2017 年 55Annual 巻 5AM-Abstract 号 p. 382
【目的】糖尿病(DM)では神経障害や血管障害が生じるが、DMが動脈圧受容器反射による血圧調節にどのような影響を与えるかは不明である。本研究の目的はDMが動脈圧受容器反射を介した血圧調節に及ぼす影響を定量化することである。【方法】ストレプトゾトシンをラット腹腔内に投与することにより1型DMを発症させた。4週後に頚動脈洞圧受容器反射の開ループ静特性をDMラット(血糖>300 mg/dL)と正常(NC)ラットとで比較した(各7匹)。頚動脈洞に存在する圧受容器領域を体循環系から分離し、頚動脈洞内圧(CSP)を60から180 mmHgまで階段状に変化させて、交感神経活動(SNA)と体血圧(AP)の応答を測定した。【結果】CSPとSNAの入出力関係で記述される動脈圧受容器反射の中枢弓の特性は逆シグモイド曲線を示し、シグモイド曲線の最低値(SNAのパーセント最小値)はDMのほうがNCに比べて有意に高かった。SNAとAPの入出力関係で記述される動脈圧受容器反射の末梢弓の特性はほぼ線形に近似でき、回帰直線の傾きはDMのほうがNCに比べて有意に小さかった。【結論】ストレプトゾトシン誘発性のDMにおいては、ストレプトゾトシン投与後4週の時点ですでに中枢性の神経調節と末梢性の心血管調節の両者とも障害されていることが判明した。DM治療においては起立性低血圧などの血圧調節障害についても注意する必要がある。