生体医工学
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機械学習を用いた側頭連合野神経細胞集団における三次元物体の表現の解析
岡村 純也山本 悠介Dai Lulin宇都 嘉浩山田 陽介王 鋼
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 321

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抄録

物体の二次元像は観察角度に依って変化する.しかし,我々は観察角度に依らずに同じ物体と他の物体を弁別できる.サルを対象とした行動実験から,同じ観察角度で類似した物体の弁別を経験すると,観察角度間隔60°程度まで観察角度に依らずに弁別できるようになることが示された.ヒトを対象とした心理物理学的研究から,同じ観察角度での弁別経験により,弁別できる観察角度の幅が広がることが示された.電気生理学的実験から,同じ観察角度で弁別経験した物体に対し,サルの側頭連合野の神経細胞が60°程度の観察角度許容性を示すことが明らかになった.本研究では,観察角度に依らずに三次元物体が脳内で表現される神経機構を明らかにするため,側頭連合野の神経細胞集団活動を特徴ベクトルとして機械学習を行い,異なる観察角度の物体画像への弁別パフォーマンスを調べた.同じ観察角度で物体を弁別するよう識別子を機械学習によりトレーニングした後,異なる観察角度の物体画像への細胞集団活動を用いて識別子をテストした.同じ観察角度で弁別経験した物体に対する弁別精度は,弁別経験していない物体に対する弁別精度よりも高く,異なる観察角度像の連合学習を経験した物体に対する弁別精度と同程度であった.この結果は,同じ観察角度で弁別経験した三次元物体の脳内表現を,神経細胞集団の活動を用いたモデルにより表現できたことを示す.

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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