生体医工学
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血液凝固の発生を抑えるエアトラップチャンバの理想形状に関する実験的検討
佐藤 敏夫鈴木 亮也巻田 浩輝奥 知子山内 忍本橋 由香
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2020 年 Annual58 巻 Proc 号 p. 600-601

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抄録

我々は、血液凝固に影響を及ぼすエアトラップチャンバの要因を(1)チャンバ長さLP、(2)流入口角度θ、(3)濾過フィルタ形状の3点に絞り、血液凝固が発生しにくい理想的なチャンバ形状を提案することを目指している。今回の報告ではまず、模擬凝固塊を作製し、それがエアドリップチャンバの濾過フィルタで捕捉されることによって回路内圧が上昇するという凝固過程の模擬について検討した。また、静脈側エアトラップチャンバの(1)チャンバ長さLP、(2)流入口角度θ、(3)濾過フィルタ形状の違いが血液凝固に及ぼす影響についても調査した。まず、牛乳に酸を加えることで牛乳タンパク質が凝固して模擬凝固塊が生成され、それが濾過フィルタで捕捉されることで、血液回路内圧が徐々に上昇する血液凝固過程をうまく模擬することができた。次に、試作した6種類のチャンバの凝固完了までの時間TCOAGを調べたところ、濾過フィルタ形状がメッシュ型については、チャンバ長さLPが短くなるほどTCOAGが長くなり、凝固が発生しにくい傾向があることがわかった。また、3Dプリンターで試作した流入口角度θ=30°のチャンバを試作し、回路内圧上昇に要する時間を調べたところ、θ=30°のチャンバの方が0°のチャンバより回路内圧上昇に要する時間が長くなった。この結果から流入口角度についても、血液凝固の発生を抑えることができる最適流入口角度が存在する可能性が示唆された。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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