2017 年 55Annual 巻 5AM-Abstract 号 p. 430
【背景】幹細胞の心筋分化誘導において心臓組織のECMハイドロゲルが足場として用いられる。本研究では幹細胞分化に対する足場の力学特性の影響に着目し、カルボジイミド系架橋剤EDACにより心室ECMハイドロゲル(vECMゲル)の力学特性を調整し、それらの細胞適合性を評価した。【方法】(1)vECMゲルの作製 まずヤギの心室組織の脱細胞処理を行う。脱細胞組織をPepsin溶液中で消化し、心室ECM溶液を調整する。その後ECM溶液を37°C-5% CO2でインキュベートしゲル化させる。作製したvECMゲルをEDAC溶液で24時間処理する。(2)vECMゲルの圧縮試験 本研究室で開発した圧縮試験装置でゲルの粘弾性特性を測定する。ECMゲルの力学特性の解析は2つの非線形のバネ(K1, K2)と1つの粘性体ηから構成される非線形Kelvinモデルを適用する。(3)力学特性を調整したvECMゲル上での細胞培養 EDAC処理を施したvECMゲル上にラット胎児線維芽細胞を播種し、培養期間中の増殖率および接着面積を評価した。【結果】圧縮試験によりvECMゲルは粘弾性体に特有な応力弛緩を示した。無処理12.5 mg/ml vECMゲルのK1は129.5 Pa、K2は1956.3 Paであったのに対し、EDAC処理によりK1は3868 Pa、K2は5915.9 Paまで向上した。EDAC処理により力学特性を調整したvECMゲル上で線維芽細胞培養を行ったところ、脱細胞組織と同程度のYoung率を有するゲル上で細胞接着面積は最も広くなることを示した。