昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
高齢者胃癌の臨床病理学的特性
熊谷 一秀安井 昭西田 佳昭真田 裕増尾 光樹吉利 彰洋中山 旭田崎 博之平瀬 吉成小林 建一崔 相羽酒井 朗鄭 政男大川 真澄吉田 光宏辻 泰喜渡辺 敢仁一瀬 裕小林 茂樹三宅 政房望月 智行
著者情報
キーワード: 胃癌, 高齢者胃癌
ジャーナル フリー

1989 年 49 巻 5 号 p. 496-500

詳細
抄録

高齢者社会の到来により必然的に70歳以上の高齢者の胃癌切除例も多く経験されるようになった.今回は胃癌の年齢別特徴という観点より高齢者胃癌の臨床病理学的特性の検討を行った.当科で切除された胃癌186例中70歳以上の高齢者26例 (14%) を対象とした.早期胃癌の頻度は11例 (42%) と他年齢層と同様であった.これら高齢者群を70歳未満の年齢群と比較しつつ検討し以下の結果を得た.1) 肉眼型: 早期癌は高齢者群で隆起性癌が36%と多いが, 70歳未満では隆起性癌20%と少なかった.2) 癌巣の大きさ: 高齢者早期癌例では11例中6例 (56%) が長径2cm以下の小胃癌であり, 70歳未満群では2~5cm大の中胃癌が多い傾向にあった.3) 組織型: 高齢者群は70歳未満群に比し分化型腺癌が多く, 特に早期癌では11例中9例が分化型腺癌であった.4) 占居部位: 高齢者早期癌で11例中7例 (64%) がA領域にあり, 70歳未満群ではM領域に過半が占居していた.5) 占居腺領域: 高齢者群の臨床病理学的特徴は癌固有の性質にもよろうが, 多くは癌巣の背景胃粘膜によって特徴づけられていることが想像されることから早期癌症例の背景胃粘膜を検討した.高齢者群は11例中8例 (73%) と多くが幽門腺領域, 残り3例が中間帯領域にあり, 胃底腺領域癌は存在しなかった.一方, 70歳未満群は胃底腺領域癌13%, 中間帯領域34%, 幽門腺領域53%であった.以上70歳以上の高齢者早期胃癌は限局性の小型の分化型腺癌が多く, 占居部位はA領域, 幽門腺領域に大部分占居するという特徴を認めた.

著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top