生体医工学
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等容性弛緩期における筋節長変化が循環動態に与える影響
岸田 昂大加藤 詩朗實近 明莉天野 晃
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 384

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抄録

心室筋には,短縮速度の増大に対して収縮力が低下する性質である張力速度関係が存在することが知られている.また,左心室は収縮に伴い捻転し,弛緩の際に等容期の段階からねじれを解いていることが知られており,この運動により血液の駆出充満に貢献していることが示唆されている.また,等容期におけるねじれの解除に伴い筋節長が伸展しているという報告がある.実際の心臓において,心壁内の筋節長の計測は容易ではないため,等容期における筋節長変化と循環動態に関係は明らかにされていない.そこで,本研究では等容期における筋節長変化を再現した循環動態のモデルを構築し,等容期の筋節長変化の有無が循環動態に与える影響を解析した.等容期における筋節長変化は,数少ない計測データ(Rodriguez et al, 1992)を使用して,筋節長と左心室容積,収縮力の関係を再現した数式を導出することで再現を行い,心筋細胞収縮モデル(Negroni& Lascano, 2008),血管系モデル,左心室物理モデルと統合することで循環動態モデルを構築した.シミュレーションの結果,等容期に筋節長が変化する場合,張力速度関係の影響により収縮力の低下が促進され,等容性弛緩期が短縮するように作用することが示唆された.

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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