抄録
ヒトとカニクイザルの手筋の筋線維構成を比較検索し, 手筋と手の働きとの関係の解析を行った.相対筋重量はヒトはサルと較べると母指内転筋, 母指対立筋, 第二背側骨間筋が大で, 短母指屈筋, 小指外転筋, 短掌筋は小であった.各手筋の筋線維総数はヒト, サルともに筋重量との問に正の相関々係が見られ筋重量と等しい相互関係を示した.筋線維の太さについては, ヒトでは第一・第二背側骨間筋, 母指内転筋, 母指対立筋が他筋より大で, サルと較べてほとんどの筋で太さは小であったが, 特にその差は小指球筋と掌側骨間筋で著しかった.手筋はヒトでは手指の把握やつまみ動作に関与するものが, サルでは体の支持やhangingに関与するものがそれぞれ発達する傾向が明らかにされた.