抄録
生活習慣行動と医療費との関連を明らかにするため, 政府管掌健康保険被保険者5, 802人を対象に調査を行った.その結果食習慣については, 「医師から通院の必要な疾患がある」と言われている者の群では, 健康習慣をもっている者の方が1人あたりの医療費が高いという結果を示したが, 「通院治療の必要な疾病をもっていない者」の群では, 健康的な食事をとっているものの方が医療費が低い傾向が認められた.このことは1件あたり医療費でもほぼ同様な傾向が示された.また健康診断については, 通院の必要な疾病の有無に関わらず, 毎年受診している者の方が受診していない者に比較して1人あたり医療費が高かった.しかし, 検診項目別に見ると, 通院治療の必要な疾病を持っていない者の群では, 健診を受けたことがない者の方が医療費が高かった.
次に喫煙と飲酒については現在はやめている者の医療費が最も高かった.これは健康を害したためやめている者が多く含まれるためであると推察される.さらに飲酒と喫煙について医療費の削減効果をシミュレーションした結果, 10%飲酒率を減らすと約84億円, 10%喫煙率を低下させると約143億円の削減効果が期待された.また, この医療費の削減効果は医師から通院の必要な疾患がありと言われた群においてより顕著であった.