生体医工学
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抄録
内側腓腹筋におけるスティフネスの歩行速度依存性
松江 悠斗内山 孝憲
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2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 255

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抄録

歩行は日常生活において必要不可欠な運動である. 高齢者では歩行に必要な推進力を確保できず, 転倒しやすくなる. これは歩行において蹴り出しの役割を担っている腓腹筋が衰えて, 歩行が小股歩行になることが原因である. 推進力が変わると歩行速度が変化するため, 本研究では筋音図から, 歩行速度と腓腹筋のスティフネスの関係を解明することを目的とする. 被験者を健常成人男性8名, 被験筋を右脚内側腓腹筋とし, トレッドミル上を歩行させた. 歩行速度は2, 3, 4, 5 km/hとした. 腓腹筋の筋活動度の高い蹴り出し時に2回に1回電気刺激を経皮的に入力して, 歩行中の随意収縮による筋音図と誘発収縮を含む筋音図を交互に計測した. それぞれを同期加算平均し, それらの差を求めて誘発筋音図を抽出した. 電気刺激を入力, 抽出した誘発筋音図を出力として特異値分解法を用いたシステム同定により伝達関数を算出した. 伝達関数から非減衰固有周波数を算出し, スティフネスの指標とした. すべての歩行速度において誘発筋音図を6次の伝達関数で近似できた. 得られた3つの非減衰固有周波数のうち2つは歩行速度の増加に伴って増加し, 1つは歩行速度に依存しなかった. 増加した2つの固有周波数は筋の収縮由来, 歩行速度に依存しなかった固有周波数は皮膚または皮下組織由来であると考えられる. つまり, 内側腓腹筋のスティフネスは歩行速度の増加に伴って増加することが示唆された.

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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