2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 283
喫煙による健康被害は世界中で問題視されている.現在,世界中でタバコのパッケージに喫煙に伴うリスクについて警告文または警告画像の掲載によって注意が喚起されている.2012年にはオーストラリアで,たばこの消費量を削減させる目的で施行された法律でタバコパッケージのデザインであるプレーンパッケージが規定された.人々の健康な社会を作り出すためには,確実な禁煙促進効果をもつ禁煙促進画像の作成が必要である.しかし,嗜好に関する評価法は従来,アンケートなど主観的な評価法が一般的であり,警告文や警告画像を客観的には評価されていない. 本研究では,脳活動を指標として,プレーンパッケージと従来のパッケージで,禁煙促進画像の持つ禁煙促進効果に違いが生じるかについて検証を行った.その結果、従来のパッケージを使用した実験では,喫煙欲求を促進する部位である眼窩前頭皮質に有意な賦活の差が見られ喫煙欲求を高める効果がある,あるいは先行研究で示されていたタバコ画像が持つ喫煙欲求を高める効果に比べて,弱い喫煙抑制効果しか持たない可能性が示された.プレーンパッケージを使用した実験では,痛覚認知に関わる一次体性感覚野に有意な賦活の差が見られ,被験者に喫煙を続けることによって生じるリスクを想起させ、症状の痛みに対する共感性が引き起こされたことにより一次体性感覚野に有意な賦活が生じた可能性が示された.