2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 128
本講演では、人工知能と多元計算解剖モデルを利用した診断治療支援システムについて述べる。多元計算解剖学は、(1)空間軸、(2)時間軸、(3)機能軸、(4)病理軸の4 つの軸から人体の解剖構造を理解し、その結果を基に種々の種々の診断治療支援を行う新しい学術領域である。この4 つの軸で張られる空間の中において解剖構造を解析し、診断治療に必要な情報を提供することが求められる。人工知能、機械学習技術を用いることで、より的確な解析と情報の提示が可能となる。本講演では、機械学習を用いた解剖構造解析、10 倍程度のスケールの差異をカバーするマルチスケールレジストレーション、解剖構造解析に基づく内視鏡手術支援、そして、人工知能技術を用いたリアルタイム内視鏡診断支援システムを紹介する。機械学習を用いた解剖構造解析では、大量の画像データベースを用い、大局的な解剖構造から局所的な解剖構造までを解析可能者手法を紹介する。マルチスケールレジストレーションでは、マクロな構造とミクロな構造を対応付ける手法、ならびに、微細な解剖構造を取得できるマイクロCT 画像を用いて、臨床の場で撮影されるCT 像を高解像度化する手法を示す。内視鏡手術支援では、解剖構造解析結果に基づき腹腔鏡手術をナビゲーションする手法を紹介する。加えて、大腸内視鏡検査中に、機械学習技術を用いてミクロレベルでの形態解析に基づきリアルタイムで病理検査的診断を行う手法についても示す。