The Journal of Japan Society for Laser Surgery and Medicine
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REVIEW ARTICLE
Adverse Reactions of Photoimmunotherapy
Takuma Makino
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2024 Volume 45 Issue 2 Pages 89-95

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Abstract

光免疫療法は既存の治療である手術,化学療法,放射線治療とは異なる治療であり,治療による有害事象もまた異なる.有害事象としては疼痛,光線過敏症,近接臓器への影響,出血,気道浮腫が挙げられる.有害事象によって患者が本治療を断念することは残念であり,効果が期待される本治療がさらに発展・普及していくためにも,より良い有害事象の管理を行うことは重要である.

Translated Abstract

Photoimmunotherapy is a new cancer treatment that is distinct from surgery, chemotherapy, and radiation therapy, with adverse events that differ from those of other treatments. The adverse events of photoimmunotherapy include pain, photosensitivity, effects on nearby organs, bleeding, and airway edema. It is regrettable that patients refuse to undergo photoimmunotherapy because of these adverse events, despite its potential beneficial effects. Addressing these adverse events is important in order to promote the provision of photoimmunotherapy.

1.  はじめに

光免疫療法は米国National Institutes of Health(NIH)の小林らが開発した新しい機序の癌治療である1,2).本邦では光免疫療法は2021年1月より世界に先駆けて「頭頸部アルミノックス治療」という呼称で「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部癌」に対して保険適用となり約3年が経過した.

本治療は(1)アキャルックス®の点滴静注,(2)アキャルックス®が結合した腫瘍細胞へのBioBlade®レーザシステムによる波長690 nmのレーザ光照射の2段階を必要とし,既存の治療である手術,化学療法,放射線治療とは異なる治療であり,治療による有害事象もまた異なる.

本稿では本治療特有の有害事象と対策について,自験例をふまえて報告する.

2.  頭頸部アルミノックス治療の有害事象

当科では15例28サイクルに対して頭頸部アルミノックス治療を施行している(Table 1).

Table 1 

自験例

性別 年代 部位 組織型 Cycle 1 Cycle 2 Cycle 3 Cycle 4
F 70 上顎洞上壁 扁平上皮癌 FD FD
M 60 耳下腺 唾液腺導管癌 CD FD CD + FD CD + FD
M 80 舌根(原発:舌) 扁平上皮癌 CD 気 CD 気 CD 気
M 80 上顎洞前壁 扁平上皮癌 CD CD
M 70 舌根(原発:下咽頭) 扁平上皮癌 CD 気 CD 気
M 70 舌根(原発:下咽頭) 扁平上皮癌 CD 永 CD 永
M 60 左篩骨洞 扁平上皮癌 CD
M 60 下咽頭 扁平上皮癌 FD 気 FD 気 FD 気 FD 気
M 70 舌根(原発:下咽頭) 扁平上皮癌 CD 永 CD 永
M 60 喉頭 扁平上皮癌 CD 気
F 80 上咽頭 扁平上皮癌 CD
M 70 舌根(原発:中咽頭) 扁平上皮癌 CD 気
F 70 頬粘膜(原発:上歯肉) 扁平上皮癌 CD
M 80 舌根(原発:中咽頭) 扁平上皮癌 CD + FD 気
M 70 中咽頭側壁 扁平上皮癌 FD 永

FD:フロンタルディフューザーで治療 CD:シリンドリカルディフューザーで治療

気:気管切開術を施行 永:施術時に永久気管孔がすでにある

症例によって異なるが,治療反応は照射直後から生じ,症例によっては病変部の治療反応に起因する激しい疼痛が起こるため,レーザ照射は原則として全身麻酔下に行う(①疼痛).術後に鎮静管理を必要とするほどの強い疼痛を伴う症例も経験される.また,EGFRは腫瘍以外に皮膚等にも広く発現しており,波長690 nmの光は太陽光にも含まれているため,アキャルックス®投与後原則4週間は直射日光を避ける必要がある(②光過敏症).標的とする周囲へも影響が出る場合もあり,症例により異なるが治療反応として腫瘍周囲まで壊死が進行する症例もある(③近接臓器への影響).そのため,血管への腫瘍浸潤が認められるような場合は血管の破綻をきたす可能性があるため,禁忌となっている(④出血).また,治療による周囲組織の急激な浮腫性腫脹を来す症例も存在するため,気道への影響が懸念される症例では適切な気道管理が必要である(⑤気道浮腫).

以上の①疼痛,②光過敏症,③近接臓器への影響,④出血,⑤気道浮腫に対する対策について解説する.

①  疼痛

本治療ではレーザ光照射直後に,肉眼的に見ても治療反応がわかるほどの急速な治療反応が生じ,それと同時に疼痛が生じる.疼痛の程度は症例ごとに違い,強いものでは鎮静が必要な場合もあり,Cognettiらによる本治療の第I/IIa相試験の報告ではGrade 3以上の疼痛としてOral painが6.7%,Tumor painが6.7%で認められている3).当科で治療した28サイクルでは全サイクルにおいて,疼痛の程度に違いはあるものの,疼痛に対して加療を要した.そのため全例において,疼痛管理をしっかりと行う必要があると考える.当科では施術の際には術後経静脈的自己調節鎮痛法(IV-PCA)を術後2日目まで行い,その後は一般的な内服鎮痛薬を用いている.経験上ではあるが,おおむね術後2日目頃には疼痛が和らいでくる印象である.また,当科では初回施術の際には原則集中治療室(ICU)で鎮静を行って管理をしている.初回の疼痛が軽度であれば,2回目以降の施術では施術後に直接一般病棟に帰棟することもある.学会発表ではあるが,辻川らは照射部位周囲への局所麻酔薬注射が疼痛管理に奏効すると発表している4)

②  光線過敏症

添付文章上は投与後4週間,光暴露は禁止となっている.当初は対象患者の室内を100ルクスまでにするという照度の制限があったが,最近では厳密な数値上の制限はなくなっている.当院においては直射日光が入らないようにしたうえで,可能であれば個室での管理を行っている.ただ病棟管理の都合上個室が確保できない場合は大部屋で管理することもある.その場合は窓際ではないベッドを用いている.外出時は帽子,サングラス,スカーフ等首を覆えるもの,手袋,長袖,長ズボンといった全身皮膚が日光に暴露しないような服装をすることが必要である.また,施術7日目に光暴露テストを行っている.このテストにおいて日光による皮膚の変化が確認されなかったとしても,念のため光暴露は1ヶ月控えるよう説明している.当科で施行した28サイクルで毎回テストを行っているが,いずれも陰性であった.

③  近接臓器への影響

重要臓器へ近接する部位で本治療を行う際には,その重要臓器への影響がないかよく検討する必要がある.例えば頭蓋底近くの病変であれば頭蓋内へ,鼻腔内の病変であれば視機能への影響が危惧される.ただ,治療に伴い,やむを得ず隣接重要部位に照射範囲が含まれてしまう場合がほとんどである.残念ながら今のところは隣接部位に対してレーザ光を遮断することはできないため,他の治療と同様に,治療により生じ得る合併症について患者によく説明し,理解を得ることが重要である.

また治療の標的となる周辺の粘膜への不要なレーザ光の照射を防ぐことは,標的部位以外の疼痛や浮腫を防ぐ観点からも必要である.ガーゼや手術用手袋,覆布等を用いて標的以外の部位を覆い,レーザ光を遮断するよう心掛ける.濡れガーゼよりも乾いたガーゼの方がより遮光効果は高いため,ガーゼを用いる場合は乾いたガーゼを用いることが推奨されている.

当科で行った上顎洞上壁例を提示する.

症例:70代女性 右上顎洞癌再発

現病歴:約10年前に右上顎洞癌cT3N2bM0に対して動注化学放射線療法後に右上顎亜全摘出術及び右頸部郭清術を施行し,術後放射線治療を施行した.約2年前に局所再発を来し右上顎部分切除術を施行,その翌年に再度局所再発を来し,上口唇・頬粘膜部分切除を行い,以後S1の内服を行っていた.今回上顎洞上壁に再発をきたし頭頸部アルミノックス治療を行うことを目的に当科へ紹介され受診された.

既往歴:右側下顎歯肉癌(右下顎区域切除術および再建術を施行)

現症:口腔内は複数回の手術により変形し,鼻腔との交通を認める.口腔内から右上顎洞上壁の観察は可能であり,同部に易出血性の不整粘膜を認めた(Fig.1).

Fig.1 

Irregular mucosa on the upper wall of the maxillary sinus.

副鼻腔単純CT:右上顎洞上壁に軟部影を認める.眼窩下壁骨は一部で欠損している(Fig.2).

Fig.2 

CT; Bone of the infraorbital wall is partially missing.

副鼻腔造影MRI:右上顎洞上壁に造影効果を伴う腫瘍を認めた(Fig.3).

Fig.3 

Contrast MRI; Thin carcinoma on the upper wall of the right maxillary sinus.

治療:頭頸部アルミノックス治療を2サイクル施行した.1サイクル目はフロンタルディフューザーで1回照射,2サイクル目はフロンタルディフューザーで3回照射を行った.

本例の考察:眼窩内と近接しており,一部では眼窩下壁の骨欠損があるため,最悪の場合,治療により失明に至るような視機能への影響がでる可能性も懸念された.施術施行後約2年半が経過しているが,結果としては視力をはじめとして眼球運動等にも影響は全く出ていない.眼窩に近接していても眼窩内への影響はあまりないことを示した1例といえるのではないかと考える.

④  出血

頸動脈へ接している病変では,頸動脈破裂をきたす可能性があるため禁忌である.また,ほかの大血管に接している場合や血流が豊富な腫瘍の場合は同じく出血のリスクがあるため,術前に血管塞栓や結紮ができる場合は本治療前に施行しておくことが必要である.

当科で行った篩骨洞癌例及び上咽頭癌例を提示する.

症例:70代男性 左篩骨洞癌再発

現病歴:左篩骨洞癌cT4aN0M0に対してシスプラチン併用の陽子線治療を施行した.その後再発を来し,化学療法を施行したが奏功しないため,眼球摘出を伴う前頭蓋底手術を施行された.その後,再度局所再発を来し,再度化学療法を施行するも奏功しないため,頭頸部アルミノックス治療を目的に当科を紹介され受診された.

既往歴:特になし

現症:左前頭部に巨大な腫瘤を認める(Fig.4).

Fig.4 

Large swelling in the left frontal region.

副鼻腔造影CT:血流豊富な巨大腫瘤を認める(Fig.5).

Fig.5 

Contrast CT: Giant masses with high blood flow.

治療:腫瘤の血流が豊富であり,穿刺時の出血が懸念されるため,術当日つまりはアキャルックス®を投与した翌日に血管塞栓術を施行することとなった.腫瘍の栄養血管となっていた顔面動脈を塞栓し腫瘍内の血流が遮断できたことを確認してから,シリンドリカルディフューザー合計29本でのレーザ光照射を行った(Fig.6).術中の総出血量は10 ml程度であった.本治療後の経過中も腫瘍の壊死に伴う出血は認められなかった.

Fig.6 

Photoimmunotherapy for ethmoid sinus cancer

本例の考察:本例のような血流豊富な腫瘍や,血管に近接しているような腫瘍の場合は事前に血管塞栓術を行うことで安全に本治療を進めることができるのではないかと考えられる.薬剤の腫瘍内への分布を考慮すると,アキャルックスを投与した後に,できれば本例のように施術直前に血管塞栓術を行うことが望ましいのではないかと考えられる.

症例:80代女性

現病歴:上咽頭癌cT2N0M0に対して放射線治療を施行された.その後,局所再発を来しS1内服を行ったが奏功せず,頭頸部アルミノックス治療を行うことを目的に当科を紹介され受診された.

既往歴:乳癌(内分泌療法を施行)

現症:上咽頭後壁に再発腫瘤を認める(Fig.7).

Fig.7 

Recurrent cancer in the posterior wall of the nasopharynx.

頸部造影MRI:上咽頭後壁に腫瘤を認める.内頸動脈との距離は十分に保たれている(Fig.8).

Fig.8 

Contrast MRI: Tumors on the posterior wall of the nasopharynx are well away from the internal carotid artery.

治療:上咽頭再発腫瘍に対して頭頸部アルミノックス治療を行った.シリンドリカルディフューザー4本で照射を行った(Fig.9).治療後CRとなったが,上咽頭後壁の創傷治癒遅延が生じた(Fig.10).施術半年後には同部からの出血を来した.血管造影では外頸動脈の枝からの出血であったため,塞栓術を施行し止血を得た.しかし,その1週間後に再出血を来した.その際の出血はおそらく内頸動脈からの出血であり,救命措置は奏功せず逝去された.

Fig.9 

Photoimmunotherapy for nasopharyngeal carcinoma

Fig.10 

Six months after Photoimmunotherapy

本例の考察:上咽頭癌の局所再発は解剖学的に深部に位置することから手術が難しく,また上咽頭癌は放射線治療への反応が良いことから,放射線治療の再照射を選択されることもある.再照射例での合併症として頸動脈破裂は8.4%程度で生じると山崎ら5)は報告してる.

頭頸部アルミノックス治療は手術ほどの侵襲を与えることなく再発病変への治療を行えるという観点では再発上咽頭癌に対する治療の一手として非常に有用であると考えられる.しかし,本治療は現時点では標準的な治療を行った後,つまりは放射線治療(もしくは化学放射線療法)後に行われることから,治療の標的部位が放射線治療の照射野内であることがほとんどであり,治療部位の創傷治癒が遅いことをよく経験する.本例も施術後,半年近く治療部位の上皮化が進まなかった.創傷治癒遅延に伴って,周囲への感染,壊死のひろがりを起こし内頸動脈破裂をきたしたものと考えられる.通常の放射線化学療法や再発時の再照射例でも頸動脈破裂は起き得るとはいえ,本治療において年齢や照射方法,腫瘍部位等,本合併症を招く因子を究明していくことは肝要であり,それは今後の本治療の発展にもつながるものと考える.

⑤  気道浮腫

治療部位によっては気道浮腫を生じるため注意を要する.経験上,通常の炎症による気道浮腫とは異なり,ステロイドの投与があまり奏功せず,施術後2日ほどで自然と軽快する場合がほとんどである.そのため気管切開術や経口気管内挿管を術後数日留置するといった気道管理が必要である.当科では中咽頭,下咽頭,喉頭,口腔の舌根付近に対する治療を行う際には,気管切開術を行うようにしている.当科での28サイクル中,上記の中咽頭,下咽頭,喉頭,口腔の舌根付近へ本治療を行ったものが18サイクルであり,そのうち気管切開術を行ったものが12サイクル,もともと永久気管孔であったものが6サイクルであった.気管切開術未施行もしくは永久気管孔を有していない症例で気道緊急となった症例は認めないことから,当科での気道管理を行う症例選択は妥当なものと考えている.また,上咽頭に対する施術の際に,術後に経口挿管留置を継続して経過観察を行った.本例に関しては術翌日に気道浮腫がないことを確認して抜管とした.本治療後の浮腫が軽快後に再燃することは考えにくいことから,経口気管内挿管留置に関しては,術翌日もしくは数日後に気道浮腫がないことを確認して抜管すれば問題ないと考える.

しかし,Okamotoら6)やKushihashiら7)の報告のように,下顎歯肉や上咽頭といった上記部位以外でも気道緊急となり緊急気管切開術を要した報告もあることから,本治療にはまだ不詳な部分も残っており,どのような症例でも注意が必要であることを追記しておく.

当科で行った再発下咽頭癌例を提示する.

症例:60代男性 下咽頭癌再発

現病歴:下咽頭癌cT2N0M0に対して放射線治療を施行された.その後下咽頭表在癌に対して複数回の内視鏡下粘膜切除術を施行された.ESDでは切除不能な再発下咽頭癌を認めたため,治療目的に当科を紹介され受診された.

既往歴:食道表在癌

現症:下咽頭左梨状窩に再発腫瘤を認める(Fig.11).

Fig.11 

Recurrent cancer in the nasopharyngeal carcinoma

頸部造影MRI及びPET:左梨状窩に腫瘍を認め,PETでも同部に集積を認める(Fig.12).

Fig.12 

Contrast-enhanced MRI and PET

治療:咽頭喉頭全摘出術も検討したが,患者の喉頭温存への強い希望と,本治療により喉頭摘出となるリスクの十分な理解を得たことにより頭頸部アルミノックス治療を施行することとなった.治療は気管切開術を併施しフロンタルディフューザーで施行した.照射翌日は高度の喉頭浮腫を認めたが,術後2日目には軽減した(Fig.13).

Fig.13 

1 day after Photoimmunotherapy

本例の考察:下咽頭で本治療を施行すると,予期した通り喉頭浮腫が生じた.治療後数日で速やかに喉頭浮腫の軽減を認め,いわゆる感染等の炎症で生じる喉頭浮腫とはやや違うものではないかと考えられる.その他の経験例でも同様の経過をとり,喉頭浮腫が遷延するような例の経験はないため,前述の通り施術時に気管切開術や経口気管内挿管留置といった気道管理を行えば大きな問題となることはないと考えられる.

3.  まとめ

光免疫療法の有害事象対策について自験例をふまえて解説した.言うまでもなく,有害事象への対策は本治療のみならずどんな治療を行う上でも重要である.本治療は一度で治療を完遂せずとも,治療を複数回繰り返し行えることもメリットだが,有害事象を適切に管理できなければ複数回の治療を行うことは困難となる.効果が期待される本治療がさらに発展・普及していくためにも,より良い有害事象の管理を行うことは重要である.

利益相反の開示

著者は,「楽天メディカル株式会社」より,講演料を受理している.

引用文献
 
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