昭和医学会雑誌
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実験的呼吸不全における振動重畳換気法がガス交換能に及ぼす影響
小西 由美子
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1989 年 49 巻 1 号 p. 47-57

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抄録
HFVの中でも振動重畳換気法 (SOVと略す) は, 比較的臨床応用が行われているが, 適応となる病態や有効な振動重畳時期などについては定説がない.したがって, この点の解明を目的として雑種成犬に4種類の呼吸不全を作成し, SOVの効果を比較検討した.25mg/kgのネンブタール投与下雑種成犬28頭を対象とし, 肺水腫群 (オレイン酸の静注N=7) , RDS群 (生理的食塩水の肺洗浄による脱サーファクタントN=6) , 2種類の気管支収縮群 (メサコリンN=8, またはヒスタミンN=7の持続点滴静注) などの病的肺を作成した.周波数が10Hzのジェット振動を吸気相, 呼気相, 全呼吸相に分けて重畳し, 病的肺作成前, 病的肺作成-IPPV施行1時間後, SOV開始後10・30・60分において各パラメータを採取した.肺水腫群とヒスタミン気管支収縮群ではどの呼吸相にSOVを施行してもPaO2はIPPV時とほとんど変わらなかったが, RDS群ではいずれの相に振動を重畳しても若干PaO2は上昇し, 一方メサコリン気管支収縮群では呼気相重畳時に有意に上昇した.また, PaCO2は, 全群においてSOVにより低下したものの, メサコリン気管支収縮群では吸気相で, 他の3群では呼気相と全呼吸相においてIPPV時との間に有意差が得られた.したがって, 各病態において酸素化と炭酸ガス排泄に関して有効な重畳時期は異なっていた.全群においてSOV施行による循環系への影響はほとんど認められなかった.以上のごとく, 4種類の呼吸不全に対して振動重畳時期を分けてSOVの効果を検討したが, IPPV時に比べて有意なPaO2の上昇が得られたのはメサコリン気管支収縮群の呼気相重畳時のみであり, 酸素化能改善に関しては適応となる病態は限られていた.また, 炭酸ガス排泄能に対する促進作用は各群で認められたが, 有効な振動重畳時期は酸素化能の改善が得られる呼吸相とは異なり解離していた.したがって, SOVはガス交換を促進するので, その有効性が期待されるものの, 酸素化能に対してIPPVより有効となる病態は比較的少ない事, 一方炭酸ガス排泄能は比較的広範囲の呼吸不全で認められる事などが示唆された.
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