昭和医学会雑誌
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結核密集地帯に於ける結核感染竝に發病の統計的觀察
橋本 龍雄田中 邦雄
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1939 年 1 巻 2 号 p. 17-28

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抄録

東京市内の人口密集地乃至不衞生地區に於ては長期戰時下の最近小工業の發展に伴ひ人材不足並に休養不足に因り過勞或は榮養不足お來し從事せる市民の體力低下せるや否や是等市民衞生の第一條件たろ結核に付では如何。余等は東京市内第一とも云ふ可き人口密集地衞生状態不完全なる下谷, 淺草, 荒川, 足立の四區を調査地區として其結核の感染發病状態を主に調査せり.
結核死亡卒に依つては現存肺結核患者數の最高卒を證明し得ざりしも, 昭和12年度結核届出に依る警親廳發表全市内各區比較表に因り本調査地區の届出數は全市の32.3%高卒を占め從て現存結核患者の多きを知れり.
調査成績.昭和13年9月より昭和14年2月に至る僅か半ケ年間に肺及肺外結核1312名共他の疾患1548名, 健康者245名を取扱へり.
イ, 調査者年齢別.病類別分類に依り肺外結核842名にして特に多きは其大部分が小兒期肺門淋巴腺結核之を占むる爲にして此點肺結核發病危險者過大數となる.
ロ, ツベルクリン皮内反應の全調査人員2445名中陽性率78, 3%を得たり.東京市市民の陽性卒73.2%こせられ居るに比し遙かに高率なる事を知れり.
ハ, ツ反應陽性者と其家族内傳染源, ツベルクリン皮内反應竝に家族歴調査を施行せる者2170名中のツ反應陽性者1914名に就き見るに有肺結核家族歴者25.3%の多きを知れり.然れども殘74.7%は無肺結核家族歴者なる層以て家族内感染より家族外感染の多き事實は否む可らざる所なり.
ニ, 又結核發病率ご肺結核家族歴との關係に於て家族歴の有無を不問肺結核は青壯年期に發病する者多きは勿論なれど肺外結核は有家族歴者の小兒期 (乳兒及學童) 特に高く37, G-39.9%にして肺外結核は家族内傳染源あろ者に多く罹病してゐる事を知る.
ホ, 同樣に肺結核家族歴者ご結核感染率とを年齡別に見ても有肺結核家族歴者のツ反應陽性卒は無家族歴老の陽性率に比し夫々82.4%と7.6%にして高きは勿論なれご若年者特に7-15歳學童期に於ては其差著きを見たり, 即ち小兒期結核罹病は家族内感染に因る事多きを證明せり.
へ, 尚前述の結核感染發病竝に結核家族歴の關係を一括して見易き一圖を考按して發表せり.

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