生体医工学
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抄録
位置ずれ影響を軽減した経頭蓋磁気刺激コイルの実験的評価
川崎 雄太細見 晃一山本 啓太原 伸太郎阿部 裕輔齋藤 洋一関野 正樹
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2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 277

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抄録

経頭蓋磁気刺激とはコイルから発生する磁場により,脳内に電場を誘導し,脳を刺激する脳神経疾患の低侵襲な治療法の一つである.我々は経頭蓋磁気刺激の新しい刺激コイル,ダブルDコイルを作製した.本コイルは,従来コイルと同等の印加電流,駆動装置を用いたまま,位置がずれた際であっても標的に誘導される電場が変わらず安定的に刺激できるよう,シミュレーションに基づき設計したものである.本研究では,被験者5名の脳を刺激し,作製したダブルDコイルのコイル位置を故意にずらした際の運動誘発電位の影響を評価することを目的とした. 比較には商用の8の字コイルを用い,各々のコイルを用いて左脳の一次運動野周辺を200点刺激し,各刺激箇所における右手の第一背側骨間筋の運動誘発電位を測定した.運動誘発電位は頭部での位置と対応するよう,グラフ上にマッピングし,最小二乗法を用いて二変量ガウス関数上にフィッティングを行った.得られたガウス関数の長軸,短軸の二方向で運動誘発電位の半値幅を算出した.短軸方向には全ての被験者で半値幅の拡大が見られ,平均で1.6倍となった.長軸方向では,ダブルDコイルを十分に移動することが出来なかった一被験者を除き,全ての被験者で半値幅の拡大を確認し,全被験者の平均でも1.5倍となった.ダブルDコイルが8の字コイルに比べてコイル位置による運動誘発電位の影響が小さいことを明らかとした.

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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