2017 年 55Annual 巻 3AM-Abstract 号 p. 173
経皮的エネルギー伝送(TETS)は皮膚貫通部のない人工心臓の駆動エネルギーの供給方式として従来より研究がなされている。多くのTETSは体内外コイルとして平板コイルを皮膚を挿んで対峙させて用いるが、体表面で平坦な部分は少ないためコイルを小型化して埋め込んでいるおり、位置ずれによる効率低下やコイル端が湾曲部にかかることによる圧迫壊死などの問題が指摘されている。 これに対して我々は、コイルを湾曲部に沿って埋められるようにすべく、フレキシブル基板を用いてコイルを作製し柔軟性をもつコイルを開発した。これによりコイルの面積を大きくしても圧迫を防ぐことができ、位置ずれによる伝送効率低下を防ぐとととに、そもそも位置ずれを起こしにくい場所への埋込を実現した。さらにコイルの伝送に磁気共鳴を用いることで、伝送効率のさらなる向上を目指した。 現在まで動物実験によるエネルギー伝送に成功しており、システムの故障などにより断続的であるものの、一ヶ月間のエネルギー伝送を実現している。その間、DC-DC最大伝送効率は80%を記録しており、効率も高いシステムが実現できている。 現在、磁気共鳴現象を使用してさらなる効率向上を図るため、伝送周波数の自動調整システムを開発している。現在までにシミュレーションによりコイル間の結合率が10%程度まで低下してもAC-AC効率は80%近くを維持できることを確認している。 今後二つの技術を組み合わせて、柔軟性が高い高効率なTETSを開発する予定である。