生体医工学
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WPW症候群における順伝導・逆伝導成立条件のコンピュータシミュレーションによる検討
原口 亮芦原 貴司松山 高明芳本 潤
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 382

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抄録

若年者の頻脈性不整脈および心臓突然死の原因の1つである Wolff-Parkinson-White (WPW) 症候群とは,心臓内の正常な刺激伝導路とは別に先天的に心房と心室とをつなぐ副伝導路が存在する疾患である.最近我々は病理画像から副伝導路の3次元画像再構築を行い形態的特徴の検討を行った.しかしながら,副伝導路の形態的特徴や電気生理的特徴と,副伝導路を介する伝導の実際との関係は明らかではない.そこで我々は副伝導路を介した伝導を模擬できるモデルを構築した上で形態的特徴や電気生理的特徴を変化させながらコンピュータシミュレーションを行うことで,伝導が成立するための形態的・電気生理的な条件の検討を行った.心房から心室への伝導,心室から心房への伝導いずれの場合も,副伝導路の伝導率が高い場合には伝導が生じず,伝導率が低い場合に伝導が生じることが分かった.このような直感と反する結果となる原因として,伝導率が高いとelectrotonic currentが上昇し,副伝導路から心房・心室筋へ繋がり形態が大きく変化する部位にて興奮伝導の維持が難しくなることが考えらえる.本研究の結果は,副伝導路自体は先天的に存在するにも関わらずWPW症候群の症状が顕在化するタイミングは人それぞれであることと関連するかもしれない.

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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