The Journal of Japan Society for Laser Surgery and Medicine
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REVIEW ARTICLE
Lymphangiography by Photoacoustic Imaging
Yushi Suzuki
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2025 Volume 45 Issue 4 Pages 388-397

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Abstract

光音響イメージング(photoacoustic imaging: PAI)は,光音響効果を利用して体内の微細構造を画像化する技術である.特に,リンパ管の描出においてPAIは従来のイメージング手法よりも優れた性能を発揮する.本稿では,PAIの原理,臨床的意義,ならびにリンパ管の描出に関する既存の報告を概説する.PAIは,リンパ浮腫の診断や治療計画において有用であり,今後の装置改良によってさらに広範囲の臨床応用が期待される.

Translated Abstract

Photoacoustic imaging (PAI) utilizes the photoacoustic effect to visualize fine internal structures. Particularly in lymphatic vessel imaging, PAI demonstrates superior performance compared to traditional imaging methods. This paper outlines the principles of PAI, its clinical significance, and existing reports on lymphatic vessel imaging. PAI is beneficial for diagnosing and planning the treatment of lymphedema, and future device improvements are expected to expand its clinical applications further.

1.  はじめに

光音響効果は1880年から報告されている現象である1).光音響イメージング(または光超音波イメージング,photoacoustic imaging:PAI)は,パルス光を対象物に繰り返し照射し,対象物の体積が熱膨張によって変化する際に発生する微弱な超音波を検出することで,対象物の画像を取得する技術である.近年,この技術を応用した医用画像システムが開発されている.PAIは,従来の画像診断に比べれば歴史の浅いモダリティであるが,微細な血管やリンパ管を明瞭に描出することができるため,特定臨床研究のもと,すでに形成外科手術に応用されている2-5)

本稿では,この新しいモダリティを用いたリンパ管の描出について解説する.

2.  リンパ管描出の意義

はじめにPAIでリンパ管を描出する臨床的意義について記載する.

リンパ系は全身の老廃物・異物を含む間質液をリンパ液として回収してリンパ節へ送達する機能を有することから,免疫系の一部として重要な役割を担う.特に形成外科領域ではリンパ浮腫の外科的加療を行っているため,リンパ浮腫の診断や外科的加療を行う際に,画像診断でリンパ管の走行を把握することは必要不可欠である.しかし,リンパ管は非常に細くまた無色透明であるため,肉眼的に観察することは非常に困難である.既存のイメージング手法として,リンパシンチグラフィーや近赤外蛍光リンパ管造影法(NIRF)などがある.いずれも造影剤を用いることでリンパ管の画像が得られるが,描出されるのはリンパ管のみである.リンパシンチグラフィーでは全身のリンパ流の全体像を把握することはできるが,リンパ管の走行を大まかにしか捉えることができない.NIRFではリアルタイムに局所のリンパ流を認識できる一方で,リンパ管を2次元的にしか捉えることができない.一方,PAIではリンパ管と静脈を同時にかつ3次元的に描出することができる.

この特長は,リンパ管と静脈をバイパスすることで,リンパ浮腫を改善させるリンパ管細静脈吻合(lymphaticovenular anastomosis: LVA)に有用である.術前にリンパ管と静脈の立体的な位置関係を把握しておくことで,それぞれを確実にかつ容易に同定できるからである.

3.  光超音波イメージングを利用したリンパ管描出の原理と既存の報告

ここで,PAIの原理について述べる.パルス光を撮像対象物に照射すると,対象物は光の波長に応じてエネルギーを吸収し,熱エネルギーに変換する.この過程での温度上昇は物体の熱膨張を引き起こす.この膨張により生じた微弱な光音響波を体外の超音波センサーで検出して画像を構築することができる.

ヘモグロビンを対象にすれば,造影剤を使用せずに血管を描出することができる.しかし,リンパ管は無色透明であることから,PAIで描出するためにはリンパ管内に光吸収体を導入する必要がある.動物実験では造影剤としてメチレンブルーなどが使用されているが,ヒトに投与する場合は,ジアグノグリーン(ICG,第一三共)を用いる報告が散見される.

ICGはNIRFで使用されている試薬と共通であるため,NIRFと併用してPAIを実施することが可能である.

PAIシステムは,毛細血管やリンパ節などの観察に主に動物実験で利用されている6-10).いくつかのPAI装置は,すでに一部の国で臨床使用が承認されている.未だ一般的ではないが,臨床でのリンパ管の描出については,今までにマルチスペクトル光音響トモグラフィ(MSOT, iThera Medical GmbH)や超音波とPAIを組み合わせたAcoustic X(Cyberdyne Inc.),そしてPAI-05(Canon, Inc., Hitachi, Ltd., and Japan Probe Co., Ltd.)を用いたものが知られている.このうち,MSOTはLVAの術前評価に使用されている6).我々のグループでは,PAI-05をLVAの術前・術後に使用して報告してきた2,4,5)(Table 1).

Table 1 

光超音波を用いてリンパ管描出が可能な装置の比較

MSOT Acoustic X PAI-05
長所 ハンドヘルド型であり,任意の部位の撮影が容易 超音波画像に脈管の情報を付加できる. 広範囲で(270 × 180 mm)撮影ができる.
0.2 mmの解像度で脈管を描出できる.
短所 撮影範囲が狭い
解像度に劣る
撮影範囲が狭い
解像度に劣る
撮影困難な部位がある.

MSOTとAcoustic Xは,検査者が任意の場所を観察できるハンドヘルド装置である.

MSOTは皮膚表面から1~2 cm下の脈管を描出し,立体的な画像を撮影できる.いくつかの異なる波長(700~875 nm)が選択可能であり,リンパ管と血管に適した2つの波長の光を用いれば,それぞれ光音響波の強さの違いを比較することで,リンパ管と血管を区別することができる.ハンドヘルド型の装置は取り扱いが簡便で,患者の姿勢に関する制限が少ない.ただし撮影範囲は狭く(15 × 15 mm),画質もいまだ改善の余地がある.

Acoustic Xは既存の超音波装置に光音響装置を組み合わせたものであり,見慣れた超音波画像に脈管の情報を付加することができる.また,光源にLight Emitted Diode(LED)を使用しているため,他の光音響装置と比較して小型,低価格化が可能と考えられている.超音波装置と同様に使用することができるが,7~10 Mhzの超音波画像であるため解像度は今後の発展が期待される.

一方,据え置き型の装置であるPAI-05は,ハンドヘルド装置よりも広い範囲(270 × 180 mm)を撮影することができる.キングサイズベッドの中に半球状に配置されたマルチチャネルのセンサがあり,このセンサが受信した光音響波を処理することで,撮影した部位の3次元的な立体構造を描出することができる.この際,一度に約2 cm四方の画像が取得できるが,撮影範囲でセンサーを走査させ,得られた画像を重ね合わせることで,上述の広範囲の画像を得ることができる.

その一方で,ベッド上のセンサーユニットに撮影部位が密着していないと描出ができないため,撮影が困難な部位が存在することが欠点である.

なお,PAI-05に改良を重ねた後継機である新しい機種が完成しており,より明瞭な画像が得られることが分かっている11).昨年には後継機と同等のスペックを有するLME-01が本邦で初めて光音響イメージング装置として薬事承認を受け,販売が開始されている(Fig.1).

Fig.1 

Appearance of the LME-01, the first photoacoustic imaging system to be accepted for pharmaceutical approval in Japan.

LME-01はレーザー血流計として保険収載を得ており,血管を評価する目的であれば保険診療の枠組みの中でPAIの撮像が可能である.ただしPAIによるリンパ管の撮影に関しては,リンパ浮腫の診断のためにICGを皮下注射する行為が未だ保険収載されていないことから,現状では特定臨床研究などの枠組みの中で行われる必要があるものと考えられる.

以下,本稿ではこのベッド型装置の臨床応用について具体的に述べる.

PAI-05は750~850 nmの任意の2波長を照射することが可能で,各波長で得られる光音響波の強度(画素値)の違いによって光吸収体を色分けすることができる.例えば,還元型ヘモグロビンと酸化型ヘモグロビンを区別する2つの波長を選択することで,造影剤を用いずに動脈と静脈を色分けすることが可能である12).リンパ管を描出する際はICGにより吸光度が大きい797 nmの波長と,吸光度が小さい835 nmの波長とで画素値を比較することで,リンパ管と血管を色分けできる(Fig.2).今回用いた波長では動静脈の色分けは難しいが,描出される血管の多くは,その走行の解剖学的特徴より静脈を描出していると考えられる.

Fig.2 

Principle of color separation between lymphatic vessels and veins (Reprinted with permission from Suzuki Y, Kajita H, Konishi N et al. Radiology 2020; 295(2): 469-474)

a. This graph shows relationship of wavelength and molar extinction of the object. Blood and lymph vessels are distinct by the differences in the molar extinction between indocyanine green (ICG) and hemoglobin (Hb). HbO2: oxyhemoglobin.

b. Image of a 53-year-old female healthy volunteer. Left, Lymphatic vessels are more prominently visualized at 797 nm, allowing differentiation from blood vessels. Right, By comparing the difference of the figure one can separate and colorize lymphatic and blood vessels. The yellow coloration signifies lymphatics, whereas the blue coloration signifies the vein.

4.  光音響イメージングで見るリンパ管

4.1  健常者のリンパ管

まず,健常者におけるリンパ管がどのように見えるのかについて解説する.

ICGを皮下に注射すると,自然と皮下のリンパ管に取り込まれる.ICGを注射する部位によって描出されるリンパ管は異なる13)が,我々は通常,下肢であれば主に第一趾間,第四趾間,外果に注射を行い,上肢であれば第一指間,第四指間,手関節付近の長掌筋腱上に注射している.既存のリンパ管描出法であるNIRFでも,多数のリンパ管が確認できる.同一部位をPAIで撮影すると,より詳細かつ明瞭にリンパ管が確認できる(Fig.3).

Fig.3 

Images of a 56-year-old healthy female. (Reprinted with permission from Suzuki Y, Kajita H, Oh A, et al. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord, 2022; 10(1): 125-130. and Suzuki Y, Kajita H, Watanabe S et al. J Reconstr Microsurg. 2022; 38: 254-62)

a. Near-infrared fluorescent lymphangiography of the medial side of the right lower leg.

b. Photoacoustic lymphangiography of only the lymphatic vessels.

c. Photoacoustic lymphangiography of the lymphatics and veins.

また3次元画像であるため,短軸像を作成すれば皮膚表面からのリンパ管が走行する深さを確認することも可能である14)(Fig.4).理論上では体表から2 cm程度の深さの脈管を検出できるが,四肢の筋膜は厚く超音波の障害となってしまうため,筋膜下のリンパ管は観察できない.ただし,リンパ浮腫の際に観察を行うリンパ管は筋膜より浅い皮下組織内に存在するため,リンパ浮腫のうちLVAの術前計画や術後評価を目的とするには十分な深さでリンパ管を評価可能である.また,集合リンパ管は通常0.3 mm程度の太さであり,0.2 mmの解像度で観察することができるPAIは十分な分解能を所有している.

Fig.4 

A 21-year-old volunteer. The lymphatic vessels and the vein are depicted. (Reprinted with permission from Suzuki Y, Kajita H, Urano M, et al. Lasers Surg Med. 2023; 55(2): 164-168.)

a. Medial side of the lower leg

b. Cross-sectional view of the medial malleolus

c. 10 cm above the medial malleolus

d. 20 cm above the medial malleolus

なお黒色の体毛は光をよく吸収し強い光音響信号を生じて画像を損なうため,特に男性では撮影前に剃毛を行う方が望ましい.剃毛後に残る皮内の毛根もアーチファクトとなるため,体表面を検出するアルゴリズムを用いて15)皮膚表面の影響を低減し,皮下のリンパ管を描出しやすくしている.

4.2  リンパ浮腫患者のリンパ管

リンパ浮腫患者は先天的なリンパ管の低形成や後天的にリンパ流を障害される(がん手術時のリンパ節郭清や,放射線治療,外傷など)ことにより,リンパ流のうっ滞を生じている.このリンパ液のうっ滞が,皮下への脂肪沈着や皮膚の線維化を生じる.リンパ浮腫が進行すると蜂窩織炎をはじめとした感染症をきたしやすくなり,患者のQOLを大きく低下させる.未だリンパ浮腫を完治させることは叶わないが,発症早期のうちにリンパ浮腫を診断することができれば,重症化を抑えられるため,リンパ管がリンパ浮腫の重症度とともにどのように変化していくか評価することは重要である.

リンパ液は皮下の集合リンパ管で中枢に運ばれるが,リンパ浮腫ではうっ滞により中枢方向への還流が障害され,皮内~皮下の前集合リンパ管に逆流したり,リンパ管外の周囲組織に漏出したりする.これをdermal backflowと呼ぶ.リンパ浮腫が進行するとともに,dermal backflowの画像所見は変化していく.NIRFで見られるdermal backflowの画像所見の分類としてICG分類16)がある.リンパ管が障害されていない場合は,集合リンパ管が明瞭に描出され,これをlinear patternと呼ぶ.リンパ浮腫が進行してくると真皮への逆流現象であるdermal backflowが生じ,リンパ管機能が徐々に低下してくる.Dermal backflowの程度に応じ画像もsplash pattern,stardust pattern,diffuse patternと段階的に変化してくるため,画像所見によってリンパ管機能が推察できる.PAIでも同様にリンパ浮腫の進行とともにリンパ管の描出のされ方が変化していくことが明らかになった.我々はPAIとICG分類を比較し,リンパ管の画像所見を5種類のパターンに分類した17,18)

1.  Straight pattern

このパターンは正常なリンパ機能を反映していると考えられる.健常者と同様にリンパ管は中枢方向に向かって走行している.このパターンはNIRFでlinear patternと呼ばれる所見に対応する.PAIでもNIRFと同様にリンパ管が真っ直ぐと上行していく様子が描出され,正常な集合リンパ管を示していると推察される(Fig.5).

Fig.5 

(Reprinted with permission from Suzuki Y, Kajita H, Oh A, et al. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2022; 10(2): 454-462)

A 47-year-old woman with secondary lymphedema, International Society of Lymphology stage 1

a. A linear pattern is observed on near-infrared fluorescent lymphography.

b. A straight pattern is observed in photoacoustic lymphography, which is similar to that observed in healthy individuals. The lymphatic function is preserved. Lymphatics: yellow, Veins: blue

c. Photoacoustic lymphangiography of only the lymphatic vessels

2.  Winding pattern

この状態のリンパ管は軽度のうっ滞を生じていると考えられる.この所見を示す集合リンパ管は,曲がりくねりながら走行している.これは,リンパのうっ滞による初期のリンパ管変性を示している可能性がある.この際にNIRFはlinear patternないしはsplash patternを呈しており,健康な人でも時折winding patternは観察される(Fig.6).

Fig.6 

A. 75-year-old woman with secondary lymphedema, International Society of Lymphology stage 2 (Reprinted with permission from Suzuki Y, Kajita H, Oh A, et al. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2022; 10(2): 454-462)

a. Linear and splash patterns are observed on near-infrared fluorescent lymphography.

b. A winding pattern is observed on photoacoustic lymphography.

c. Photoacoustic lymphangiography of only the lymphatic vessels.

d. Closer view from Figure6a. Each structure can be seen more clearly.

e. Expanded view of the white square in Figure6c. Lymphatic vessels running in an S shape can be observed more clearly. Scale bar shows 1 cm.

3.  Spiderweb pattern

リンパ浮腫の患部をNIRFで観察すると,先述したdermal backflowと呼ばれる皮膚へのリンパ液逆流所見が見られ,その様相はsplash patternやdiffuse patternなどに分類される.Dermal backflowのうち,間質への滲出ではなく,前集合リンパ管への逆流を示す強いシグナルをPAIではspiderweb patternと呼ぶ.時折,集合リンパ管から前集合リンパ管へまさに逆流しているポイントを同定することができる(Fig.7).

Fig.7 

A 75-year-old woman with secondary lymphedema, International Society of Lymphology stage 2 (Reprinted with permission from Suzuki Y, Kajita H, Oh A, et al. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2022; 10(2): 454-462)

a. A linear pattern is observed on the distal side and a diffuse pattern on the proximal side on near-infrared fluorescent lymphography

b. A spiderweb pattern is observed on the proximal side, similar to the diffuse pattern shown in Figure7a

c. Photoacoustic lymphangiography of only the lymphatic vessels

d. Cross-sectional view of collective lymphatic vessels observed under dermal backflow as depicted in the red squares in Figure7b. Regurgitation to pre-collector and lymphatic capillaries is observed.

4.  Nebulous pattern

Nebulous patternは,リンパ浮腫がさらに進行し,PAIにおいてぼんやりとした構造が見える所見である.このような条件下では,NIRFはstardust patternやdiffuse patternが見られる.Nebulous patternは集合リンパ管や前集合リンパ管ではなく,毛細リンパ管内のICGないしは間質に漏出しているICGを描出していると考えられる(Fig.8).

Fig.8 

A 72-year-old woman with secondary lymphedema, International Society of Lymphology late stage 2 (Reprinted with permission from Suzuki Y, Kajita H, Oh A, et al. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2022; 10(2): 454-462)

a. A diffuse pattern covering the entire leg is observed on near-infrared fluorescent lymphography.

b. No collective lymphatic vessels are observed.

c. Photoacoustic lymphangiography of only the lymphatic vessels.

d. Subtle lymphatic capillaries are observed upon magnification of the image.

5.  Blackout pattern

リンパ浮腫がさらに進行すると,リンパ管は変性し,輸送能が低下する.PAIでリンパ管を描出するためにはICGが必要であるが,リンパ浮腫が進行してリンパ管機能が低下すると,ICGがリンパ管へ取り込まれず,リンパ管が描出できなくなる.つまり,他のモダリティで集合リンパ管が観察できないほどの進行例では,PAIでもリンパ管の存在を確認することはできない(Fig.9).

Fig.9 

A 77-year-old woman with secondary lymphedema, International Society of Lymphology late stage 2 (Reprinted with permission from Suzuki Y, Kajita H, Oh A, et al. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2022; 10(2): 454-462)

a. Neither lymphatics nor dermal backflow are observed in the lower extremity.

b. No lymphatics are observed except for the injection area.

c. Photoacoustic lymphangiography of only the lymphatic vessels.

4.3  リンパ液の流れ

前述の通り,PAI-05ではセンサーを固定し同一部位の画像を取得し続けることで動画を撮影できる.リンパ液は常に流れ続けているわけではなく,リンパ管の間欠的な平滑筋収縮によって断続的に流れる.リンパ管の収縮運動はlymphatic pumpと呼ばれる.PAIを用いれば,リンパ管が収縮しリンパ液が流れる瞬間をリアルタイムに観察できる(Fig.1019)

Fig.10 

A 62-year-old woman with primary lymphedema. (Reprinted with permission from Suzuki Y, Kajita H, Imanishi N, et al. . Plast Reconstr Surg Glob Open. 2020; 8(6): e2914.)

Continuous photograph of the lymphatic flow of photoacoustic lymphangiography. The lymph does not flow always but streams every few minutes.

リンパ浮腫の複合的理学療法として,圧迫や運動によってリンパ液の流れを促進させることがあるが,PAIを用いれば,実際の運動時にリンパの流れが増加する様子を直接確認することもできる(現在査読中).

すなわち,今まではリンパ管が見えないためにエビデンスの構築が困難であった部分が,PAIにより可視化されることで,科学的に明らかになる可能性がある.

4.4  LVAへの応用

今まで記載したとおり,PAI-05ではリンパ管と血管を同時に描出することができる.リンパ浮腫の外科的治療として広く行われているLVAはリンパ浮腫においてうっ滞したリンパ液を,リンパ管と静脈をバイパスすることで還流させる手技である.吻合の対象となるリンパ管と静脈はそれぞれ1 mm以下の脈管であるため,高度な吻合技術が必要であるのはもちろん,リンパ管の形態パターンを認識し静脈の3次元構造およびリンパ管との相互関係を把握する事が良い結果を得るために必要である.LVA術前にPAIを行ったところ,リンパ管と静脈の走行は顕微鏡下での観察と一致しており,リンパ管と静脈の位置関係があらかじめ把握できることが確認できた(Fig.11).PAIを用いることで,スムーズに脈管が同定できれば,LVAの手術時間を短縮したり,より多くの吻合を遂行したりできる可能性がある.

Fig.11 

Images of a 77-year-old female patient with secondary lymphedema due to cervical cancer. (Suzuki Y, Kajita H, Watanabe S, et al. J Reconstr Microsurg. 2022; 38: 254-62.)

a. Preoperative mapping by photoacoustic lymphangiography of only the lymphatic vessels.

b. Preoperative mapping by photoacoustic lymphangiography of the lymphatics and veins.

c. Magnified image of the anastomosis site.

d. Lymphatic vessel anastomosed later was named as L1 and vein as V1.

e. Intraoperative finding. The same bifurcated vein depicted in figure6d was identified.

f. Referring to preoperative picture, identification of the lymphatic vessel and venule was easily performed. Thus, good lymphaticovenular anastomosis was achieved.

5.  今後の展望

PAIは既存の手法と比較してリンパ管をより鮮明に描出することができるため,リンパ管の走行や変性の手がかりを詳細に捉えることができる可能性がある.現時点では,同一の造影剤を使用しているため,NIRFとPAIを併用して比較研究しているが,将来はPAI単独の診断が確立される可能性がある.

しかし,現在の装置は撮影装置が大きく敷地面積の限られる病院内には設置が難しい.また撮影部位とセンサの間に空気を含まないよう,撮影部位を水槽やウォーターバックなどに乗せて接触させる必要があり,撮影が難しい部位がある.具体的には,足関節の可動域に制限のある患者では,足背や下腿前面の撮影が難しい.リンパ浮腫によって生じるdermal backflowは様々な部位に生じるほか,造影剤を注射する場所によってリンパ管が造影される経路も複数存在する13)ことから,診断装置としてはあらゆる部位を撮影できることが望ましい.

さらに,複数の画像を重ね合わせて広い範囲を撮影するという原理から,撮影部位の大きさに比例して撮影に時間がかかることも課題である.しかし,PAI-05では270 × 180 mmで10分ほどを要した撮影が,後継機では,5分に短縮しており,装置の接地面積も1/7程度に縮小している.

さらなる短縮と小型化が達成されれば,術中にリンパ管をリアルタイムに探索でき術野でのリンパ管の同定が容易になり,手術直後のリンパの流れを評価したりすることで,手術手技の評価や術後経過の予想ができる可能性も考えられる.また,高解像度の画像を生かし腫瘍のリンパ行性転移の予測やセンチネルリンパ節の研究に応用ができる可能性がある.

より優れた装置の開発に貢献できるよう,今後も知見を蓄積していきたい.

利益相反の開示

本研究の一部は日本医療研究開発機構(AMED)の支援により行われた.

引用文献
 
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