2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 261
【目的】経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を皮質に与えると、脳の働きが増強されることが報告されている。人工視覚では、連続的に刺激を与えるとフォスフェンが見えにくくなることが知られているが、我々はtDCSによりこれが軽減できないかと考えた。本研究では、tDCS前後の網膜への連続電気刺激を評価した。【方法】ウレタン麻酔下のNormalラット(n = 3)の右側視覚皮質を露出させ、皮質に導電性ゲルを通じ陽極tDCS(0.1 mA、10 min)を印加した。皮質へのtDCS前後の電気誘発電位(EEP)を記録した。EEPは、ラットの左眼網膜に連続電気刺激(0.5 ms, cathodic-first, 100発, 20 Hz)を与えることで応答する誘発電位を視覚野より記録した。加算回数は40回とした。各刺激後15 ms付近のネガティブ側ピーク(N1)、30 ms付近のポジティブ側ピーク(P1)の差を本研究ではEEPと定義した。【結果】ピークが明瞭になる21~100発目のEEP平均値を分析に使用した。tDCS前と比較し、tDCS後はEEPの振幅が有意に減少した(p< 0.01, paired t-test)。【考察】EEPが減少したことから、tDCSにより網膜への刺激電流閾値が高くなることが推測される。今後は、tDCSを陰極刺激にすることや人工視覚が対象とする疾患のモデル動物を用いて評価を行う予定である。