2017 年 55Annual 巻 5AM-Abstract 号 p. 439
現在,膵臓癌に対する治療法としてステープラを用いた膵体尾部切除術が行われているが,術後に膵液が膵臓外部に漏れ出す膵液漏が発生する場合がある.これにより,体内の組織を消化し,腹腔内出血や腹膜炎を引き起こすことが問題となっているが,膵液漏の原因は未だ解明されていない点が多い.膵液漏の原因の一つとして,ステープラ圧縮時の膵臓の膜の破断が考えられ,圧縮速度との関連性に着目して本研究を行ってきた.本発表では,膵液漏を抑制するためのステープラ圧縮パラメータの最適化を目的として,ブタ摘出臓器での膜の破断を確認するために,圧縮試験機による圧縮時の反力計測と,蛍光色素による圧縮部の蛍光観察を行い,それらを組み合わせた実験系の構築を行った.圧縮試験では,圧縮速度を変えた時の臓器からの反力の時間変化に差が見られた.蛍光観察は,基礎的評価として臓器表面に蛍光色素を塗布して膜の破断を行った結果,膜破断部位を可視化することができた.今後は,これらを組み合わせた実験系において,様々な圧縮パラメータと膜破断との関連性についての検討を進める.