生体医工学
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スケール錯聴に関連する脳活動の検討
柴 正貴塚原 彰彦田中 慶太
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2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 147_1

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抄録

錯聴は呈示した音と異なる知覚をする現象であり,スケール錯聴は左右の耳に音階の上昇音と下降音を一音ごとに左右を入れ替えながら同時に呈示する刺激である.多くの被験者はこの刺激を正しく知覚できず右耳に高域帯,左耳に低域帯を知覚する.錯聴の研究はカクテルパーティ効果を始めとする脳の無意識な処理の解明に役立つとされ,音声認識の分野での応用が期待されている.本研究では錯聴生成と関連のある脳部位の特定のために,脳磁界計測装置(Magnetoencephalography: MEG)を使用して錯聴刺激呈示中の被験者の脳活動を計測し,錯聴者と非錯聴者の脳活動の違いを検討した.その結果,音楽経験者は錯聴の影響を受けやすい傾向にあることが示された.また,非錯聴者グループでは右半球優位の傾向が見られたのに対して,錯聴者グループは右半球優位が見られず、左右聴覚野の均等な活動が示された.人間の聴覚は右半球優位とされており,錯聴の知覚には左聴覚野の活動の関与が示唆される. 一方で聴覚情報は中枢神経で左右に分離されて左右半球に伝達されることがわかっており,聴覚野に到達する前の段階で聴覚情報を自動処理していると推察される.

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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