昭和医学会雑誌
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甲状腺における穿刺吸引細胞診ならびに病理解剖学的検討
張 光麗三枝 利徳諸星 利男
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1987 年 47 巻 1 号 p. 23-29

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抄録
14歳以上の無選択58例について, 剖検中の甲状腺穿刺吸引細胞診と病理組織学的診断との比較検討を行なった.また当教室における27年間の14歳以上1898剖検例の甲状腺病理形態学的検査結果についても検索した.甲状腺悪性腫瘍の穿刺吸引細胞診の正診率は66.7%であり, 正診の12葉悪性甲状腺腫瘍で結節を触れたものはわずか5葉であった.結節を探ぐれないものと5mm以下の微小癌に対して細胞診診断はむずかしいと考えられ, 甲状腺穿刺吸引細胞診は多方向吸引を行うべきである.甲状腺穿刺吸引細胞診で癌細胞を確認するが病理組織学的検査で癌がみられない場合には微小癌に対する詳細な臨床的追求が必要であると考える.さらに剖検例の検索では, 各種甲状腺疾患の頻度は8.2%で年齢と共に甲状腺疾患の頻度が増える.甲状腺癌の頻度は1.9%で, 甲状腺微小癌は0.9%であった.また40歳代と80歳代に甲状腺癌の発生が高かった.甲状腺癌の組織型は, 乳頭腺癌52.8%, 濾胞腺癌44.4%であったが, 10mm以下の微小癌には乳頭腺癌が70.6%で乳頭腺癌が多かった.甲状腺癌巣の大きさおよび癌被膜の有無は癌巣の数との間に関係は認められない.転移性甲状腺腫瘍の原発臓器別転移頻度は胸腺癌, 頭頸部癌, 副腎癌, 骨肉腫, 乳癌, 肺癌などの順であった.腺腫様甲状腺腫と甲状腺癌を混在しているのは25%と高頻度である.したがって臨床で腺腫様甲状腺腫とされる症例には定期的に経過観察を行う必要性があると考える.
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