生体医工学
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高浸透圧刺激による尿細管細胞の細胞骨格構造の変化が腎線維化に与える影響
宮野 貴士鈴木 敦詞坂元 尚哉
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 337

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抄録

尿細管間質の線維化は慢性腎臓病 (CKD)における腎機能低下と相関することから、線維化の抑制CKDは対する有用なアプローチと考えられる。過去の研究により、流れによる壁せん断応力や浸透圧のようなメカニカルストレスが CKD の進行に寄与することが示されている。尿細管間質の線維化には尿細管上皮細胞の形質変化が関与していると考えられているが、メカニカルストレスの上皮細胞に及ぼす影響を調べた研究はほとんどない。本研究では、尿細管が恒常的にさらされており、CKD 進行への影響が示唆されている浸透圧に注目し、高浸透圧ストレスが尿細管上皮細胞に与える影響を調べた。ラット尿細管上皮細胞に対し、マンニトール添加による高浸透圧刺激を負荷したところ、筋線維芽細胞のマーカーであるα平滑筋アクチン (α-SMA) および線維化関連遺伝子の発現が増加した。高浸透圧刺激はアクチンフィラメントなどの細胞骨格構造に加え、細胞接着斑 (FAs) の時間依存的な消失や再形成も引き起こした。阻害剤により FAsの再形成を阻害することで α-SMA や線維化関連遺伝子発現の増加は抑制された。これらの結果から、尿細管間質の線維化進行に対し高浸透圧刺激による FAs を介した上皮細胞の機能変化が寄与することが示唆された。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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