生体医工学
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抄録
低流量血液ポンプの適切な溶血評価指標
山根 隆志足立 和貴
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2017 年 55Annual 巻 3AM-Abstract 号 p. 171

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抄録

1.目的 小児用人工心臓では1~2L/min、血液浄化では0.05~0.2L/minといった低流量で血液ポンプが使用される。しかし現在の溶血評価指数は、ASTM-F1841で定義されるNIH=回路内遊離Hb総量*100L/試験時間/流量しかない。しかも流量は5±0.25L/minに限定されている。もしもこの定義のまま低流量域に拡張適用すると、血漿の色は変わらないにもかかわらず、NIH値は低流量域で双曲線状に高値を示すことになり、流量補正にならない。2.方法 体外循環に臨床使用されているメラ遠心ポンプを、200mmHg(2800rpm)一定で駆動し、回路に満たしたウシ血の流量を1~6L/minまで30分毎に変化させ、回路全体の血漿遊離Hb総量の変化率ΔTFHBを記録した。またポンプ血流量を4L/min一定に維持し、ポンプ回転数を1400~3000rpmまで30分毎に変化させて、ΔTFHBを記録した。3.結果 流量変化・一定回転数の試験では、遊離Hb変化率ΔTFHBは、全く流量に正の相関を示さなかった。むしろ回転数変化・一定流量の試験ではΔTFHBは回転数に正の相関を示した。4.結論 溶血指標は流量で除することなく、ΔTFHBそのままを使用するのが適切であること、あえて正規化するには流量よりも、ΔTFHBを回転数で除するほうが回転血液ポンプの製品比較に実用的であること、が分かった。

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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