抄録
症例は84歳男性.他院にて高血圧症に対する管理を受けていたが,1か月ほど続く全身倦怠感と食欲不振に加えて咳嗽,高熱も出現したため,当科を受診し精査加療目的で入院した.入院時,SpO2 92%(room air)と呼吸状態悪く,非定型感染を疑う血液検査所見を認め,胸部X線検査と胸部CT検査で,両肺野にスリガラス状陰影とびまん性粒状影を認めたことから粟粒結核を含む肺感染症を念頭に,抗結核薬と塩酸シプロフロキサシン(CPFX)の投与を開始した.後日,喀痰・胃液および尿より結核菌検出の報告があり,粟粒結核の診断が確定した.入院第3病日には,低酸素血症が進行し,急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome;ARDS)を発症し,直ちに人工呼吸器を装着するとともに副腎皮質ステロイド薬の投与を開始した.治療は奏功し,挿管後6日で抜管し得た.その後の経過も順調であった.粟粒結核の播種性血管内凝固症候群(DIC)やARDS発症例では死亡率70~80%と極めて予後不良とする報告が多いが,本症例では早期治療(治療的診断)により救命することが出来た.高齢者が原因不明の高熱を来した場合には,粟粒結核を念頭に置いた鑑別診断が必要で時機を逸せず抗結核薬療法を行うことが肝要である.