昭和医学会雑誌
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四肢先天奇形児術前後の母親の心理的変化への考察
松尾 光一川口 毅星山 佳治保阪 善昭吉川 厚重
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2001 年 61 巻 6 号 p. 636-644

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抄録
S病院において1994年から1998年の間に四肢の先天奇形児を出産した母親81名を対象に, レトロスペクティブにアンケート調査を行った.その結果, 四肢先天奇形児を出産した事に対する母親の感情としては, しかたがないと思う者が半数を占めていた.今後の出産に対しては, 産まないと回答した者がほぼ半数で, 四肢先天奇形児出産が次の妊娠に対してある程度精神的なブレーキになっていることが推察された.また, 術前後の心理的変化において, 納得して手術受けたいと回答した者の術後不満の率が有意に高かった.次にLocus of controlと先天奇形児出産に対する受け止め方やコーピングとの関係を評価した.奇形児であることを初めて知った時の感情について, 支配型では不安傾向の回答をした群の得点が有意に高かった.次子出産に対する不安感とLocusとの関連の評価では, もう産みたくないと回答した群は内在型傾向が強いことに有意差がみられた.また, 術後評価において満足であると回答した群は運命型の高得点者が, 不満であると回答した群では支配型と内在型の高得点者が多い事に有意差がみられた.以上, 本研究の結果, 母親のLocusによって分類される健康行動の型によって, 四肢先天奇形児を出産したことに対する受け止め方やコーピングが異なることが明らかにされた.人生にとって大きな出来事である奇形児の出産と対応について精神的なケアを行なう際には各母親の性格傾向を十分に把握して個々の特性に応じた精神的な不安感の解消についてのコーピングが大切である.
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