生体医工学
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抄録
若年者および健常高齢者を対象とした二重課題歩行中の重複歩距離変動のモデル化
工藤 真由子佐川 貢一木立 るり子
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2017 年 55Annual 巻 3AM-Abstract 号 p. 152

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本研究では,健常若年者および健常高齢者の二重課題歩行時における重複歩距離の時間変化をモデル化し,そのステップ応答の挙動から,課題実施直後の重複歩距離の変化の様子を調査する。これまでの研究から,二重課題回答中の重複歩距離は,回答後に比べて有意に小さくなることが分かっている。重複歩距離の計測には爪先装着型慣性センサを使用し,モデルの構築にはARXモデル (Autoregressive exogenous model)を使用した。その際,入力には二重課題歩行時の時系列データを,出力には重複歩距離の時系列データを使用した。被験者は,健常若年者11名,健常高齢者は地域の健康増進プロジェクトに参加した約90名である。健常高齢者の歩行距離は50[m]であり,都道府県名などの想起問題を与えた。健常若年者の歩行距離は100[m]であり,想起問題より難しい課題を与えた。健常若年者と健常高齢者について導出したARXモデルのステップ応答を求めた結果,課題を与えた直後に重複歩距離は極小値に達し,その後わずかに長くなる応答が多かった。また,極小値が現れることなく,滑らかに減少する応答も数例確認された。課題を与えてから重複歩距離の極小値に至るまでの時間は,健常若年者(n=8)が2.81±1.00[s],健常高齢者(n=23)は2.46±1.04[s]であったが,有意差は確認されなかった。このことから,歩行中に考え事を始めると,約2.5[s]経過後に重複歩距離が極小値に到達するということが示唆された。

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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