抄録
25年前, シリコン注入法による豊胸術を受けた53歳の女性が, 原因不明の発熱をともなった多発性関節炎を発症した.著明な炎症パラメーターの亢進に加えて多彩な免疫異常を有したが, 該当する膠原病は認められず, 前医より投与されていたステロイドホルモンの漸減にともない症状が悪化したため, 両側乳房内異物を摘出した.術後3カ月して臨床症状と検査成績に改善が認められ, さらに術後6カ月よりcyclophosphamide 50mgを併用投与したところCRPは陰性化, 発熱および関節症状は完全寛解を示した, 本症例では, 注入されていたシリコンが本症発症にアジュバント効果など何らかの役割をはたしていた可能性が考えられた.