2017 年 55Annual 巻 3AM-Abstract 号 p. 144
片麻痺者は下垂足によりぶん回し歩行などの代償的な歩行動作となることが多い.代償動作は左右の対称性が悪く,健常者のような効率的な歩行動作ではないため,日常生活で実用的な歩行速度や連続歩行能力を獲得できない可能性がある.そこで,片麻痺者に対称的な歩行パターンを学習させるための方法として,免荷装置を用いた訓練が臨床に取り入れられており,一般的にはトレッドミルを併用した免荷トレッドミルトレーニングとして知られている.本研究では,片麻痺者に免荷式リフトを適用することによるストライド時間やストライド中の立脚期と遊脚期の割合における左右差の変化を,慣性センサを用いて定量的に評価することを目的とした.しかし,下垂足傾向の強い片麻痺者においては,免荷を適用してもすり足歩行となる場合があり,適切な評価を行えない可能性がある.そこで本報告では,片麻痺者が免荷式リフトを使用して歩行する場合に,FESによる下垂足矯正の有無が歩行に与える変化を慣性センサにより評価した.その結果,下垂足矯正が無い場合にすり足歩行の割合が非常に高い患者で,下垂足矯正によりすり足歩行の割合が低下し,正常な動作での歩行割合が増大したのと同時に,歩行パターンの左右差が低減する結果が得られた.この方法は,歩行パターンの改善と正常な歩行動作の獲得を同時に実現することに有効であると考えられる.