2025 Volume 46 Issue 1 Pages 13-20
レーザーを使用した歯科の審美治療は,レーザーの普及と共に一般にもよく知られるようになってきた.メラニン着色除去等,さまざまな処置にレーザーが使用されている.メラニン着色除去には認可を得ている全ての波長が使用されているが,波長の違いと共にピークパワーや発振形態が異なる為,個々のレーザー機器によってパラメーターや術式が異なることに注意が必要である.また,審美治療を行うにあたり,患者の要望を十分に聞き出すことが肝要である.
Esthetic dental treatment using lasers has become well known to the public as lasers have become more common in the dental office. The removal of melanin pigmentation is a typical example. All wavelengths are used for the removal of melanin pigmentation. However, It is important to note that the parameters and procedures differ depending on the individual laser device which has different peak power and emission modes. In addition, when performing aesthetic treatment, it is important to listen carefully to the patient’s wishes.
歯科治療は古くから機能回復と同時に見た目の回復もその目的とされてきた1)(Fig.1a~d).審美歯科治療は,時代とその地域に沿った違和感の少ない平均値に即した自然な見た目を指標とするが,患者の個人的な審美感は尊重されなければならない.その場合に機能の回復あるいは機能を損なわないことを前提としているのは言うまでも無い.しかしながら,古代から人類が答えを求めて来た審美には確たる定義は無く2),本当に美しい歯科審美治療が存在するわけでは無い.八重歯が可愛いと言われた時代があり,あるいは歯に金や宝石を装飾するのが一部の羨望の的であったりと,整った白い歯が美しく,八重歯や金歯がみっともないと言うのは決して審美を語っているのでは無く,時代,社会の平均的な感覚である事を自覚し,個々の患者の要望を十分に聞き出すことが肝要である.
Function and Esthetic in Dentistry
a) 52-year-old-Japanese-male upper and lower edentulous patient wants to have a new denture. The patient has difficulty showing his upper front teeth.
b) Less lip support with the denture placement and aged yellow color artificial teeth with a brown crack line.
c) A new denture was placed with good lip support, and white square artificial teeth were selected considering his age and sex.
d) The patient is happy about the result of the treatment with a nice smile appearing. The denture is supported by the muscles, and the soft tissue is supported by the denture. It is common practice that functional restoration is achieved simultaneously with aesthetic restoration.
近年,口腔健康と全身の健康の関係性,口腔内細菌と全身疾患との関連性が明らかになって来ている3).さらには心理学的な側面からも笑顔や笑う事の重要性や健康寿命との関係も指摘されており4),いわゆる審美歯科治療に脚光が当たるようになった.例えば,笑うと歯茎が見えるのが嫌だという主訴があれば,十分な検査と診断による治療計画を立て,同意の上で処置を行うが,疾病では無いが,色や形が気になる部分の修正行う歯科治療を一般的に歯科審美治療と総称している(Fig.2a~d).
De-pigmentation and Osseous Crown Lengthening
a) 36-year-old-Japanese-female wants to change her smile with white teeth before moving overseas.
b) The right canine is missing, and slight gingival melanin pigmentation will be more recognized after tooth bleaching. The left lateral incisor is overlapped with the gingiva because of the tooth axis.
c) Flapless Osseous Crown Lengthening after Removal of Melanin Pigmentation with Nd: YAG laser 1,064 nm 320 μ quartz fiber 80 mJ 30 Hz at the panel Total Time 5 min.
Gingivoplasty with Er:YAG laser 2,940 nm conical sapphire tip 50 mJ 30 Hz at the panel without water splay Total Time 12 sec
Bone Reduction to gain the Biolength Width with Er:YAG laser 2,940 nm flat end 400 μ quartz fiber 70 mJ–120 mJ 25 Hz Water at the panel, with water spray Total Time 70 sec. The tip was accessed from the periodontal pocket to the bone crest without flap opening.
d) The patient is satisfied with the result of teeth bleaching, removal of gingival melanin pigmentation, flapless osseous crown lengthening, and porcelain jacket crowns.
現在,日本で認可され審美歯科治療に使用されている歯科用高出力レーザーは,主に軟組織治療に使用される半導体レーザー(810 nm),Ndヤグレーザー(1,064 nm)と炭酸ガスレーザー(10.6 μm),そして軟組織と硬組織の双方に使用されるエルビウムヤグレーザー(2,940 nm)とエルビウム・クロミウムYSGGレーザー(2,780 nm)の5波長である.
残念ながら,445 nm,980 nm,9.3 μm等多数の歯科用高出力レーザー機器が市販されている海外に比べ本邦で認可されている機器は限られている.例えば,445 nm(半導体レーザー)は,メラニン色素に吸収されるピークに近い波長であり,歯肉メラニン着色除去を,低い出力設定で非接触凝固を非麻酔下でごく短時間で行うことが可能である5).また,ヘモグロビンへの吸収も高い事から,認可されている810 nm(半導体レーザー)に比べ,組織深部への影響が少なく,歯肉退縮や蓄熱による術後疼痛の発現等の副反応が軽減されると考えられる.
また,レーザーの生体に対する特性は波長に限らず,最高出力,出力形態,ビームプロファイル等,様々な要因が関与するが,認可機器が限られている為,臨床応用には工夫が強いられているのが現状である.例えば,認可機器の最高出力が5 W程度の歯科用半導体レーザーでは注水下での軟組織の蒸散は困難である.その為,深部への蓄熱を避け,効率の良い蒸散を行うには,レーザーチップの先端加工を行い,チップ先端をホットチップ状にして熱で凝固・溶解した軟組織を絡めとるような手技になる.シリンジでの送風や高出力バキュームを近接させることで組織の冷却を行い,チップ先端を組織に接触した状態を保ち,深部へのレーザー光の影響を軽減する為にチップの角度,方向に留意し,チップ先端に付着した組織片を都度ガーゼで清掃する.また,認可機器の半導体レーザーには連続波発振しか出来ない機器や,パルス発振が選択できてもパルス幅が均一でデューティーサイクルが50%の発振形態なので,常に術野の状態を観察し,必要に応じてパラメーターを調整しながら炭化等の過照射を避けるなどの様々な臨床上の工夫が必要であるにもかかわらず,パラメーターの調整は出力のみで行なわざるを得ないという限界がある.一方,未認可の最高出力30 Wなどの半導体レーザーを使用すると,注水下,パルス波(で平均出力及びデューティーサイクルの減弱及び可変が可能),チップ先端加工(ホットチップ)を行わない状態で軟組織の蒸散が行える為,蒸散面に厚い凝固層や炭化層の少ない蒸散と,組織の状態に合わせたパラメーターの柔軟な設定が可能で,予知性の高い処置を行う事ができる等,波長特性のみではない臨床上の利点がある6).
歯科審美治療は軟組織と硬組織の双方を対象とする.(Fig.3a~f)概ね色と形をターゲットにしているが,口臭治療なども広義の歯科審美治療である.歯科は,歯周治療,保存修復治療,根管治療,補綴治療,口腔外科治療,矯正治療,インプラント治療,アンチエイジング治療,口臭治療,と細分化され,それぞれにレーザーが応用されている.また,公衆衛生においても定量的な統計の集積にう蝕検査用レーザー(Fig.3b)が応用できるか模索されている7).
Hard and Soft tissue treatment in Esthetic dentistry
a) The patient wants to fix the brown color of the lower right lateral incisor, which she thinks is decay; however, the brown discolored surface is not deep decay.
This case is an esthetic problem. Actual decays are at the cervical area of the canine and first premolar.
b) A caries detection laser(Diagnodent, Kavo, Germany) was used to detect and measure the degree of caries lesions. Diagnodent shows the degree with a beep sound and number (0–99).
c) The discolored enamel surface was ablated and subgingival cervical caries were removed with Er:YAG laser. A gingivectomy was performed to expose the cavity margin with Er:YAG laser for the composite filling.
d) Treatment was done under a microscope. Magnification helps precise treatment and avoids over-irradiation.
e) Gingival melanin pigmentation was removed immediately after composite filling with Er:YAG laser flat end 600 μ quartz fiber tip, 40 mJ–60 mJ 20 Hz at the panel, with water spray.
f) 1 week after treatment. There was no complication after the treatment with good postoperative instructions.
従来法と比較し,レーザーを使用する事によってTable 1等,のメリットが挙げられる(Fig.4a~c).
Benefits of using a laser in dentistry
1,治療時間及び治療期間の短縮 |
2,術野の最小化 |
3,出血の少ない精密な治療 |
4,縫合を必要としない処置 |
5,術中の疼痛の軽減による麻酔量の軽減あるいは無麻酔での処置 |
6,術後の疼痛の軽減による鎮痛剤服用の軽減 |
7,患者の治療に対する恐怖心の軽減 |
8,術式の簡便化と術者の労力の軽減 |
9,従来法では期待出来なかった術野の殺菌とPBM(Photobiomodulation)による治癒促進効果 |
10,検査法の拡大による診断の向上 |
Gingivoplasty
a) The gingival margin of the upper right incisor needs to correct the shape.
b) Gingivoplasty with Er:YAG laser conical sapphire tip 40 mJ 20 Hz at the panel without water spray and local anesthesia. The treatment was done precisely under a microscope with good hemostasis.
c) The final restoration was placed with a good and healthy gingival line.
反面,使用環境の整備を伴う煩雑な安全管理及び教育の徹底,使用機器及び症例毎の組織の状態ごとに異なるパラメーターの模索等,人員を含めた院内環境の整備と使用機器に精通することが求められる8).特に審美治療部位では歯冠や歯肉の位置の0.5mmのズレが大きく審美性に影響するので細心の注意が必要である.
十分な検査に基づいてレーザーを使用する利点が従来法に勝ると判断された場合,患者の同意を得て処置を行う.う蝕治療や歯周病治療の様ないわゆる感染を伴う疾患の治療では,レーザーは補完的に使用される事でその効果が最大限に発揮される場合が多い9).歯の漂白にレーザーを使用するのは一般的では無いが,疾病を伴わない健全な組織に対し処置を行う歯科審美治療では比較的主たる手法としてレーザーが使用されることが多い.具体例としてTable 2に記す.
Laser treatments in the esthetic dentist
●︎歯周治療 | ●︎口腔外科治療 |
歯肉メラニン着色除去 | 形体修正 |
歯肉メタルタトゥー着色除去 | 繊維腫切除 |
歯肉縁整形 | 血腫凝固 |
歯冠長延長 | メラニン色素沈着除去 |
骨隆起整形 | フォーダイス班除去 |
●︎保存修復治療 | ●︎矯正治療 |
変色歯面蒸散 | 歯肉整形 |
歯の漂白(ホワイトニング) | PBMT(Photobiomodulation Therapy)による歯の移動の促進 |
ポーセレン,ジルコニア修復物の除去 | 歯冠色(ポーセレン製)ブラケットの除去 |
●︎補綴治療 | ●︎インプラント治療 |
歯肉圧排 | 2次オペ時及び補綴時の歯肉整形 |
オベートポンティック整形 | ●︎アンチエイジング治療 |
歯冠長延長 | PBMTによるほうれい線の緩和 |
●︎口臭治療 |
歯周治療において,審美治療で代表的な歯肉メラニン着色除去10)(Fig.2c, Fig.3e)にはすべての波長が応用されているが,機器によって術式が異なる.組織の状態を観察しながら適切なパラメータで蒸散を行う.過照射による歯肉退縮や腐骨形成などの副反応が起こるので注意が必要.歯肉メタルタトゥー着色除去11)(Fig.5a~e)にはエルビウムヤグレーザーなどの硬組織と軟組織双方に使用するレーザーが適応され,非常に簡便な処置になった.従来法は切開,縫合,結合組織の移植等,侵襲の大きな治療である.注水下で金属片及び変色組織を洗い流すように蒸散を行う.歯科用顕微鏡など拡大視野下での処置が望ましい.術後の血餅保持と感染予防に努める.歯肉縁整形12)(Fig.2c, Fig.4b)はすべての波長で処置が可能であるが,エルビウムヤグレーザー,エルビウム・クロミウムYSGGレーザー,及び炭酸ガスレーザーは歯の蒸散,溶解及びクラックを形成するので,歯の周囲での照射は慎重に行われなければならない.歯冠長延長術13)(Fig.2c, Fig.4b)も歯肉縁整形と同様の処置であるが,生物学的幅径に考慮し,新たな歯肉マージンから生物学的な幅を維持するために骨縁を整形する場合にはエルビウムヤグレーザー,エルビウム・クロミウムYSGGレーザーが使用される.従来法では歯肉を切開し骨面を露出させる必要があったが,レーザーの使用によりフラップを開けず,擬似歯肉溝からチップを挿入し骨縁を蒸散・整形する.術式の簡便化と時間の短縮,及び縫合が不要な為,患者にも術者にも恩恵がもたらされた.この術式に使用されるレーザーは,硬組織の蒸散が安全に行われるので,食いしばりによる歯槽骨の骨隆起整形にも応用が可能である.
Removal of Metal Tattoo, Laser Whitening and Gingival Retraction
a) 30-year-old-Japanese-female wants to have white teeth.
b) Removal of Metal Tattoo was performed with Er:YAG laser flat end 600 μ quartz fiber tip, 70 mJ 20 Hz at the panel, with water spray under local anesthesia.
c) Tooth bleaching with Frequency-doubled Nd:YAG laser 532 nm and special bleaching gel for this wavelength.
d) Gingival retraction(troughing) for the impression with Nd:YAG laser 40 mJ 20 Hz without local anesthesia.
e) The patient is happy with the result of the laser treatment and final restoration.
保存修復治療で変色歯面蒸散14)(Fig.3c)はエルビウムヤグレーザー,エルビウム・クロミウムYSGGレーザーで簡単に蒸散が可能であるが,蒸散面は粗造なので,コンポジットレジン修復や歯面研磨が必要である.本邦でも歯の漂白(ホワイトニング)15)(Fig.5c)にすべての波長のレーザーが使用されてきた.安全管理の煩雑さや波長に適した漂白剤の入手など,その適応は限定的であるものの,海外で販売されている半導体レーザーにはもれなく漂白用のアプリケーターチップが添付されているので,今後の動向が注目される.ラミネートベニアなどポーセレン,ジルコニア修復物の非破壊除去16)にはエルビウムヤグレーザー,エルビウム・クロミウムYSGGレーザーが使用される.接着性レジンセメントをレーザー光で破壊するので,歯質の温存に優れる.何より再製作時の色見本として有用である.
補綴治療17)では精密印象採得が必須であるが,最終形成面に歯肉が被ってくることは頻繁であり,その為,確実な歯肉圧排(Fig.5d)が行われる必要がある.レーザーは無麻酔下での処置が可能なため,有用である.細いグラスファイバーチップで繊細な作業が可能なNdヤグレーザーや半導体レーザーが適応される.固定性ブリッジの治療で歯の欠損部の顎堤歯肉のオベートポンティック整形では,従来法に比べ出血の少ないレーザー治療は,より精密な整形が期待できる.支台歯のフェルールの確保に歯冠長延長(Fig.2c, Fig.4b)が必要な場合にも前述と同様にレーザーは有用である.
口腔外科治療では炭酸ガスレーザーが軟組織の蒸散・切開に有用である.(Fig.6a~f)で示した症例では口唇の形体修正を炭酸ガスレーザーで行っている.非接触での蒸散が可能なため,口唇にテンションをかけずに蒸散することで,術中に形体の把握が容易である.また,縫合の必要がない為,瘢痕の形成が軽微であるという利点もある.同様に繊維腫切除18)(Fig.7a, b)も炭酸ガスレーザーが簡便であるが,本症例ではNdヤグレーザーを使用しているように,すべての波長が適応される.口唇には静脈奇形の血管腫が出現することがある.審美的に気になることが多い.血管腫凝固19)(Fig.8a~c)にはNdヤグレーザーと半導体レーザーが使用されるが,内部にファイバーを挿入し凝固させる場合と非接触で凝固させる術式がある.過剰な照射は周辺組織の熱変性を起こし,治癒の遅延や術後疼痛を招くので,術前に冷水あるいは氷柱などで組織の冷却を行うと良い.口唇のメラニン色素沈着除去(Fig.9a~c)はNdヤグレーザーがストレスなく使用出来る.口唇のフォーダイス班は頬粘膜臼歯部・頬縫線上や口唇皮膚粘膜移行部に見られる異所性皮脂腺で境界明瞭な黄色,顆粒状の斑.男性では思春期以降に目に付くようになる(全男性の1/3).フォーダイス班除去20)(Fig.10a~c)には全ての波長が使用可能であるが,筆者の経験上Ndヤグレーザーが使いやすい.
Lip Shaping
a) The patient’s upper lip was sutured after an accident when she was a child. The corner of her right upper lip looks irregular in shape.
b) Scar is observed when the lip is stretched.
c) The lip counter was shaped with abrasion with Co2 laser 0.8 W continuous mode under local anesthesia. Treatment was finished with good hemostasis.
d) 4 weeks after treatment.
e) 4 weeks after treatment. Scar not observed because no suturing.
f) 5 years after treatment. The lip shape has remained stable.
Removal of Fibroma
a) Removal of fibroma with Nd:YAG laser 80 mJ 30 Hz at the panel under local anesthesia. The Co2 laser is faster than the Nd:YAG laser.
b) 3 weeks after treatment.
Removal of Hemangioma
a) Removal of Hemangioma (venous malformation) at the lower lip.
b) Nd:YAG laser 80 mJ 10 Hz at panel was used for the coagulation of the hemangioma with non-contact irradiation under local anesthesia.
c) 3 weeks after treatment. The patient is satisfied with the result of the laser treatment.
Removal of Melanin pigmentation
a) Melanin pigmentation at the lower lip.
b) Nd:YAG 60 mJ 30 Hz at panel was used for the removal of lip melanin pigmentation under local anesthesia.
c) 4 weeks after treatment.
Removal of Fordyce spots
a) The patient wants to remove the yellow color from the lower lip.
b) Removal of Fordyce spots with Nd:YAG laser 80–100 mJ 10 Hz at the panel under local anesthesia.
c) 3 weeks after treatment.
矯正治療21)時,清掃不良などで歯肉の炎症や増殖が起こる事がある.歯肉整形にはレーザーが簡便であり,電気メスに比べ治癒や疼痛管理において有利である.また,PBMT(Photobiomodulation Therapy)による歯の移動の促進の報告や研究がなされている.歯冠色(ポーセレン製)ブラケットの除去22)にエルビウムヤグレーザー,エルビウム・クロミウムYSGGレーザーが使用される.保存修復治療時のポーセレンラミネートベニア除去と同様の機序で容易にブラケットが脱離する.
インプラント治療に注水下でのエルビウムヤグレーザーとエルビウム・クロミウムYSGGレーザーの使用は非常に有用である.2次オペ(埋入インプラント体の掘り出し)時及び補綴時の歯肉整形(Fig.11a~c)には全ての波長が使用されるが,インプラント体が加熱するので注意が必要である.特にNdヤグレーザーは容易にインプラント体を損傷するのであまり使用されることは無い.
Subgingival Shaping in Implant Treatment
a) Uncovering of an osseous implant at the upper right incisor.
b) Subgingival shaping for the final restoration and removal of the metal tattoo was performed with Er:YAG laser under local anesthesia.
c) Finishing the case with a new screw retained in restoration. Making the precise subgingival tissue counter is easy with laser ablation.
アンチエイジング治療でPBMTによるほうれい線の緩和23)にレーザーが応用されている.また,歯の漂白や色素沈着除去もアンチエイジング効果として期待できる.
他に,過酸化水素をレーザーで活性化し,舌や歯周組織の殺菌を行う口臭治療が報告され
ている24).
以上,歯科審美治療にレーザーを使用し様々な臨床応用がされている.
いわゆる歯科審美治療は,口唇,歯肉という軟組織の色,形と,歯,歯槽骨と顎骨という硬組織の色,形と形体(歯軸の傾斜を含む)が相互に関係している口元の見え方を変化させる治療である.レーザーを使用する事で歯科審美治療はより身近で簡便になり,新たな術式も考案され,患者への恩恵は大きい.ただし,レーザーの蒸散,切開,止血,凝固能などの光熱作用や光化学作用(漂白など)を利用してその目的を達成するためには,十分な検査によるベースラインと言われる現状の把握とゴールを患者と共有する必要がある.また,レーザークラス4の高出力レーザーを使用する場合は蓄熱や過剰な出力によって歯肉退縮を引き起こす事がある.個々の症例で歯肉の厚みや血流,歯槽骨の形状,付着歯肉の幅,小帯の付着位置等,包括的な検査と診断に基づいた治療が行われなければならない.
利益相反なし