2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 380
「研究の背景」 筆者らは、1970年代よりカエルから摘出した半腱様筋を用いた収縮力学の生理実験を行い、自然長近傍の動的な振る舞いを計測し、それらを表現する収縮要素と直列弾性要素からなる2要素モデルを作成した。一方、1990年代にヒトの上腕の屈筋群の筋電積分値―角関角度―力関係を解析し、負のばね特性が存在することを示した。これは従来のモデルでは不十分であることを意味する。このような背景から、2000年代に改めてカエルの半腱様筋を用いて、筋長を広い範囲で変化させた実験を行い、力学特性を計測した。この計測結果を基に新規に筋モデルを提案し、本学会のAdv Biomed. Eng. のResearch Note (2019) に発表した。最近光学的にヒトの骨格筋の筋節長が測定され、いくつかの筋で、負のばね特性を示す筋長―力関係の下向脚で動作することが報告されており、提案したモデルが筋力学を扱う分野において重要になってくると考えている。[目的] 本報告は、Research Noteのモデルの詳細を説明し、意見交換を行うことを目的とする。モデルの特徴は、上向脚と下向脚においての特性が大きく異なること、そして下向脚ではフィラメント滑走SLモードと伸展による力増強STモードの2種類のモードが存在することである。「結果」 伸展、短縮時の応答について、シミュレーションを行い、基本的な特性が説明できることを示す