2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 250
近年,癌治療法の1つとして温熱治療(ハイパーサーミア)が注目されている.ハイパーサーミアは,手術療法に比べ低侵襲であり化学療法に比べて副作用が少ないため,癌患者への負担を低減できる利点がある.本研究では,感温磁性体を腫瘍部に注射し,体外から高周波磁場を印加して腫瘍部を誘導加熱することで局所加温するソフトヒーティング法を採用している.我々は,感温磁性体の温度依存の磁気特性による周囲の磁場の変化を,体外に設置したピックアップコイルに生じる誘導起電力として検知し,ワイヤレスで患部の温度を検知可能な温熱治療システムを開発している.過去の研究において,温度変化に伴う誘導起電力の値を閾値として利用したON/OFF制御による定温加熱システムが開発されている.しかしながら,高周波磁場を停止するOFF制御時には,感温磁性体の温度を検知できない課題が残っていた.そこで,本報告では,常に励磁コイルから磁場を印加する自動定温加熱システムのHigh/Low制御を実装し,2種類の感温磁性体を利用した物理実験により妥当性を評価した.