昭和医学会雑誌
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免疫能よりみた原発性末期肺癌の予後に関する臨床的研究
刑部 義美鈴木 一野口 英世
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1982 年 42 巻 6 号 p. 797-803

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抄録

目的, 担癌生体において, 免疫機能, すなわち細胞性免疫及び液性免疫 (免疫グロブリン, 補体) は, 病状の進行と共に種々の変化を招来すると考えられる.今回著者は, 原発性末期肺癌患者の免疫能について, 細胞性, 液性免疫の両面より検討を行なった.対象及び方法, 対象は昭和大学藤が丘病院呼吸器内科で死亡した, 来院時日本肺癌学会臨床期分類4期の34名である (男24名, 女10名, 平均年齢67.4歳) , 組織型は扁平上皮癌10名, 腺癌18名, 小細胞未分化癌6名でretrospectiveに初診時の免疫能と主に生存期間等の関係とを, 健常対照者27名 (男15名, 女12名, 平均年齢48.1歳) のそれと比較して検討を行なった.治療は原則としてCarboquone又はFT-207の単独療法及び非特異的免疫賦活剤 (OK-432, PSK) の併用療法である.PPD皮フ反応は一般診断用精製ツベルクリン液1人用 (日本BCG社製) を使用し, 48時間後に測定した.CH50はMayer法に準じた50%溶血法, C3c1A1C) 及び免疫グロブリン (IgG, A, M) は, Single Radial Immunodiffusion method (Hoechst社製) で測定し, 末梢血リンパ球数は, 白血球数×血液像のリンパ球数の%より求めた.結果, 1.PPD皮フ反応 (以下PPD) 陽性患者はPPD陰性患者に比し生存期間が有意に長く, PPD陽性患者の末梢血リンパ球数と生存期間とは正の相関を示した.2.CH50は肺癌患者では健常者に比し有意の高値を示し, PPD陽性患者では陰性患者に比し有意の高値を示した.CH50と肺癌患者の生存期間には正の相関があり, PPD陰性患者では更に高い正の相関を示した.3.IgG, IgAは肺癌患者では健常者に比し有意であったが, IgMは変化がなかった.又免疫グロブリン値と肺癌患者の生存期間には相関がなかった.結論, 本症患者では細胞性免疫能低下の時期より補体の関与が大となり, 細胞性免疫能のほとんど消失した時期では補体が原発性末期肺癌の生体維持に重要な働きをするものと考える.

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