生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
骨格筋再生における機械受容イオンチャネルの役割
原 雄二平野 航太郎梅田 眞郷
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 179

詳細
抄録

骨格筋の構成単位である筋線維は、筋収縮・弛緩に伴い絶えず損傷を受けており、筋線維の再生は骨格筋のみならず生体恒常性の維持に必須である。筋幹細胞(筋衛星細胞)は筋損傷時に筋芽細胞へと運命決定され、筋芽細胞同士の融合を介して長大な筋線維への成熟・再生に至る。我々は筋線維の再生過程において、物理的な力を感知する機構がどのような役割を果たすか解明を目指してきた。その結果、膜張力により活性化され、様々な物理的な力感知(細胞力覚)に関わる機械受容イオンチャネル群が重要な役割を果たすことを見出した。 筋衛星細胞にて高発現する機械受容イオンチャネルPIEZO1について、筋衛星細胞特異的Creレコンビナーゼマウスを用いて、Piezo1欠損マウスを作出・解析した。筋変性後の筋再生過程を検討したところ、同イオンチャネル欠損マウスでは筋再生過程の遅延が認められた。さらに単離した筋衛星細胞の解析により、上記の表現型は筋衛星細胞の増殖および遊走不全に起因することが示された。以上の結果よりPIEZO1を介した細胞力覚は、筋衛星細胞の機能に重要な役割を果たすと考えられる。 現在、筋再生時におけるPIEZO1チャネルの挙動観察等とともに、筋衛星細胞に高発現し、細胞力覚に関わる他のイオンチャネル群についても解析を進めており、本シンポジウムにて併せて報告したい。

著者関連情報
© 2020 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top