2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 100_1
心電図の発明から100年以上になるが,未だに臨床における不整脈の診断には心電図が使われ続けている.しかし,心電図波形は3次元の心臓における時間変化すなわち4次元の情報を1次元に落とし込んだものであり,情報が失われ過ぎているため、それに基づく診断と治療には高度な判読技術が求められる。とくに心房細動のように興奮伝播様式が複雑な細動性不整脈では,心電図のみで治療標的を見極めるのは困難であった.我々が開発した臨床不整脈映像化システムExTRa Mappingは,心臓内に挿入した20極カテーテルで記録される心内心電図に基づき,失われた心臓電気生理学的情報をin silicoで補い,時空間補間することで,心房細動の複雑な興奮伝播様式をオンラインで瞬時に映像化するものである.本システムを実臨床に導入後,我々は機能的興奮旋回であるローターが常にさまよい運動していること,患者毎にその分布も興奮動態も全く異なっていること,さらにミニマル焼灼によるローターの制御により,非発作性(慢性)心房細動であっても根治率が大幅に上昇すること,非発作性心房細動の持続期間が5年未満ならば根治率が8割近くになること等を見出した.本講演では,ExTRa Mappingによる根治の実例を紹介するとともに,今後の本システムの発展性について概説する予定である.