生体医工学
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血漿粘度の上昇が毛細血管に及ぼす力学的影響の検討
長崎 あかり早見 武人神田 岳文蒋 飛陳 献
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 340

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抄録

毛細血管は生体組織を構成するあらゆる細胞に酸素や栄養を供給し二酸化炭素や老廃物を回収する役割を担っている.毛細血管の機能低下は生体組織の正常な代謝を妨げ,様々な病気を誘発したり悪化させたりする原因になると考えられる.毛細血管の機能を維持する仕組みは非常に複雑であるため,その機能が低下する原因や過程を生体の観察のみから導き出すことは難しい.本研究では糖尿病を想定し,毛細血管の機能低下に伴う力学的側面について計算による検討を行った.糖尿病では血液中のグルコースが増加することが一般に知られているが,血漿の粘度も上昇することが報告されている.高粘度の血漿には,毛細血管を流れる血液を流れにくくしたり,血管壁にかかるせん断応力を高め血管壁を傷つきやすくする効果が想定される.今回は血漿が円筒状の毛細血管の内部に形成された血栓に及ぼす応力について,糖尿病患者と健常者の間で比較を行った. 計算の結果,血栓にかかるせん断応力は血漿粘度が高い場合や,血栓の形状が薄くかつ高く盛り上がっている場合に大きくなる傾向がみられた. 糖尿病による血漿粘度の上昇が毛細血管に及ぼす力学的影響を見積もることができた.

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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