The Journal of Japan Society for Laser Surgery and Medicine
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REVIEW ARTICLE
Phototherapy for Skin Disease
Hideki Nakajima
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2023 Volume 43 Issue 4 Pages 254-258

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Abstract

皮膚病に対する光線医療はPUVA療法,ナローバンドUVB 療法,エキシマライト,エキシマレーザーがあり,白斑・乾癬・サルコイドーシス・皮膚リンパ腫における局所治療の中心である.さらに色素性病変に対するアレキサンドライトレーザー,血管病変に対する色素レーザーは外見の改善とともに心理的治療効果が大きく患者のQOL 改善に寄与している.

Translated Abstract

Photomedicine for skin diseases includes PUVA therapy, narrow band UVB therapy, excimer light, and excimer laser, which are the main topical treatments for leukoderma, psoriasis, sarcoidosis, and cutaneous lymphoma. Furthermore, the alexandrite laser for pigmented lesions and the dye laser for vascular lesions have a large psychological therapeutic effect as well as improved appearance and contribute to the improvement of QOL of patients.

1.  はじめに

本邦における皮膚病に対する光線医療は,1970年代に尋常性乾癬に対するPUVA(psorarenを外用もしくは内服後にUVAを照射)療法が確立され,2002年には光毒性反応がより少ないナローバンドUVB(波長311~312 nm)治療が乾癬,白斑,アトピー性皮膚炎に使用されるようになった.さらに病変部への局所的な照射(ターゲット型光線療法)を目的として,2008年にはエキシマライト(波長308 nm),2019年にはエキシマレーザー(波長308 nm,塩化キセノンガスを媒質)が登場した.皮膚疾患に対する光線療法の作用機序としては,DNA合成抑制,T細胞のアポトーシス誘導,制御性T細胞誘導,炎症性サイトカイン産生抑制が考えられている1).皮膚科光線療法で保険適応が認められている疾患は,乾癬,類乾癬,掌蹠膿疱症,菌状息肉腫,悪性リンパ腫,慢性苔癬状粃糠疹,尋常性白斑,アトピー性皮膚炎,円形脱毛症である.

これとは異なる流れとして,1960年代からレーザーの皮膚疾患への応用が始まり,1970年代に入ってメラニン吸収が高いルビーレーザーが皮膚色素病変に使用されるようになった.その後はパルスレーザー照射による光熱作用を利用した治療が広く行われるようになり,近年ではパルス幅の可変化や冷却,スキャニングなどの技術が組み合わされ様々な臨床応用が可能になっている.

高知大学医学部附属病院光線医療センターでは,皮膚科においてナローバンドUVBの部分照射型と全身照射型,および2種のエキシマライト機器により各種皮膚疾患を治療している.また,皮膚科レーザー外来においてQスイッチアレキサンドライトレーザー(Q-ALX)(波長755 nm)によるメラニン系色素病変(太田母斑,老人性色素斑,蒙古斑,刺青),色素レーザー(波長585~595 nm)による血管病変(毛細血管奇形,乳児血管腫,毛細血管拡張症)の加療を行っている.なお,レーザー治療に保険適応が認められている疾患は,毛細血管奇形,乳児血管腫,毛細血管拡張症,太田母斑,異所性蒙古斑,扁平母斑,外傷性刺青である.

以下,各皮膚疾患における光線医療を概説し,実際の症例を供覧する.

2.  尋常性白斑

最も高頻度に生じる後天性の色素異常症による白斑・白皮症である.全人口の0.5~1%が罹患しているといわれる2).治療抵抗性で再発頻度も高い難治性の疾患であり,発症部位が顔面や手背などの露出部位であれば,患者のQOLは著しく低下し社会活動も障害される3).また本疾患の患者は,古来からいわれのない差別を受けてきた歴史が残されている.以前から外用ステロイドやPUVA療法が行われているが,近年新たな外用療法や中波長紫外線領域を利用した光線療法が急速に普及している4).2012年尋常性白斑診療ガイドラインでは,ナローバンドUVBの推奨度はB(行うよう勧められる)でPUVAよりも治療効果に優れ紫外線療法の第一選択としてよいとなっている.エキシマレーザー/ライトの推奨度はC1(行うことを考慮してもよい)で治療効果が期待できる場合は行ってもよいとされている.尋常性白斑に対する光線療法は保険適応が認められた標準治療である.

エキシマライト(波長308 nm)照射が著効した症例を提示する.4ヶ月前から生じた60代女性の左頬部の白斑に対し,週1回エキシマライト130 mJ/cm2を照射したところ5ヶ月後に略治した(Fig.1a, b).

Fig.1 

(a) Depigmented spots on the left cheek of patients with vitiligo before excimer light irradiation (arrow)

(b) Almost cured 5 months after excimer light irradiation (arrow)

3.  尋常性乾癬

境界明瞭な紅斑の上に銀白色雲母状の鱗屑が付着する角化性皮疹を特徴とし,わが国の患者総数は10~20万人,人口0.1~0.2%と推定されている5).皮疹は全身に認められるが,頭部と下肢が最も多い.治療は局所療法と全身療法があり,局所療法の中心となるのは外用療法と光線療法である.光線療法においては2002年まではPUVAしか行えなかったが,現在はナローバンドUVBとエキシマレーザー/ライトが中心となっている.その理由としてはPUVA長期使用による皮膚癌発症リスクの増加が認知されたことも挙げられる1).尋常性乾癬に対する光線療法は保険適応が認められた標準治療である.

エキシマライト(波長308 nm)照射で改善した70代男性症例では,エトレチナート内服を併用して週1回右下腿に300 mJ/cm2を照射したところ1ヶ月後に紅斑と鱗屑の減少を認めた(Fig.2a, b).

Fig.2 

(a) Erythema on the right lower leg of a psoriasis patient before excimer light irradiation

(b) Erythema and scales decreased 1 month after excimer light irradiation

4.  サルコイドーシス

サルコイドーシスの皮膚病変の第一選択はステロイド外用であるが,長期にわたって持続して存在する結節型や局面型に対しては効果に乏しいことが多い.皮膚サルコイドーシスに対する光線療法は保険適応が認められていないが,標準治療のステロイド外用に加えて補助的に使用する.我々は以前にエキシマランプによりサルコイドーシスの皮膚病変が治癒した症例を報告した6)が,その他にも40代女性の右肘に結節を呈する症例においてエキシマランプ週1回300 mJ/cm2照射により2ヶ月後に皮疹の改善を認めている(Fig.3a, b).

Fig.3 

(a) Nodules on the right elbow of a skin sarcoid patient before excimerite irradiation(arrows)

(b) Elevation of the nodules decreased 2 months after excimer light irradiation (arrows)

5.  菌状息肉腫(皮膚T細胞リンパ腫)

本邦でおもに行われている光線療法は,PUVA療法とNB-UVB療法であるが,現在のガイドラインにおいては早期病変に対してNB-UVB療法はPUVA療法と同程度の奏効率・奏効期間を示すと考えられている7).菌状息肉腫(皮膚T細胞リンパ腫)に対する光線療法は保険適応が認められた標準治療である.エキシマレーザーの有用性が限局性の病変において少数例報告されている8)が,我々も30代女性の下腿の結節が2週に1回のエキシマレーザー250 mJ/cm2照射により1年後に略治した(Fig.4a, b).

Fig.4 

(a) Nodules on the right lower leg of a patient with cutaneous T-cell lymphoma before irradiation with excimer-laser (arrow)

(b) Almost cured 1 year after excisor laser irradiation (arrow)

6.  乳児血管腫

生後1~2ヶ月で急速に増大する毛細血管内皮細胞の良性腫瘍であり,苺のような外観を呈することから従来は「苺状血管腫」と呼ばれていた.血管内皮細胞が増殖後にアポトーシスを起こして自然消退する経過を辿るが,治癒後に瘢痕形成をきたすことがあり早期の治療により腫瘤形成を抑制することが望まれる.2016年にプロプラノロールが本邦で承認され,腫瘤の退縮を促進させることが可能になったが,色素レーザーとの併用で残存病変をより少なくする介入が可能である9).乳児血管腫に対するレーザー治療は保険適応が認められている.プロプラノロール内服困難な乳児に色素レーザーをスポットサイズ7 mm,パルス幅10 msec,出力11 J/cm2,皮膚冷却システム40/20 msecで2回照射し,3ヶ月後には腫瘤を平坦化させることができた(Fig.5a, b).

Fig.5 

(a) Infantile hemangioma of the forehead before dye laser irradiation

(b) Tumor flattened after 2 times irradiation of dye laser

7.  毛細血管奇形

先天性の脈管形成異常であり,毛細血管ネットワークにおける低流速性で活動性のない血管拡張性の病変であり,出生時より「赤あざ」として現れ,前額部,眉間,項部など一部の病変を除いては自然消退することはない.成人期には組織が肥大して結節状に腫瘤を形成する.色素レーザーが治療として広く用いられているが,年齢とともに有効率が低下することから0歳代からの照射が望ましいとされる10).毛細血管奇形に対するレーザー治療は保険適応が認められている.40代女性の左上眼瞼の結節に対し,色素レーザーをパルス幅10 msec,出力11 J/cm2で数ヶ月に1回照射し,合計8回治療を行いやや腫瘤の縮小を認めている(Fig.6a, b).

Fig.6 

(a) Capillary malformation of the upper left eyelid before dye laser irradiation

(b) Tumor shrinks slightly after 8 times irradiation of dye laser

8.  太田母斑

アジア人に多くみられる顔面の片側三叉神経の第1,2枝範囲に褐青色斑が生じる疾患で,出生時から1歳までに発症するタイプと思春期頃に発症するタイプの二峰性を示す.自然消退はなく,ルビーレーザーの治療が適応となる.小児期の治療の方が成人に較べ治療回数が少ないため,小児の太田母斑は早期治療開始することが望ましい11).太田母斑に対するレーザー治療は保険適応が認められている.60代女性の左頬部の青色斑に対し,Q-ALXをスポット径3 mm,エネルギー密度5.0 J/cm2を3~4ヶ月に1回照射し,合計4回治療を行い色調の改善が得られた(Fig.7a, b).

Fig.7 

(a) Ota nevus on the left cheek before Q-ALX irradiation

(b) Blue spots improved after 4 times irradiation of Q-ALX

9.  まとめ

皮膚病に対する光線医療は,難治性疾患の改善を可能とする局所治療であり,さらにレーザー治療は外見の改善とともに心理的治療効果が大きい.光線医療は多くの皮膚病患者に恩恵をもたらしていると考えられる.

謝辞

Fig.57の写真を提供していただいた高知大学医学部皮膚科レーザー外来の木戸一成先生に深謝いたします.

利益相反の開示

開示すべき利益相反なし.

引用文献
 
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