The Journal of Japan Society for Laser Surgery and Medicine
Online ISSN : 1881-1639
Print ISSN : 0288-6200
ISSN-L : 0288-6200
ORIGINAL ARTICLE
Investigation of Skin Condition Changes and The Efficacy of Skincare during Laser Hair Removal
Hiromichi Yamada Yumi MurakamiRyoko YamashitaHiroshi MatsunakaMieko Hata
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2025 Volume 46 Issue 2 Pages 54-61

Details
Abstract

下腿のレーザー脱毛の際にスキンケアの有用性を検討した.用いたレーザー機種はロングパルスアレキサンドライトレーザーである.レーザー照射前から1日2回右下腿部に保湿剤を塗布し,左下腿部は無塗布とした.開始時,照射1週後と4週後に皮膚状態の観察をおこなった.保湿剤塗布側は無塗布側に比べて,表皮角層水分量は有意に高く,重層剥離度は有意に低く,乾燥・掻痒スコアは有意に低かった.また照射時,照射後の疼痛スコアは低かった.下腿のレーザー脱毛時におけるスキンケアは乾燥対策として有用であることが示唆された.

Translated Abstract

The efficacy of skincare products as a measure against dryness during laser hair removal of the lower legs was investigated. A long pulse alexandrite laser was used. Moisturizers were applied to the right lower leg twice daily before irradiation, while the left lower leg was left untreated. At baseline and one and four weeks after irradiation, the skin condition was observed, water content of the stratum corneum was measured, epidermal stratum corneum was evaluated. The moisturized side had lower dryness and itching scores, a significantly higher water content in the stratum corneum, and a significantly lower degree of exfoliation than the unmoisturized side. The use of skincare products during laser hair removal on the lower leg has been suggested as a useful measure against dryness.

1.  緒言

従来レーザー照射後はレーザー照射部位の皮膚が乾燥することが知られている.そのため保湿剤の使用が推奨されている1,2)が,その乾燥の程度や保湿剤の効果については具体的なデータを用いて論じられている論文は少ない.これまでわれわれはひげのレーザー脱毛においてスキンケア剤の有用性を経時的変化で示した3).そこで今回は下腿のレーザー脱毛において保湿剤塗布の有用性をコントロールとの比較において検討することとした.

2.  目的

下腿のレーザー脱毛時におけるスキンケア剤の効果を検討する.

3.  対象と方法

下腿のレーザー脱毛を希望して沢野クリニック皮膚科,髙野医科クリニックを受診した患者の内,本試験に該当し参加の同意を得ることができた15名の患者を対象とした.試験期間は2023年1月から2月とした.

3.1  使用したレーザー機器,照射条件

使用したレーザー機器はロングパルスアレキサンドライトレーザーGentleMAX Pro波長755 mm,パルス幅3 msec,エネルギー密度は8~10 J/cm2,DCD on 30/20,スポットサイズ直径18 mmとした.

3.2  レーザー照射・スキンケア製剤使用スケジュール

レーザー照射の1~2週前より,両下腿部を洗浄剤で1日1回洗浄し,右下腿伸側屈側の両面に保湿剤を1日2回塗布し,レーザー照射後4週後まで継続した.レーザーは左右の下腿伸側に照射した.すなわち右下腿伸側はレーザー照射 + 保湿剤塗布,左下腿伸側はレーザー照射のみで保湿剤は塗布せず,保湿剤無塗布対照とした.また,屈側はレーザー照射をおこなわず,右下腿屈側はレーザー無照射 + 保湿剤塗布,左下腿屈側はレーザー無照射 + 保湿剤無塗布とした.開始時,レーザー照射の1週後および4週後に来院し,下腿皮膚の観察をおこなった.なお4週後には2回目のレーザー照射をおこなった.

3.3  使用するスキンケア製剤

使用したスキンケア製剤は以下のとおりである.両下腿部をノブ フォーミングソープ D(洗浄剤)で洗浄した後,右下腿部に保湿剤としてノブ スキンミルク D(乳液),ノブ スキンクリーム D(クリーム)の順に塗布した.

3.4  効果判定法

効果判定は次の6項目でおこなった.①表皮角層水分量(SKICON-200EXによる),②経表皮水分蒸散量(Tewameter TM300による),③分離角層の分析(重層剥離),④皮膚所見(乾燥,掻痒,疼痛),⑤毛の本数計測,⑥患者アンケート

①表皮角層水分量

下腿部をからだ清拭用のウェットタオルにて清拭し,15分経過後,3.5 MHz高周波伝導度測定装置SKICON-200EX(株式会社ヤヨイ,東京,日本)を用いてコンダクタンスを5回測定し,その平均値を表皮角層水分量の測定値とした.

②経表皮水分蒸散量

表皮角層水分量測定に引き続き,Tewameter TM300(Courage & Khazaka Electronic, GmbH, Köln, Germany)を用いて経表皮水分蒸散量を2回測定し,その平均値を経表皮水分蒸散量の測定値とした.

③分離角層の分析(重層剥離)

テープストリッピングによって被検部位の角層を採取し,ゲンチアナバイオレットで染色した.顕微鏡下で3視野分の染色画像を得た.観察画像をAdobe Photoshop®にて二値化し,重層剥離率(重層剥離細胞面積/全細胞面積)を求め,3視野の平均値を重層剥離率とした.

④皮膚所見(乾燥,掻痒,疼痛)

乾燥,掻痒の程度を5段階(なし:0,軽微:1,軽症:2,中等度:3,重症:4)で評価しスコアで表示した.疼痛は視覚的評価スケール(Visual Analog Scale: VAS)法にて評価した.

⑤毛の本数計測

両下腿伸側膝下に縦横5 cm四方枠を設定し,デジタルカメラで撮影した.得られた画像から縦横5 cm四方枠内の毛の本数を計測した.

⑥患者アンケート

スキンケア製剤を指示通り塗布できたか,スキンケア製剤使用による満足度などを聞き取り調査した.

3.5  治療部位の異常皮膚所見の発現の有無

治療部位の異常皮膚所見の発現の有無を判定した.

3.6  統計解析

経時変化はFriedman’s test,部位差はFriedman’s testもしくはWilcoxon signed-rank testを用いて検定,有意水準両側5%未満とした.

3.7  倫理委員会承認

医療法人社団ITO代々木メンタルクリニック倫理委員会にて承認を得たうえで実施した(承認番号TWK285).

4.  結果

4.1  対象者背景

対象者は女性15名で平均年齢39.9 ± 16.2歳であった.

4.2  表皮角層水分量

表皮角層水分量は全経過を通してレーザー照射 + 保湿剤塗布側がレーザー照射 + 保湿剤未塗布側より有意に高かった.保湿剤未塗布面でのレーザー照射の有無ではいずれも同程度に少なかったが,保湿剤塗布面でのレーザー照射有無では有意差はないもののレーザー照射面の方が低かった(Fig.1).

Fig.1 

Changes in stratum corneum water content during laser hair removal on the lower legs.

The water content of the stratum corneum was higher on the side where moisturizer was applied than on the side where no moisturizer was applied.

4.3  経表皮水分蒸散量

経表皮水分蒸散量はレーザー照射 + 保湿剤塗布面が最も低く,レーザー照射 + 保湿剤未塗布面が最も高かったが有意差はなかった(Fig.2).

Fig.2 

Changes in trans epidermal water loss (TEWL) during laser hair removal on the lower legs.

TEWL was lowest on the laser-irradiated, moisturizer applied side and highest on the laser-irradiated, no moisturized side, however the difference was not statistically significant.

4.4  分離角層の分析(重層剥離)

重層剥離度は全経過を通してレーザー照射 + 保湿剤塗布面がレーザー照射 + 保湿剤無塗布面より有意に低かった.保湿剤無塗布面でレーザー照射の有無ではレーザー照射なしの方が低く,保湿剤塗布面でのレーザー照射の有無ではレーザー照射なしの方が低かったが,有意差はなかった(Fig.3).39歳女性の下腿左右側,伸側屈側の4面の重層剥離度の経時的変化をゲンチアナバイオレットにて染色した顕微鏡写真で示す(Fig.4).レーザー照射面は保湿剤塗布側が経時的に重層密集形態が単層散在形態となり,剥離度も0.589→0.397と経時的に減少しているが,保湿剤無塗布側では重層密集形態があまり変化せず,剥離度は0.675→0.882とむしろ上昇した.

Fig.3 

Changes in the multilayer exfoliant ratio of the stratum corneum during laser hair removal on the lower legs.

The degree of exfoliation was significantly lower on the laser-irradiated, moisturizer-applied side than on the laser-irradiated, non-moisturized side throughout the course of the treatment.

Fig.4 

Changes in the multilayer exfoliant of the stratum corneum during laser hair removal in a 39-year-old woman, as observed under a microscope with Gentian violet staining.

On the laser irradiated side with moisturizer application, the compact layered structure changed over time to a scattered single-layer structure, while on the unmoisturized side, the compact layered structure became even more dense.

After four weeks, the multilayer exfoliant of the stratum corneum in the laser irradiated, moisturizer applied area decreased from 0.589 to 0.397, whereas the multilayer exfoliant of the stratum corneum in the laser-irradiated, non-moisturizer area increased from 0.675 to 0.882.

レーザー無照射面では保湿剤塗布側が0.387→0.258と経時的に減少,保湿剤無塗布側は0.495→0.827と上昇した.

4.5  皮膚所見(乾燥,掻痒)

乾燥スコアはレーザー照射 + 保湿剤塗布面は全経過を通して0であるのに対して,レーザー照射 + 保湿剤無塗布面は全経過を通してスコア0.87であった.掻痒スコアはレーザー照射 + 保湿剤塗布面は照射1週後のみ0.07,照射開始時と4週後は0であった.これに対しレーザー照射 + 保湿剤無塗布面は経時的に0.73 →0.33と減少した(Fig.5).

Fig.5 

Changes in dry skin and itching scores during laser hair removal on the lower legs.

The dryness score remained at 0 over time for all laser-irradiated area where moisturizer was applied, while it was 0.87 for all laser-irradiated area without moisturizer application. The itching score was almost always 0 on the laser-irradiated, moisturizer-applied side, whereas on the laser-irradiated, non-moisturized side, it increased to 0.73 after one week, and decreased to 0.33 after four weeks.

4.6  皮膚所見(疼痛)

レーザー照射開始時と4週後の2回目の照射時ともに照射中の疼痛,照射後の疼痛どちらにおいてもレーザー照射 + 保湿剤塗布面の方がレーザー照射 + 保湿剤無塗布面に比べて疼痛スコアが低かった.特に2回目の照射中と1回目の照射後の疼痛スコア減少では有意差を認めた(Fig.6).

Fig.6 

Changes in visual analogue scale (VAS) scores for pain during and after laser hair removal on the lower legs.

Pain scores were lower on the laser-irradiated, moisturizer-applied side compared to the laser-irradiated, non-moisturized side, both during and after irradiation, in both first and second sessions.

4.7  毛の本数計測

レーザー脱毛施行の両下腿伸側膝下,縦横5 cm四方の範囲で毛の減少率は保湿剤塗布側,無塗布側で有意な差はなく,また両側とも開始前に比して有意に減少を認めた(Fig.7).

Fig.7 

Changes in the ratio of leg hair during laser hair removal on the lower legs.

The number of hairs was counted in a 5 cm2 area on the lower legs, and the reduction rate was calculated. There was no significant difference between the moisturized and unmoisturized laser-irradiated, area but both showed a significant reduction in hair ratio compared to the period before treatment started.

4.8  患者アンケート

レーザー照射1週後の調査では洗浄剤であるノブ フォーミングソープ Dの使用頻度は毎日が70%,ノブ スキンミルク Dとノブ スキンクリーム Dの使用頻度は毎日が100%であった.レーザー照射4週後の調査ではフォーミングソープ Dの使用頻度,毎日が86%,スキンミルク Dとスキンクリーム Dの使用頻度はともに毎日が87%であった.保湿剤の使用は概ね指定通り行われたと思われる.本治療の全体を通しての満足度は満足が67%,やや満足27%であり高い満足度が得られた.

4.9  治療部位の異常所見の発現の有無

全症例,全経過において治療部位の異常所見の発現は認めなかった.

5.  考察

レーザー脱毛後に生じるレーザー照射面の皮膚乾燥の対策として保湿剤の有用性を具体的なデータ測定に基づき検討した.左右下腿伸側にレーザー照射を行い,右側には保湿剤を塗布し,左側は保湿剤無塗布コントロールとした.この両下腿伸側の左右比較においてレーザー脱毛時における乾燥に対する保湿剤の有用性を検討する質の高い試験になったと思われた.また左下腿部は保湿剤無塗布としたため,左下腿伸側と左下腿屈側においてはレーザー照射のみと全く未処理のコントロールスキンとの比較が行えた.さらに両下腿屈側の左右比較においては単に保湿剤を使用するかしないかの比較が行えた.保湿剤はレーザー照射1~2週前から使用を開始した.そのためレーザー照射前にはすでに乾燥,湿潤の程度に差が生じており,その程度は概ね1週後,4週後まで維持された.

乾燥の程度は以下の指標で判定した.表皮角層水分量は角層の湿潤環境を,経表皮水分蒸散量は皮膚のバリア機能障害で増加する乾燥環境を表す.また重層剥離度は乾燥環境ほど角質細胞の重層密集形態がみられ,湿潤環境では角層ターンオーバーが正常化し,単層散在形態となり重層剥離度が減少する.

レーザー照射面の保湿剤塗布側は無塗布側に対して,全経過を通じて,表皮角層水分量は有意に高く,重層剥離度は有意に低かった.このことはレーザー照射面における保湿剤の保湿効果を示唆している.またこの2面において経表皮水分蒸散量には有意差がなかったことはレーザー照射にバリア機能障害がなかったともいえるが,レーザー照射保湿剤無塗布面は他の3面より経表皮水分蒸散量がわずかに高く,1回の照射のみでは有意差が出ないがバリア機能障害による乾燥化の可能性が窺えた.39歳女性の剥離度においてもレーザー照射保湿剤無塗布面が他の3面よりも高かった.乾燥スコアは全経過を通じて保湿剤塗布面は0,無塗布面は0.87であった.

掻痒スコアは保湿剤塗布面でほぼ0,保湿剤無塗布面は経過中に半減した.皮膚は乾燥するだけで掻痒を感じ,乾燥対策を講じることで掻痒が減じることが知られている.さらに表皮内に侵入した掻痒伝達の神経線維C線維が脱毛レーザー照射により表皮内から真皮に押し返され,掻痒が減少することが示されている4).すなわち乾燥皮膚を保湿するだけでも掻痒は減少し,かつレーザー照射することによりさらに掻痒が減じることが考えられた.

疼痛スコアは保湿剤塗布面・無塗布面ともに経時的に減少しているが常に塗布面のスコアが低かった.保湿剤塗布によりレーザー照射による疼痛も減少することが示唆された.皮膚の保湿とレーザー照射による疼痛の軽減の因果関係は不明であるが,前述の保湿と掻痒の関係と類似するものがあるのかもしれない.

レーザー照射後の毛の本数の減少率は保湿剤塗布・無塗布面ともにほぼ同率で脱毛自体への保湿剤の影響はなかった.

次にレーザー脱毛自体の乾燥化についても考察した.レーザー照射面と未処理のコントロール面との比較においては,表皮角層水分量に有意差はなかったが,重層剥離度においてはレーザー照射面の方が重層剥離度は高く,角層ターンオーバーの異常が生じていることが示唆された.

またレーザー照射保湿剤塗布面とレーザー無照射保湿剤塗布面との比較ではレーザー照射した方が,表皮角層水分量,重層剥離度ともに乾燥化傾向にあった.これらの結果はいずれも有意差はなかったが,レーザー照射による皮膚の乾燥化の傾向が示唆された.

なお今回全症例,全経過において治療部位の異常所見の発現は認めなかった.このことは今回使用したスキンケア製剤の安全性を示すものと思われた.今回使用した保湿剤は乳液,クリームの2つの剤型で,この順で塗布した.保湿成分の機能としては,角層中に水分を補う「湿潤作用」,保湿成分を与え保持することで皮膚に柔軟性をもたせる「柔軟作用」,水分や保湿成分などを角層中に閉じ込める「蒸散抑制作用」の3つに分類され,各剤型によって配合成分のバランスを調整し,保湿機能を発揮させている5).本試験では,保湿効果を高めるため2剤型を重ねて塗布させたが,対象者の皮膚状態や嗜好性に合わせて選択することも可能である6)

6.  結語

①下腿レーザー脱毛治療におけるスキンケア製剤使用の有用性が示された.すなわち表皮角層水分量の増大,重層剥離度の減少が有意差をもって示された.

②特に保湿剤をレーザー照射1~2週前から塗布することにより照射開始日より照射皮膚面の保湿効果,掻痒の低下,疼痛の低下が見られた.

利益相反

本研究に用いたスキンケア製品は常盤薬品工業株式会社より提供を受けた.

文献
 
© 2025 Japan Society for Laser Surgery and Medicine
feedback
Top