯髄への熱影響は通常のままで,歯の硬組織切削が可能であることが認められた7).現在では霧状噴霧先端チップは市販され,臨床応用されている.

Effect on cut efficiency of Er:YAG laser with the aerosol tip. (100 mJ:10 pps)
(This figure was adapted from reference 7)

Temperature rise at Er:YAG laser irradiation with the aerosol tip. (100 mJ:10 pps)
(This figure was adapted from reference 7)
一方,う蝕治療については,FDI(国際歯科連盟)は2002年にMinimal Intervention(ミニマルインターベンション)(MI)の概念を提唱した.その中でMIとは「う蝕の形成機序の解明,そして接着性修復材料の進歩によって発展した.現在では,脱灰されていてもう窩となっていないエナメル質や象牙質は「治癒」できるものであり,G V Blackによって提唱されたう蝕部位への「予防拡大」という外科的アプローチはもはや実状に沿わないものと認められる.」と記されている.すなわち歯の切削に際しては極力天然歯質を保存するように努め,切削するのは破折しそうなエナメル質と細菌感染した象牙質と限定すべきであると記されている.一方,う蝕除去は除去すべきう蝕象牙質の客観的な診断基準が確立されていないため,日常で多くの臨床家が術者の経験や手指の感覚で行っている.これまで歯の削除量を減らすために,より安全で,かつ効率的にう蝕だけを削除することを目的として,手用切削器具,音波・超音波装置,エアーアブレージョン装置,あるいはレーザー装置などの様々な器機の開発が行われてきたが,まだ十分であるとは考えられない.
2.4 う蝕検知液についてう蝕の削除範囲の決定に最も重要なことはその部分の再石灰化が可能であるかということである.教科書で書かれているようにう蝕の分類で透明層の直上でう蝕の削除ができればよいのだが,しかしう蝕処置中にその部分の再石灰化の可否を検査することは現在,困難であり,その診断基準としてう蝕の硬さ,色またはう蝕検知液による染色について研究されている.慢性う蝕の場合は前述の色と硬さをう蝕象牙質除去の診断基準として用いることができるが,急性う蝕の場合は着色が少なく,また軟化と細菌侵入との境目に差が大きく,軟らかい部分を削除してしまうと,過剰削除となり,感染象牙質のみの削除は難しい.そこでう蝕除去を染色によって識別するために1%アシッドレッドプロピレングリコール溶液からなるう蝕検知液が開発された8).当初,染色されるう蝕象牙質は完全除去することとなっていたが,染色部位をすべて除去すると過剰切削になり,また軟化していても赤く染まらない部分は再石灰化が期待できるなどの理由から,淡いピンクに染色された部分は残すように勧められている9,10).そこで現在ではプロピレングリコール(分子量76)からポリプロピレングリコール(分子量300)に基材を変更した染色されるう蝕象牙質をすべて除去することができるう蝕検知液が開発されている11).日本歯科保存学会から発行されているう蝕治療のガイドライン12)に中等度の深さの象牙質う蝕の除去範囲の項目にう蝕検知液の使用について記されており,確実に感染歯質を除去し,過剰切削を回避することができることから,う蝕象牙質の除去にう蝕検知液の使用が推奨されている(Fig.4).

Caries-detecting Dye Solution.
Er:YAGレーザーは歯質の削除には最も適したレーザーであり,表面吸収型であるEr:YAGレーザーは安全に,かつ効率的に選択的う蝕除去が可能になるのではと考えられる.これまでの研究過程で,色だけではなく,2,940 nmレーザーに特異的な吸収特性を有する第1級アミノ基を有する化合物を配合することによりEr:YAGレーザーの吸収を良くする事ができることが判明したことから,日本歯科薬品の協力により第1級アミノ基を有する化合物を配合したEr:YAGレーザー用う蝕検知液を試作し,う蝕部を染色し,染色された部分のみを削除することを試みた.レーザー高吸収体をう蝕検知液の成分として配合することで,これまでのう蝕検知液よりEr:YAGレーザーの吸収性を高めることが可能で,またレーザー高吸収体を配合することによりう蝕検知液の浸透性に変化はなく,う蝕検知液としての作用に影響はないことは日本歯科薬品により確認されている.第1級アミノ基を有する化合物を1,2,4%配合した無色と緑色の試作Er:YAGレーザー用う蝕検知液を人工う蝕象牙質に滴下し,Er:YAGレーザーを100 mJ,1 ppsの条件で10パルス照射し,形成された窩洞を3次元形状測定装置にて測定し,深さ,除去体積を測定した.除去効率については,う蝕検知液のレーザー高吸収体の濃度が増加すると窩洞の深さ,除去体積量共に増加する傾向が認められた(Fig.5, 6).レーザー高吸収体を4%配合するう蝕検知液を使用した場合,窩洞の深さはコントロールと比べて有意に高い値を示し,また窩洞の除去体積量はその他の濃度と比べて有意に高い値を示した(p < 0.05).レーザー高吸収体配合う蝕検知液はEr:YAGレーザーの吸収率を増加させ,またEr:YAGレーザーによる窩洞形成の深さ,除去体積量ともに増加させる効果が認められた.レーザー高吸収体配合う蝕検知液を使用することにより,染色されたう蝕象牙質のみが削除できるエネルギー設定を行うことで,安全,かつ効率的な選択的う蝕除去ができる可能性が示唆された13).

The cavity depth on Er:YAG laser irradiation with Caries-detecting Dye Solution mixed with highly laser-absorptive substances. (1–4%)
(This figure was adapted from reference 14)

The cavity volume on Er:YAG laser irradiation with Caries-detecting Dye Solution mixed with highly laser-absorptive substances. (1–4%)
(This figure was adapted from reference 14)
現在,日本ではEr:YAGレーザーが硬組織切削用の医療機器として唯一承認されているが,レーザーによるう蝕除去後,充填されるコンポジットレジンの接着強度が低下するといった報告もある14).我々はレーザーを用いた快適なう蝕治療の実現のためにも,新たな波長のレーザー装置の開発や照射条件の見直しが必要と考えた.我々は大阪大学 粟津邦男教授の指導の下で,う蝕部では無機質の脱灰に伴い有機質の割合が大きくなることから,波長6 μm帯は象牙質の組成の約20%を占める有機質と相互作用を起こすことに着目し,波長6 μm帯による選択的う蝕除去の共同研究を行っている.波長6 μmナノ秒パルスレーザーの選択的なう蝕除去における有効性の検討を行った結果,波長6 μm帯ナノ秒パルスレーザーは健全象牙質に低侵襲,かつう蝕象牙質に選択的な切削を誘起できることが示された.特に波長5.8 μm付近が選択的な切削に適することが示された.実際のヒトう蝕歯を対象とした切削実験においても有効性が確かめられ,細菌感染が軽度のう蝕部も選択的に切削できることが確認できた15).またEr:YAGレーザーにおいても照射時のパルス幅を象牙質の熱緩和時間よりも短い約100 nsに設定したQスイッチを用いて照射した場合,従来のパルス幅(200 μm)でEr:YAGレーザーを照射した象牙質と比較してコンポジットレジンの象牙質接着強さが向上したと報告されている16).
医科において口腔癌に対する光線力学診断PDD,光線力学療法PDTも他の臓器に発生する癌と同様,多くの基礎的,臨床的研究が報告されている.口腔に発生する悪性腫瘍に対しては,光感受性物質と光源にフォトフィリン(ポルフィマーナトリウム)とエキシマダイレーザー(波長630 nm)もしくはYAG-OPO(波長620~670 nm)や,レザフィリン(タラポルフィンナトリウム)と半導体レーザーPDレーザー(波長664 nm)を使用してPDTを行っている17).また近年,5-アミノレブリン酸を用いた光線力学療法について,副作用が少なく低侵襲であり,注目されている18).また歯周病治療におけるレーザーの応用は,平成22年度の保険改訂で「レーザー応用による歯石除去」が保険収載に承認され19),Er:YAGレーザーによる歯石除去が行われているが,このほか歯周ポケット内の殺菌効果を得るため,薬剤感受性物質としてメチレンブルーやインドシアニングリーンを歯周ポケット内に留置し,半導体レーザーやLEDなど各種光源を併用した歯周病PDTの研究が行われている20).
3.2 レーザーなどの光による削らないう蝕管理への展望FDIの宣言ののち,患者や患歯を管理しながら,疾患を予防し,進行を抑制してその健康を保ち,増進する歯科医療を目指すことが望まれている.歯冠部う蝕については,これまでも初期う蝕,う蝕象牙質を非侵襲的に診断するかについて検討されており,1999年にドイツのHibstによりレーザーの蛍光強度を測定することによって,歯質の切削をすることなくう蝕歯質と健康歯質を判定できることが報告され21),KaVoから光学式う蝕検出装置,ダイアグノデント(DIAGONOdent)という診断器が発売された.その後,隣接面う蝕の診断も可能となるように改良されたダイアグノデントペン(DIAGNOdent Pen)が日本国内でも販売された.う蝕の検出に使用するレーザーの波長は655 nmの赤色レーザーが使用されており,レーザー光を歯に照射し,反射した蛍光を測定してう蝕の程度を診断する.この光学式う蝕検出装置により,フッ化物塗布などの予防的対応や再石灰化治療と並行して患歯を定期的に検査し,測定値の変化から予防的処置の効果を評価することが可能で,2018年4月よりエナメル質初期う蝕管理加算とエナメル質初期う蝕に罹患している場合のフッ化物歯面塗付処置において,2回目以降の算定に当たっては,初期う蝕部の口腔内カラー写真撮影に代えて光学的う蝕検出装置での測定による算定が可能となり,まずは歯冠部の小窩裂溝う蝕や隣接面う蝕の管理の可能性が高まった.また平井らはヌープ硬さが30~40 HKNと規定した人工う蝕象牙質試料に試作インドシアニングリーン配合う蝕検知液を滴下し,10 s放置後,水洗,エアー乾燥を行ったものを染色試料とし,半導体レーザー発振装置としてSレーザー(昭和薬品化工)をCWモードで照射した実験結果から,試作インドシアニングリーン配合う蝕検知液を併用し半導体レーザーを照射した場合,照射エネルギーの表面での吸収が可能となり,う蝕象牙質のヌープ硬さが向上したことを報告している22,23).
3.3 新たなう蝕,根面う蝕への対応根面う蝕については,近年の活発な口腔保健啓発活動とフッ化物の応用および歯周治療の進展により,すべての年代の成人で残存歯数が増加しているが,多くの高齢者に歯肉退縮に伴う根面う蝕が認められ,2005年厚労省歯科疾患実態調査では高齢者の約半数に認められたとされている.根面う蝕の特徴としては,本来,口腔内に露出していない歯根部が,歯周疾患による歯肉の退縮等で露出し,エナメル質と比べると脆弱な歯根のセメント質に様々な刺激が加わることによって,根面う蝕を誘発する.根面う蝕は歯冠部エナメル質と歯根面のう蝕の進行形式の違いと根面う蝕の原因菌が異なることがあり,根面う蝕は咬合面にできるエナメル質のう蝕と異なり,浅在性でう蝕の範囲が広くなり,削除しなければならないう蝕は浅く,広く,まばらに存在する.根面う蝕治療に対しては,日本歯科保存学会のう蝕治療ガイドラインにおいて12),フッ化物を用いた非侵襲的治療が推奨されている(推奨の強さ:B,エビデンスレベル:II)が,薬剤塗布などの切削を行わない非介入の治療と,積極的に切削を行う修復治療の診断は,現在の臨床においては最終的には探針によるう蝕部の触診という術者の感覚に頼っており,その診断が術者の経験に左右される可能性が高い.また臨床での薬剤塗布などの切削を行わない非介入の治療の効果については,客観的な検査は困難であった.また根面う蝕に対して切削を行う場合,エアータービンやエンジンでの削除では,健全な歯質を削除してしまうオーバートリートメントになる可能性が高い.すなわち根面う蝕の治療は歯冠部よりも格段に難しく,できる限りう蝕の進行を抑制し,重症化を回避することが重要であるにも関わらず,予防するか,治療するかの境界を診断する検査もあいまいであった.また歯冠部のう蝕検査に用いられている光ファイバー,レーザー蛍光,インピーダンス,QLF法,OCT法などの機器は根面う蝕では用いることが難しい.そこで現在,大阪大学と大阪歯科大学との共同研究により,根面う蝕の管理に有用な光学的う蝕検査装置を開発している.この装置は従来の探針と同様に片手で持てる小型の装置であり,う蝕部の硬さを定量的に高精度に測定することが可能である.単に測定を行うだけではなく,測定結果を管理し,フッ素などのう蝕進行抑制の薬剤によるう蝕部の硬さの変化を経時的に確認することが可能で,歯科医師のう蝕管理・治療計画をサポートすることができ,低侵襲な歯科治療が可能となると考えられる.また例えば前述の平井らの研究から,半導体レーザーとインドシアニングリーン配合う蝕検知液を使用して人工う蝕象牙質に照射した場合,う蝕象牙質のヌープ硬さが向上することから,積極的に根面う蝕のヌープ硬さの向上,硬さの維持を行うことの可能性も考えられ,根面う蝕の管理に使用できる可能性を示した.
3.4 光による口腔内細菌叢の管理ヒト口腔内には100種類以上,数千億の細菌が生息している.近年,その細菌群のバランス変化が,う蝕や歯周病などの口腔の疾患,また糖尿病,脳心臓血管疾患などの全身疾患に強く関連していることが明らかになった.次世代シークエンス技術の確立により細菌パターンを解析する技術は急速に進歩してきたが,口腔内の細菌パターンを健康型へと変える方法については,ほとんど検証されていない.多くの細菌は,細胞内にヘム前駆体としてプロトポルフィリンIX(PpIX)を蓄積している.PpIXは,紫色光(400~410 nm)の照射を介して殺菌力を有する一重項酸素を発生することから,この系を用いた光線力学的療法が緑膿菌感染症などで検証されている24).口腔細菌の一部は,PpIX依存的に光殺菌されるが,紫色光の口腔細菌叢への影響は明らかになっていない.Wangらは,プラークを用いたin vitro培養系と次世代シークエンス技術を組み合わせ,紫色光による細菌叢の変動を解析した結果,LED照射の強度に応じて,プラーク細菌叢の細菌密度が有意に減少すること,また,紫色LED照射によりプラーク細菌叢が有意に変化することを明らかにしている.また,LED照射に伴って減少した細菌群の中に歯周病原細菌が含まれていることを報告している25).今後,う蝕病原細菌についても検討していく予定である.
今後さらに加速度を増す高齢社会において,できる限り侵襲の少ない歯科治療にとどめることは重要と思われる.光,特にレーザーは歯科においては,これまで歯を削ったり,軟組織を切除したりすることに応用されてきたが,最近の光の研究では人類の手技では不可能な様々な生体の制御を行うことができる可能性がでてきている.これからの研究により,光による制御で,まずはう蝕の管理(コントロール)を行っていきたい.