生体医工学
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筋力の低下が自転車クランクの最適設計に与える影響
福永 道彦大久保 寿人
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2020 年 Annual58 巻 Proc 号 p. 582-583

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抄録

脚で回転ペダルを漕ぐ動作は,人間の運動エネルギーを効率よく取り出すのに好適であり,自転車などに用いられている.そのため,歩行が困難な高齢者の移動手段に足漕ぎ車いすを使用することが検討されている.また,足漕ぎ車いすには麻痺をともなう患者のリハビリテーションに有効であることも指摘されている.このように,筋力が衰えた高齢者や患者において,クランクやサドルの寸法はどのように設計されるべきであろうか.本研究では,筋骨格系モデルを用いたシミュレーションで,発揮パワーを最大化するクランクの設計を検討した.下肢とクランクは4節リンクモデルで構成され,足首は固定されていると仮定した.股関節と膝関節は,大腿まわりの二関節筋を含む6筋によって駆動した.これらの最大筋力は,それぞれ筋断面積,筋長,筋収縮速度によって決定されるものとした.サドル高さとクランク長を5mmずつ変更して,拮抗筋のうちペダルの回転に寄与するほうに最大筋力をかけ,角速度が一定になった後に動力を算出した.筋モデルは,健常者のものに加え,大腿四頭筋が細くなったもの,すべての筋が細くなったもの,ハムストリングスが細くなったものを用いて比較した.その結果,すべての例においてサドルは高い,すなわちクランク最下点で膝が伸びる場合に動力が最大になった.また,大腿四頭筋力の低下によって,動力最大となるクランク長は長くなった.

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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