昭和医学会雑誌
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うつ病患者の甲状腺機能と治療反応性についての検討
―ロジスチック回帰分析を用いて―
鳥居 成夫大坪 天平田中 克俊上島 国利渡辺 壮一郎吉邨 善孝宮岡 等
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2001 年 61 巻 3 号 p. 306-312

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抄録
うつ病患者の治療反応性を治療前の甲状腺機能から予測する試みがなされている.しかし, これまでの報告は, 単変量解析による検討がほとんどで, 様々な患者背景因子の相互関連を考慮していないものが多かった.本研究では, ロジスチック回帰モデルを用いた多変量解析により, うつ病患者の治療反応性と甲状腺機能の関連について検討した.対象はDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders IVed. (DSM-IV) における大うつ病性障害, あるいは双極性障害の最も新しいエピソードがうつ病の診断基準を満たす46例 (男性19例; 女性27例, 平均年齢51.4±17.6歳) である.うつ病の重症度は, 初診時および治療開始12週後のそれぞれの時点で17項目Hamilton Rating Scale for Depression (HRSD-17) を用いて評価し, 同時に, 甲状腺機能として血漿中thyroid-stimulating hormone (TSH) , free triiodothyronine (FT3) , free thyroxine (FT4) を測定した.HRSD-17得点が初診時から12週後までに50%以下に減少した症例をresponder, それ以外をnonresponderとした.Responderであるかないかを目的変数とし, 性別, 年齢, 初診時HRSD-17得点, FT4を説明変数としたロジスチック回帰モデルを用いた解析を行った.さらに, 治療前後における各甲状腺ホルモン値の変化を検討した.結果, responderであるということと, 初診時のFT4値が, オッズ比43.4 (95%信頼区間: 1.3-1413.3) で有意な正の相関を示した.Responderとnonresponderのいずれも, 治療開始時と比較して12週後にはFT4値が有意に減少していたが, responderの方が減少の幅が有意に大きかった (df=44, F=0.39, p=0.007) .以上より, 初診時FT4が高値であることとうつ病の治療反応性との間には, 強い関連があり, 治療開始時の甲状腺機能検査が, 治療反応性の予測因子となりうる可能性が示唆された.
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