生体医工学
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抄録
紫外光励起活性酸素曝露による高分子材料の表面改質効果の検証
細谷 和輝渡邊 亮太大家 渓岩森 暁
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2016 年 54Annual 巻 27PM-Abstract 号 p. S169

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抄録

近年,医療や工学の現場ではガラスや金属材料に代わり,軽量で加工が容易な高分子材料が多様に用いられるようになった.その多くののケースで,種々の機能性薄膜の成膜性向上や,バルク材の特性保持したまま,種々の表面特性の付与のための表面改質が行われている.従来,プラズマ照射など多くの方法が検討されているが,処理工程が複雑なものや高額なものも多く,低コスト化が望まれている.紫外光励起活性酸素 (AOS) は, 2種類の波長の紫外 (UV;波長185,254 nm) 光を酸素分子に照射し,分解,励起させるだけで簡便に生成することができる酸素の活性種の総称であり,医療用滅菌装置への応用を検討している.本研究では医療分野を中心とした多くの分野で用いられる汎用性高分子材料をAOS雰囲気に曝露し,表面改質に応用できるかを検討した.庫内のガス雰囲気を制御することができるチャンバーを作成し庫内雰囲気を調節後,出力200 WのUVランプを点灯することで,AOSを生成し10分間曝露した.走査型プローブ顕微鏡による表面形状測定,純水の接触角測定,X線光電子分光による化学組成評価を行い,AOS曝露前後の表面特性を比較した.その結果,いくつかの材料でAOS曝露により表面酸化量および極性基が増加し,表面形状が変化したことで,親水性が向上した.以上の結果からAOSは医療用滅菌装置としてだけでなく,安価で簡便な高分子材料の表面改質手法としても応用できる可能性が示唆された.

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© 2016 社団法人日本生体医工学会
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