生体医工学
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改良型振動計による内耳ナノ動作の測定と解析
日比野 浩太田 岳崔 森悦任 書晃
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 228

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抄録

外界からの音は、内耳蝸牛の感覚上皮帯にナノレベルの微小振動を誘引する。この組織は、刺激に応じて伸縮する外有毛細胞を含む。感覚上皮帯の振動振幅の感受性は、音入力が小さいほど増幅される。この非線形的な性質は外有毛細胞の動作に依存するが、その詳細なメカニズムは十分に明らかではない。そこで本研究では、生きたモルモットを用いて、複数の振動計測系を用いて高音に反応する部位の感覚上皮帯を解析した。最初に、独自の工夫を凝らしたレーザ干渉計により、刺激音が大きい時のみ、上皮帯のオフセット移動を振動と共に計測した。この動作は、外有毛細胞の直流的な収縮により誘引されていた。オフセットは、巨大音による感覚上皮帯の過剰な振動を抑制し、組織を障害から守る働きを担うと考えられた。第二に、市販の光干渉断層計を改良し、それを駆使して外有毛細胞の頂上部と基底部を可視化した。そして、微小音の際には、前者の振動が後者よりも大きいことを見出した。この特性は、上皮帯振動の増幅に貢献していると想定された。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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